2010年7月26日月曜日

バンクーバー空港にて(2) ~It's a small world! ~

いまだに海外ボケが続いている.
「海外ボケ」は「時差ボケ」ではない.
時差ボケは,ほとんどなくて体調は良好である.
「海外ボケ」というのは,どうも自分が
まだカナダにいるような感じがするというものである.
バンクーバーのファッション,スタイル,時間の進み方.
そうしたものが今も私の中で続いているのである.
いい感じなのだけれど,いつまでこの感覚を
保ち続けることができるのだろう?
失うのが怖い.
まぁ,こうしたものは手放したくないと思った時から,
だめになってしまうものなのだが.

さて,バンクーバー空港でシアトルへ向かう
荷物検査のときのこと.
私の前に並んでいたアメリカ人らしき
若い夫婦(たぶん私と同年代)が係員にガイドされて
一度列を離されたのだけれど,また戻ってきた.

別に私はいじわるする必要もないので,
もう一度私の前の順番に入れてあげた.
そうすると,夫の方が私の方向に向いて,

「ありがとうございます」

と日本語で,にっこり微笑んでお礼を言った.
あまりのことでびっくりしてしまい,どぎまぎと

「いえ,どういたしまして」

と言うのがせいぜいだった.
実は旦那さんの方が日本の武具(たとえば木剣や杖など)を
入れるような長い紺色の布袋を持っていて,
しっかりとした姿勢でいたので,
なにか「やっている」のかなと私は密かに注目していたのである.
良い機会だったので,

「なにか武道をされているのですか(一応英語)」

と話しかけてみた.
今度は向こうがびっくりしている.

「いえ,これはつりの道具です(日本語)」

と話してくれた.私の思い違いかとがっかりしていると,

「実は武道もしています(日本語)」

というではないか.

「どんな武道ですか(今度は日本語)」と訊くと,

「Daito-ryu Aiki Jyujutsuと言います(日本語)」

との答え.

「知っていますか」(以下,ずっと日本語)と尋ねるので,
「ええ,知っています」と答える.

向こうは驚いていたけれど,ちょっと日本武術をかじったものなら,
大東流合気柔術の名前を知らない人は少ない.

「東京に住んでいました」というので,
「先生はどなたですか?近藤先生ですか」とさらに尋ねると,
向こうは目を丸くして

「Okamoto Seigou先生です」

と答えてくれた.私が,
「では,六方会ですか?」と訊くと,
「はい,御存知ですか」というので,
「もちろん」と答えると向こうは大変うれしそうだった.
岡本正剛先生といえば,映画「AIKI」の
先生のモデルになったほどの有名人である.
(ちなみに,映画AIKIは,交通事故で下半身不随になった
主人公(加藤晴彦)が,大東流合気柔術に出会って,
車椅子で稽古に励み,また新たな一歩を踏み出そう,
と決意する,ちょっと感動的な映画なのである.
ちなみに先生役は石橋凌.
謎の女の子役のともさかりえが素敵なのだ)

「あなたはなにか武道をやっているのですか」

と今度は向こうが尋ねるので,

「はい,心身統一合氣道,Ki-Aikidoです.御存知ですか」

と訊くと,

「はい,もちろんです.
私は1985年にTohei先生に習ったことがあります」

との答え(さすが藤平先生).
向こうはニコニコして,わざわざ名刺を出して私に渡してくれた.

なんと大東流,六方会と漢字で書いてある名刺で,
四段,Jun-KyoujuDairiと書いてある.
(おぉ,恐れ入りました...と思わず言ってしまった)
ニューヨークで道場を開いているらしい.
やはりタダモノではなかった...

最後に,奥さんの方が(こちらは日本語は理解できなかったらしい)
旦那さんにどういうことなのか,尋ねたらしく,
最後にこちらに振り向いて,

"Oh, It's a small world!"

とにっこり笑った.

いや,ほんとに.
いるところには,ちゃんと関係者がいるものなのである.
世界は狭い.

#別になんという話でもないのだけれど...

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