2007年8月14日火曜日

中国の大学におけるリソースの集散

今回の中国の出張においては,
合肥工業大学と浙江大学を見学・訪問することができた。
そしてかなりの危機感をもって帰国した。
電気系の工学(特にパワーエレクトロニクス)においては,
中国の大学の研究室の方が実力があるような気がしたのである。

なぜ中国の大学の研究室には実力があるのか。
それはなんといってもリソースがそこに集中されているからである。
リソースというのは,資金,人材,である。

まず,資金。
今回訪問した大学は中国において重点拠点とされている。
そこに国から資金の集中が行われているのだ。

合肥工業大学では,研究室(というより研究所)の見学をした。
そこには,太陽光,風力発電を交えた
マイクログリッドのシステムが模擬系統を含め構成されており,
それらが一括して中央制御室から制御されている。
こんな設備を大学が所有していることがすごい。
日本と違い,国がプロジェクトとして集中的にここに資金を投下しているのだ。

同じく合肥工業大学では,他にも太陽光発電研究のための研究所があり,
いくつかの研究室から成り立っていた。
ひとつの建物がそれに当てられており,博士課程の学生だけでなく,
30名を越すポスドクが一部屋に集められ
(ひとりひとりの机などの研究スペースは
私の日本におけるものよりもずっと広かった)
集中的に研究に従事している。
彼らは国から雇用されているのだ。
エリートとして雇用されている。
しかし,彼らにかかるプレッシャーは非常に厳しいと
中国の教授は話していたけれど。

同大学では,他に風力発電模擬のための250kWのモータ/発電機などを
一研究室が開発・所有しているなど,非常に恵まれている。
それらを自分たちで開発しているところに実力の高さが伺える。

またあちらこちらで見かけた,
計測器をはじめとする試験設備も
高価なものが複数台ずつ揃っていた。
中国おそるべし。

資金は国のプロジェクトだけではなく,
企業との共同研究によってもずいぶん多くを得ているようである。
実際,大手の日本やEUの電機メーカの名前を大変多く見かけた。
彼らは中国の大学の実力に注目,期待をしているのだ。
(日本の大学には期待しないのに)
密接に企業と関わりをもつことによって,
最新の技術を入手し,さらに実力を伸ばす。
そうしたことが中国の研究所では行われている。
そして,彼らは企業の研究所と同等の活動をしているのである。

ここでキーとなるのが,人材である。
中国では,博士課程に進む学生の数が多い。
それは,社会が博士号の価値を認め,
学卒に比べ給料がずっと良いからである。
また,国だけでなく企業からも
多くの奨学金を得ることができる環境が整っている。
(日本企業も多くの奨学金を出している。
なぜ彼らは日本の大学に冷たいのか?)
そしてポスドクの数も多い。

研究室の実力を向上させるために必要なものは,人材である。
博士課程の学生が少ないということは致命的である。
ましてポスドクなど日本の研究室ではそうそう雇用することができない。
博士課程の学生,ポスドクなどがいなければ,
ほとんどの学生は3年で研究室をあとにすることになる。
そんな状況でどのように技術のノウハウを
研究室に蓄積することができるだろうか?

なぜ日本には博士課程学生やポスドクが少ないのか?
それは企業が冷遇するためである。
その原因については,過去にもこのブログで触れているので,
ここでは追求しない。

日本でこうした資金の集中はやりにくいのではないだろうか。
文科省のCOEがそれに対応するものなのかもしれないが,
実際,それが継続し,効果を挙げていくためには,
社会の方の受け皿も準備していかなければならない。
現在,それができているようには全く思えない。
COEのお陰で,全国で博士課程に進む人が増えたのだろうか?
ポスドクで一時的に雇用されたとしても,
その先が社会に用意されているのだろうか?

中国においてもこうした資金の集中から外れてしまった大学は
さぞかし苦境に立たされていることは想像に難くない。
中国においては国の方針は,
日本よりもずっと強い力を持つであろうから,
反対の声を上げることもできないのだろう。
中国におけるこうした大学の行く末は,
日本の大学の多くのものになるかもしれない。
その意味で,今後注目すべきであろう。

ただ,こうして資金と人材を集めることができない日本の大学の研究室は
非常に厳しい立場にあることを再認識した。
この先,世界に立ち遅れていくのではないかと危機感を強く持った。
どうすればよいのか,なんとか解決策を,大学,民間を問わず
パワーエレクトロニクス分野の人たちと考えていかなければならない。

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