2009年11月16日月曜日

ロックと弦楽四重奏,ブラック・エンジェルズ

呼吸法が健康にいいなんていっておきながら,
週末に寝だめしようなんて了見が不届きだったのか,
うっかり風邪をひいてしまった.
熱は全然無いのだけれど,のどが痛く,身体が重い.
休みだと思って気をぬくとろくなことがない.

今朝は事故で渋滞だった.
追突のようで,それほどひどくなさそうだったから,
たぶん運転手も大丈夫だろう.
しかし,大渋滞は発生する.

そんな中,車内ではFMから流れる
クラシックを楽しんでいた.
渋滞に腹をたてても仕方がないし.

キングクリムゾンの曲が
弦楽四重奏版で流れてきた.
おや,と思うが,面白い編曲で聴き入ってしまう.
モルゴーア・カルテットという日本の四重奏団の
演奏だった(初めて知りました).

弦楽四重奏曲というのは,オーケストラとはまた別の
ひとつの究極の形だと思われ,
私は,まだその高みを目指してもいないのだけれど,
(もちろん聴く方です)
いつか,いつかは,と思い続けている.

まぁ,ベートーベンの弦楽四重奏曲ならば後期のものを
しばらく聞いていたことがあるけれど,
これが非常に重い,というか,深い.
ハイドンやモーツァルトの作品と違って,
まるで人生を語るかのような内容の濃さである.
とても気軽には聴き通せない.
だから本格的に取り組んで聴こうというのは,
いまだに先延ばしなのである.

また,古典派だからといって,
その内容は形式通りなものではない.
たとえば「大フーガ」.
まるで現代曲のような強いリズムと不協和音に驚く.
以前にも書いたかもしれないけれど,
現代曲の演奏で有名なアルディッティ四重奏団も
この「大フーガ」だけは演奏するという.
弦楽四重奏曲は昔から実験的な試みが多くされる分野
なのかもしれない.

そして20年くらい前に,クロノス・ショックというものがあった.
クロノス・カルテットという四重奏団が,
現代音楽をクールに演奏して,
非常に人気になったのである.
そのひとつの象徴が,彼らが演奏する
ジミー・ヘンドリックスの「Purple Haze」である.
クラシックのカルテットが,ジミヘンを演奏したのである.
これは衝撃的なことだったらしい.
(私は当時まだクラシックに手を出していなかった)
彼らからしてみれば,優れた曲であれば,古典,現代,ロックを
問わず,演奏することは自然なことだということらしい.

実際私もCDを購入して聴いてみた.
正直,ジミヘンの曲はあまりピンとこなかったのだけれど,
一緒に録音されている種々の現代音楽には
ずいぶんと心を動かされた.
自分が持っていたクラシックのイメージが
がらりと変わる体験となったのである.

その後も,クロノス・カルテットのCDは数枚入手し,
現在は4枚ほど手元にあるはずである.
実は今朝,車に持ち込んだCDはたまたま
クロノス・カルテットの「ブラック・エンジェルズ」
だったのである(決してマンガではありません...).

この曲は冒頭からすごい音が鳴る.
弦楽器の音は,ピックアップマイクで拾われ,
アンプを通されて増幅されている.
人工的な音ではあるが美しい...
いや,人工的な美であるからこそ,
この曲の素晴らしさがあるのか.

たしかこの曲を聴いて感動したヴァイオリニストが,
この曲を演奏するためにクロノスカルテットを創設したと
ライナーノーツに書いてあったような気がする.
それだけの価値がある曲だと思う.
そして,今朝はそれが聴きたくなって
CDを車に持ち込んだのである.

ロックと弦楽四重奏曲.
意外に近い関係なのだとあらためて思う.
だが二つとも既にクラシックと呼ばれているのだ.

#クロノスの,他のCDには,
「狂った果実」という曲がある.
これがまた秀逸.
太田裕美のナレーションが入って,
かなり怪しい世界がそこに広がる.
おススメです.

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