2007年9月18日火曜日

マイクログリッドは世界を救うか?

先週は電気学会 電力・エネルギー部門大会に参加するため,
青森 八戸に行ってきた.
大阪とはちがって,ずいぶんと涼しく,
会場のエアコンが迷惑に思えるほどであった.

いろいろな発表・講演を聴き,また旧友にも会って,
非常に刺激を受けた.
やはり学会に参加することは重要だと思った.

最終日,私は八戸のマイクログリッドの見学ツアーに参加した.
マイクログリッドというのは,
既存の電力系統とルーズにカップリングをしながら(時には自立する),
分散電源等に支えられた局所的でインテリジェントな電力システムである.
(実はいまだに定義というものがはっきりしていないのだ)

八戸には,八戸市,三菱総研,三菱電機がNEDOから受託した実証研究,
「八戸市 水の流れを電気で返すプロジェクト」
が本年度いっぱいまで行われている.
これは,太陽光発電,風力発電,バイオマス発電と蓄電池を組み合わせ,
これらを適切に制御することによって,その地域内の負荷(市庁舎,学校等)に
安定した電力と熱の供給をしようとしているものである.

実証しようとしているのは,まず技術.
連系されている東北電力の系統に影響を与えないように制御するのである.
実は太陽光発電,風力発電は,天候任せでその発電出力が変化する.
一方で,負荷(われわれが使っている電力)も,時刻に応じて変化する.
それらをバランスさせなければならないのである.
もし,発電量が負荷を上回ってしまったら,周波数が上がってしまう.
あるいは系統の電圧が高くなってしまうなどの問題が発生してしまう.
もし発電量が足りなくなってしまったらその逆の問題が発生してしまう.

つねに電力の世界においては,
発電と負荷がバランスしていなければならないのである.
電力会社は実はこのための制御をそれぞれの系統で行っている.
それを自然エネルギーという制御が難しいものを相手に,
小さな系統で安定な電力供給を実現しようというのが
マイクログリッドなのである.

もちろん,電気を貯める技術もある.
たとえば蓄電池.
電気が余っているときは電気をため,
足りないとこは電池から電力を出す.
しかし,コストがかなり高く,大容量のものは難しい.
とても系統の電力を支えようというわけにはいかないのが現状だ.

いま,世界では太陽光発電,風力発電などの自然エネルギーの導入が
強くすすめられている.
しかし,それらの発電出力はお天気まかせ,風まかせなのである.
その問題を解決しようというのがマイクログリッドなのである.
大きくいえば,マイクログリッドは世界のエネルギー問題を救うための
有力な一方策なのである.

八戸のプロジェクトを訪れたのはこれで2度目.
一度目は,稼働前の設備を見学したのだった.
今回はすでに運転実績があり,
そのデータは,本当に価値あるものだと思う.

このサイトの技術的な問題はほぼ解決されているのではないだろうか.
もちろん,経済性,効率の問題は大きく立ちはだかっている.
しかし基本技術が確立されたのは大きい.

今後もマイクログリッドや分散電源,新エネルギーについては
このブログで触れていくことになるだろう.
こうしたものが抱えている問題点とその解決策などが
紹介できればと思っている.

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