2009年7月2日木曜日

朝から美しい音楽を聴く: 「チチェスター詩篇」(バーンスタイン)

今朝はなにかしら清冽な音楽が聴きたくて,
一枚,CD棚から取り出した.

「チチェスター詩篇」(L. バーンスタイン)

バーンスタインは,指揮者としてとても有名だったけれど,
実は自分は作曲家でありたいと思っていたのだという.
たぶん,指揮はその場かぎりのライブの芸術だけれど,
曲は後世にずっと残る可能性があるからだろう.
(この辺,カラヤンとは違う.
まあ,カラヤンはその代わり自分の演奏自体を
後世に残そうとしたのだけれど)

彼のもっとも有名な作品は,ミュージカルの
「ウエストサイド・ストーリー」だろう.
私も大好きである.
ホセ・カレーラスやキリ・テ・カナワなどの
オペラ界のトップを集めて
バーンスタイン自身の手によって録音されたCDは
私のお気に入りのひとつである.

この録音にはメイキングビデオがあって,
そこでは彼のこの曲の解説などが聞ける.
例えば,「この部分はチャイコフスキーの白鳥の湖からパクった」
なんて,笑いながら話していて,たいへん興味深い.
オーケストラは実は寄せ集めなのだけれど,
演奏は素晴らしいと私は思っている.

ビデオでは,バーンスタインに何度も歌を指導され,
カレーラスがナーバスになるところなども収録されていて,
創造芸術に携わる人たちの厳しさも実感できるものとなっている.
まぁ,もっとも印象的なのはバーンスタインというお爺さんの
カッコよさなんだけれど...
ビデオを観てからたぶん10年以上も経っているから,
今度DVDでも探してみようかと思う.

さて,「チチェスター詩篇」は「ウエストサイド」と違って
美しく敬虔な宗教合唱曲である.
第1曲は,非常に華やかな音楽であるけど,
第2曲は一転して,子供の独唱による,
とにかく美しい音楽である.
聴いていると,ため息がでるほど.
こんな音楽もバーンスタインは書いていたのかと感動する.
(第3曲ももちろん素敵だ)

10年以上も前になるだろうか.
プリンストン大学を訪れる機会があって,
アルバカーキで開催された学会からの移動の週末に,
秋のニューヨークの街を学生時代ご指導いただいていたS先生や,
お世話になっているM先生,学生のみなさんと歩いていた.

途中,大きな教会があってミサが執り行われていた.
ミサは公開されていて誰でも自由に入ることができるというので,
おずおずと教会の中に入ると,
確かに映画で見るような木製の椅子が並んでいた.
そして美しいステンドグラスから差し込む光の中で,
そこに腰かけて祈っている人たちがいた.

不信心な私は少し居心地悪く感じていたけれど,
しばらくして一緒にいたM先生が
「チチェスター詩篇だ」とおっしゃった.
(M先生は,非常にクラシック音楽にお詳しい)
そこで私はやっと背後に流れていた音楽に気づく.
実はその時はチチェスター詩篇の音楽を知らなかったのだけれど,
伽藍の広い空間にうすく響くその曲は,
本当に天から降ってくるように聞こえた.
そして,バーンスタインという現代の作曲家の作品が,
ミサの中で使用されているということに大変感動した.

帰国してCDを早速購入した.
(バーンスタイン指揮,イスラエル・フィル)
それを今朝も聴いてきたのである.
朝からこの天上の音楽にうっとりする.
それで少し救われたような心持ちになる.
そしてまた今日も頑張れる.

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