2010年2月9日火曜日

「後の先」が有利ということ

「後の先」という武道の言葉がある.
敵に対して先を読んで先手をとる方が
一般的には有利なのだが,
(これを「先の先」といったりする)
武道の場合はそうであるとは限らず,
高級な戦術であればあるほど,
「後の先」が重要視される.

つまりは,相手に応じて勝つということであり,
相手の攻撃を受けなければならず
(あるいは攻撃をさせないように抑えねばならず)
非常に高度な技術が必要であることが
すぐに予想される.

しかし,実際そうなのだろうか.
確かに相手の攻撃を受けるのであれば,
「後の先」は大変難しい技術だが,
相手の攻撃がわかるのであれば,
それで勝ちを得るのはいとたやすいこと
なのではないかと思う.
「後の先」の方が有利ということも
ありうると思うのだ.

最近,ニュースで面白い記事を読んだ.
西部劇の映画などで,正義のヒーローは
悪役の方が先に拳銃を抜くけれど,
それよりも早く相手を倒すというところが
見せどころである.
それが科学的に実証されたというのである.

バーミンガム大学の研究グループが
Proceedings of the Royal Societyに
発表したらしいのだけれど,
二人でボタンの早押しをする決闘ゲームを
行わせたところ,あとからボタンを押す人の方が,
行動が平均21ms速かったのだという.
つまり自発的に行動をするよりも,
反射的に行動する方が,速く動けるということである.

拳銃の打ち合いでも,もしかすると
映画のようにあとから拳銃を抜く方が速いのかも
しれないけれど,これが素手による格闘,
あるいは剣による立会であれば,
「後出し」の方が非常に有利になる.

例えば剣であれば,間合いは一般に
「一足一刀」である.
(一足踏み出せば剣が届くという距離)
相手は自分を斬るために間合いを詰める必要がある.
つまりその分だけ攻撃を受ける人は
時間的な余裕があるのである.
その上,上記のように速く動けるというのであれば,
受け太刀の方が有利になる可能性は高くなるのである.

以前にも書いたかもしれないけれど,
自発的な行動を起こす前には,人は1秒以上も前から
脳内にその行動の予兆を示す変化が現れるのだという.
それを,攻撃しようとする本人よりも早く認識し,
(本人の顕在意識がそれを気づくのはずいぶんと後である)
それに反射的に動くことができたとしたら,
さらに受け太刀の方が有利になるのである.

まぁ,相手の心を知ることが最も難しいわけで,
一刀流でいうところの「水月移写」のように,
受動的に感知するのだろうと思うのだけれど,
全然感得できていない...

まるで,波一つない池の面のように,

「雁来たりなば雁を映じ,月来りなば,月を映ず」

のように相手のことが自分の心に映し出されるように
ならなければならない.
そうした明鏡止水の心はまだまだ遠いなぁ.

0 件のコメント:

コメントを投稿