2009年1月20日火曜日

トルストイ

少し前のこと,息子の読書の宿題につきあって,
近くの公立図書館に行った.
そのときに見つけたのが

トルストイ,「イワンのばか」

有名な小説(?)なのでタイトルは知っていたのだけれど,
実は読んだことはなかった.
(まぁ,ほとんど小説など読まない
人間だったのだから仕方がない)
早速借りて,息子に先駆けて目を通すことに.
子供向けの民話かと思いきや,これがなかなか面白い.

トルストイは,誰にでもわかりやすいように,
こうした民話を平易な言葉で書いたというが,
和訳もわかりやすいせいか(私が読んだのは
あすなろ書房,北御門 二郎 訳のもの)
スラスラと読める.

しかし,書いてある内容は考えさせるところが多く,
子供になんてとてもわからないと思う.
そして長い.
とても短編とは呼べない.
この作品のもつ意味については,
また別に機会をあらためて書きたいと思う.

実は,私が一番感銘をうけたのは,
巻末の年表とともに記されていた
トルストイの最期である.
彼は権力と富を離れ,農夫に代表されるような
本来の人間的な生活の素晴らしさを作品の中で説いていた.
しかし,実際の彼の生活は,ほおっておけば
ますます増大していく莫大な富と,
広大な土地を所有していた.
もちろん,彼の行動はその思想に即した人道的なものだったが,
彼はいわゆる大富豪だったのである.
多くのトルストイ的な生活を営んでいた人々が彼の家を訪問するたびに,
その人々の失望を目の当たりにするのを
彼は耐えられなかったようである.
彼を批判する手紙もたびたび届いて,
そのたびに,彼はより厳しい自己批判の
回答を書いていたということである.
はぁ,とため息がでる.
自分を批判し続けねばなければならなかった,
なんと,かわいそうなトルストイ.

彼は何度もその富を処分しようとしたらしいのだけれど,
周囲の反対にあって,それもできなかったらしい.
そのことについて,彼はかなり悩んでいて,
結局,最後には82歳のときに家出をしてしまう.
そしてその旅先で肺炎にかかり家を後にしてから
1週間後に死んでしまうのである.
本当に悲しい最期である.
これが平和主義者,人道主義者として尊敬を集めた人の最期なのか.
彼はその最期を幸福に迎えることができたのだろうか.

このエピソードを知って私は俄然トルストイに興味が湧いてきた.
まずは,彼の宗教的信念を表したと言われる
民話集を読んでみようと思っている.
すでに別の作品「人はなんで生きているか」は読了した.
感想については,これもまた機会をあらためて.

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