2009年5月13日水曜日

十段の境地

以前,合氣道九段の先生に伺ったお話.

初段というのは,技を10回行って
そのうち1回が成功するレベル,
二段というのは,同じく技を10回行って
そのうち2回が成功するレベルといえる.
したがって,十段というのは,
10回行って失敗がない境地まで
到達しているレベルをいうのだという.

非常に求めているレベルは高いけれど,
面白いお話である.

その九段の先生が十段の先生に
あるときにお尋ねしたそうである.

「先生は,技を行って失敗することがありません.
それはどうしてなのですか」

十段の先生答えて曰く,

「技がかかることが分かってから
相手を投げているのだから失敗はないのだよ」

すなわち十段の先生は,技を行うときは
必ず技がかかる状態になってから行っているである.
...なるほど,と思うけれど
とてもその境地は遠い.

孫子に曰く,勝ちには以下の3種類があるという.

戦って勝つのが勝ちの下.
勝ってから戦うのが勝ちの中.
戦わずして勝つのが勝ちの上である.

合氣道の目指すところは,
争わずして勝つことだから,
勝ちの上の重要性を十段の先生は
いつも説かれていたけれど,
技を行う場合でも,勝ちの中を得ていたことになる.

孫子は,勝負は廟算して決まるとも述べているけれど,
技をかける以前に勝ちは決定しているのである.

この話を思い出すと武道の深遠さを思うと同時に,
自らの未熟さを思い知るのだけれど,
だからこそ稽古していく面白さがあるのだと思う.



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