2009年8月7日金曜日

智の人,勝海舟

先日,尊敬する人は誰かという
アンケート結果が新聞か何かに載っていて,
そこに過去の偉人の名前が少ないことに
少し違和感があった.
現代の人が多いのである.

かといって,誰か歴史上の尊敬する人として
挙げてみろ,と言われても,私も困ってしまう.
そういえば,尊敬する人は誰か,などという
問いについて考えたことが,少なくとも
最近は,ない.

私はこれまで小説をあまり読まなかったのだけれど,
大学時代,そういえば司馬遼太郎の作品を
いくつか読んだことを,ついこの前に思い出した.
一番初めに読んだのが「燃えよ剣」だったかな.
次は「竜馬がゆく」かなんかで,私の故郷の話,
「峠」も読んだ.「新撰組血風録」なんてものも読んだし,
その他の短編集も読んでいたような気がする.
ただし,「翔ぶが如く」と「坂の上の雲」は読んでいない.
確か,「翔ぶが如く」の文庫本2巻の
途中で挫折していたような記憶がある.

さて,司馬作品には非常に魅力的な登場人物が
数多く描かれているのだけれど,
私が学生時代に好きになったのは,
というかシンパシーを感じたのは,
「勝海舟」だった.
勝の智に魅力を感じた.
尊敬する人といえば,勝海舟なのかもしれない.

心情的に好きなのは誰か,と聞かれれば,
西郷隆盛なのだけれど,
自分からみるとずいぶんと遠い存在で,
親近感はわかない.
もちろん,実際にあっていたら親近感を
持たずにはいられない人物であったろうけど,
どうも素晴らしすぎる気がする.

その点,勝も劣ることはないのだけれど,
性格がいくぶん偏屈で,そしてサムライという
概念から結局逃げることができなかった,という
ところが私にとっては逆に大変魅力的なのである.

幕末の三舟といえば,
智の勝海舟,意の高橋泥舟,情の山岡鉄舟で,
武道の観点から言えば,無刀流を創始した
山岡が最も有名なのだけれど,
槍の泥舟も知名度は低いけれど,
素晴らしい技術だったそうである.
では,海舟はどうだったのかというと,
実は海舟も武道においては直心影流の免許皆伝で,
男谷清一郎,島田虎之助の道場で修行をしている.
彼は,その武道で学んだことを政治に
活かしているように思える.
そこも魅力的なのである.

武道を稽古していても,実際にそんな技なんて
使う機会はほとんどない.
私も一度も使ったことがない.
(彼は生涯に一度も人を切ったことがないと
自慢している.しかし,一時期用心棒を務めた
岡田以蔵には,「人を切るのはあんまりよくない」
みたいなことをいったら,「私が切らなければ,
先生の命はなかった」などと突っ込まれて,
ぐうの音もでなかったとの話が伝わっている)
しかし,そこで修行した経験は,
生活万般に活かせるのだと思っている.
それを体現したのが海舟なのではないかと思うのである.

大学時代,キャンパスの近くに洗足池公園があり,
部のトレーニングに走って行った.
(池のボートにも乗った)
そこには,勝海舟夫妻の墓所がある.
そこに海舟の墓があることに気付いたのはずいぶんと
あとになってからのことで,そのころには司馬遼太郎の
小説を読んでいたので,ずいぶんと感動したのを覚えている.

そして海舟が西郷隆盛をしのんで建てた
彼の碑もそこにある.
海舟は,西郷隆盛のことがずいぶんと好きだったらしい.
それもわかるような気がする.

おっと,この辺りのことになると,どうも話が長くなっていけない.
今度また機会をあらためて,海舟,鉄舟の話をしてみたい.



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