2009年4月14日火曜日

核融合研究の魅力と重責

昨日から,核融合科学研究所(NIFS)のLHD成果報告会に参加する.
日本原子力研究開発機構(JAEA)のプラズマ試験装置JT-60が
現在超伝導改造中ということもあり,
少なくともあと7年程度は,NIFSのプラズマ試験装置LHDが
日本の核融合プラズマ研究を牽引していかなければならない.
今回の成果報告会に参加してみて,LHDは立派にその大役を
果たしていると感じた(って,私が偉そうに言うことではなくて,
誰もがそう認めていることなのだけど).

LHDは,超伝導コイルの冷媒である液体ヘリウムの温度を
(冷凍機を増力して)4.2K (-269度)以下にするという
過冷却というテクニックを使って,
コイルの通電電流を増加させ,磁場を増強した試験を開始した.
(単純に磁場が強くなって閉じ込めが良くなるという話ではなく,
より磁場配位が最適化されて閉じ込めが
良くなるということなのだが)

また,プラズマ加熱も,77GHzの高周波加熱装置を増設して,
より性能の良いプラズマ実験(高温,高ベータ)を可能としている.

そして,私の興味が高い電源においても,
早いプラズマの磁気軸のスイングを
実現するために,新たにパルス電源が増設された.
これは,他の超伝導コイル電源の出力電圧が
30~40V程度であるのに対して,
増設されたサイリスタのブリッジ電源の出力電圧は
200Vを実現し,急速な電流の変化を可能としている.

しかし,LHDはヘリカル型装置であり,
もともと電流の変化を想定していない.
そうした装置でコイル電流の変化を早くすると,
磁束が変化して,装置全体にトロイダル方向に電流が流れてしまう.
特にコイルの支持構造は極低温にあるので,
ステンレスなどの抵抗も低く,そこそこの電流が流れ,
それが熱となって散逸してしまうことになる.
そして,結局冷凍機の負荷が増える.

もちろん真空容器にも電流は流れるのだけれど,
どのようにトロイダル方向の電流が各構造物に
分流していくのか,なかなか興味深い.
軸対称なトカマクとは異なるのだろうか?
(いや,変わんないなぁ,たぶん)

他にもこれに関連して面白そうな項目がいろいろと考えられる.
(超伝導コイルの交流損失評価なども報告されていたし)
LHDがパルス運転を行うとき,いままでは考慮されなかった
種々な課題が浮かび上がってくる.
(とはいっても,核融合炉がヘリカルでできる頃には,
完全な直流マシン,すなわち電流の変動などない
マシンとなっているだろうけれど)
こうして研究は進んでいくのだなぁ,と改めて思う.
新たな領域に一歩踏み出すとき,そこにはいくつも課題が現れる.
それらを解決するために,また努力がなされる.
そして,それがクリアされれば,また次の領域に踏み出せる.
その繰り返しだ.

こんな当たり前のことなのだけれど,
LHDやJT-60のような大型装置の進展を見ていると,それを実感する.
なぜなら,研究者たちは装置を投げ出して逃げるということが
できないからである.
解決できないからといって
別のテーマを行えばよいというものではない.
常に道の真ん中を進んでいかなければならない研究領域なのである.
それは核融合研究の魅力であり,重責であると思う.

何度も繰り返すけれど,核融合は日本が世界に誇る研究分野である.
日本は立派にその重責を果たしている.
私も微力ながら支援していきたいと思う.

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