2010年6月16日水曜日

「怪人二十面相」にドキドキワクワクする

うちの息子が最近珍しく本に夢中である.
どうもこれが江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズ.
乱歩の描く奇想天外な冒険譚に
ワクワクしているらしい.

学校からも借りてくるし,
近所の公立図書館に行っても,
シリーズのうちいずれか1冊を選んで帰ってくる.
そして帰ってくるなりページを開いている.
そんな息子の姿を見ていると,
こちらも嬉しくなってくる.

実は私は,このシリーズ,
ほとんど読んだことがなかった.
それが息子の熱中ぶりに感化されて,
まずは基本の基本,「怪人二十面相」を読んでみた.

いやいや,これが大人が読んでも意外に楽しい.
推理小説というよりも冒険活劇譚である.
明智小五郎,小林少年と
怪人二十面相との手に汗握るやりとりが,
全然読者を飽きさせない.
それでいて,筋は単純なのだから,
小学生の息子が夢中になるのもわかるというものだ.

#明智小五郎が帰国すると,駅に迎えに来ていたのは
なんと外務省の役人に変装した怪人二十面相だったのである.
それを知りながら明智は怪人二十面相の誘いに乗って,
ホテルにお茶を飲みに行き,
命をかけた緊張感の中で優雅な会話を楽しむのである.
いやぁ,この場面にはシビれる(死語?)

乱歩といえば,昨日ブログに書いた
「パノラマ島奇談」とか「人間椅子」とか,
おどろおどろしいものも大人向けとして有名なのだけれど,
それらとこの少年探偵団シリーズを比較してみると面白い.
確かに,大人向けのエログロの趣味は少年探偵団の話には
抜けているけれど,怪人二十面相が活躍するような
ケレン味は変わらない.
少し怪奇的で暗闇に動く影を感じさせるように
ドキドキさせて,かつ,どこかにユーモアがある.
大人も子供も,こうした魅力にとり憑かれてしまうのだ.

その怪しさといえば,横尾忠則氏の作品を思い出す.
彼の作品の中には,怪人二十面相シリーズの挿絵の
パロディがいくつかある.
実は何年か前,息子と一緒に彼の作品展「冒険王」を
兵庫県立美術館に見に行ったのだ.
当時まだ小さかった息子には,抽象的な作品は
よく理解できなかっただろうけど(私だって理解できない!(笑))
怪人二十面相が描かれた作品や,
他の作品の挿絵のパロディをみて面白がっていた.
それが今の熱中につながっているのかもしれない.
横尾氏は,少年時代に感じたそのドキドキ感を,
それらの作品の中で表しているのだ.

ということで,この少年探偵団シリーズには
親子ともどももうしばらく注目をしていきそうである.
ポプラ社からは26巻の文庫本のシリーズが発売されている.
うちにもすでに2冊ある.
この歳になって,手に入れるとは...
乱歩恐るべし.

#もっとシリーズには巻数があったと思っていたけれど,
乱歩のゴーストライターが書いたものが含まれていたため,
文庫版26巻には含まれなかったらしい...
しかし,挿絵はオリジナルの柳瀬茂氏のものそのままである.

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