2011年3月31日木曜日

ベートーベン,交響曲第3番「英雄」: ベートーベンの交響曲にも「癒し」は存在する

毎日,祈るように原発のニュースを見ている.
現場で命がけで働いている人の苦労が
早く報われますように.

こうした状況だから,聴く音楽も
どんなジャンルでも,というわけにはいかない.
事実,ラジオからは,ヘビメタ系の音楽が
震災以降,聞こえてくることが少なくなった.
音楽くらい自粛する必要はないかと思うけれど,
やっぱりヘビメタは,今は聴きたくないな.

クラシック音楽であっても,
今現在,心にあう曲をさがすのは,
なかなか難しい.

日曜日にモーツァルトのレクイエムを聴いた.
そういう状況にいる自分が嫌になった.

そして手に取ったのが,

ベートーベン,交響曲第3番「英雄」

1960年代(?)のカラヤン&ベルリンフィルの録音である.

実は,父が5年前に脳内出血で倒れて
生死をさまよったときに,聴いて力づけられた曲である.
それは,勇壮な第1楽章や,葬送行進曲の第2楽章ではなく,
第3楽章であった.

この曲にあって,一番地味なこの楽章なのだけれど,
シンプルな構造が浮かび上がってきて,
それがなにかしら私を勇気づけてくれる.
あのときも,自分の中のなにかを埋めてくれるような
気がしたけれど,今回も心の状態が
少し回復できたような気がする.
強く励ましてくれる曲ではないけれど,
(だから今聴けるのだけれど)
優しく私の横にいて,安心させてくれる音楽である.

そして第4楽章.
シンプルな構造の力強さがますます表に現われて,
それが私を癒していく.
ベートーベンの交響曲には,「癒し」も存在するのだ,
とあらためて気づく.
ただ激情の音楽というわけではないのだ.
こんな時期だからこそ,ベートーベンが
求められるのかもしれない.


今朝は,アルヴォ・ペルトを聴きながら出勤.
少し穏やかすぎたようだ.
今はまた,ベートーベンが聴きたくなっている.

2011年3月30日水曜日

原発1基分をまかなう太陽光発電システムは

Q.原発1基分の発電電力量をまかなうためには,
太陽光発電はどれくらい必要か.

少し試算してみたいと思います.

<試算>

※原子力発電所の設備利用率を考慮して計算し直しました(3/31)
JULYさん,どうも有難うございました.

原子力発電所一基分相当の100万kWを
太陽光発電でまかなうとします.

一般家屋の屋根に設置するパネルで
供給すると仮定します.
1件あたり4kWの太陽光発電を設置するとすると,
必要な屋根の面積は,およそ28m^2程度.
(太陽光パネルのメーカS社の仕様より計算.
出力163Wのパネルの面積は1.15 m^2.
100万kWでは,およそ700万m^2(=700ha)必要.
東京ドーム150個分.
後述の通り,466.9万kWでは,700個分に相当)

コストはだいたい1kWあたり50万円とすると,
一軒あたり200万円かかることに
なります.

さて,100万kW分ですから,トータルでは,

100万kW * 50 万円 = 5000億円

のコストとなり,それらは,

100万kW / 4 kW = 25万軒

の家庭が分担して負担することになります
(繰り返すと,1軒あたり200万円).

しかし,これは設備容量(発電できる最大能力)が
100万kWになったに過ぎません.

原子力発電所は,24時間100万kWを定常的に
出力することができますが,太陽光発電では
そうはいきません.
夜は運転できませんし,朝夕は出力が落ちます.
雨が降っても発電できません.
また季節によっても変動します(5月くらいが一番
発電量が多くなる).
また,100%の発電電力が得られることなんて,
1年間に数えるだけです.

---- (以下,稼働率を考慮して計算を変更しています.3/31)

実際には,原発の稼働率は60~75%程度です.
最近は地震や故障によって稼働率が落ちていますが,
何もなければ70%はいくと思われます.
(欧米はそれ以上の稼働率)
そこで,総発電量で比較することにします.

年間設備利用率(定格容量にくらべ,年間で
どのくらいの発電量が得られたかの指標

設備利用率
= (1年間の総発電電力量[kWh])/((定格出力[kW])*(1年間[h]))


で表すと,太陽光発電は,15%はなかなかいかないと思います.
(S社HPで,神戸市に設置した場合を計算すると12.7%だった)

したがって,100万kWの原発の発電電力量(稼働率70%)を
まかなうだけの太陽光発電の設備容量は,
設備利用率15%と多めに見積もっても,

100万kW * 0.70 / 0.15 = 467 万kW

と,4.67倍は必要という計算になります.
(この場合,25万 * 4.67 = 117万軒の住戸が
導入しなければなりません.
1軒平均3人が住んでいるとすると,それだけで
350万人の大都市ということになります)

コストは,太陽光発電だけで

467万kW * 50万円 = 23,350 億円

2兆円を越えるコストということになります.

実はこれだけでは足りません.
晴れた日中に発電した電力を,
雨の日や夜に使用するために,
電力貯蔵装置が必要となります.

残念ながら電力は貯めておくことは
基本的にできません.
大規模な電力を貯蔵する装置としては,
揚水発電所があります.
高所のダムの貯水池から水力を得て,
昼間のピーク時などに発電し,
夜間は,水車をポンプとして用いて
低所の貯水池から高所へと水を送り,
電力を位置エネルギーとして変換して
貯蔵しておく方式です.
日本には,いくつもこの揚水発電所がありますが,
(夜間のポンプ出力を調整することによって
負荷を調整する機能を持たせている
可変速揚水という技術は日本発のものです)
全体の発電量から見ると微々たるものです.
また,立地の問題で今後建設するのも
難しいといわれています.

そこで,二次電池の開発が進められています.
大規模なものでは,従来の鉛蓄電池の他,
ニッケル水素,リチウムイオン,ナトリウム硫黄,
などの電池が開発されており,充電,放電が可能です.
化学エネルギーに変換して電力を貯蔵することになります.
携帯電話などに使用されている高性能な
リチウムイオン電池は身近なものですね.
しかし,これが価格が高いのです.
大容量のものを作ろうとすると,かなりのコストが
かかってしまいます.

そこで,各家庭でバッテリを分散して持つことにします.
あるメーカが開発している蓄電用標準電池システムは,
1ユニット1.6kWhです.
一般家庭で1日の消費量を10kWh程度とすると,
3ユニットで半分をまかなえます.
残りは電力会社がなんとか調整することにして
3ユニットを家庭が負担して持つことにします.
1ユニットは50万円ですから,3ユニットで150万円.
太陽光発電システム200万円にさらに150万円
コストを負担することになります.
1軒あたりのトータル設置コストは350万円です.

全体では,467万kWの設備容量分に対して
バッテリを用意するとすると

23,350億円+150万円 * 116.75万軒 = 40,862億円

です.4兆円近くのコストが必要となります...

コスト低減の解決策として,
メガソーラーと呼ばれるような,
広大な土地に太陽光パネルだけ並べる方式も
考えられますが,
パワーコンディショナと呼ばれる
半導体電力変換器は集約されて多少
コストは低減されるにしても,
パネルを設置するための
(台風や積雪に耐える強度を持つ)架台が必要で,
これがまた大変にコスト高なのです.
住宅用よりもむしろコストがかかると思われます.

原発1基が4000億円程度で建設されることを思うと,
発電量に対して太陽光発電システムは
多大な設置コストがかかることがわかります.

今後,太陽光発電は導入を進めなければならないので,
なんとか解決策を模索していかなければなりません...
技術的には解決できても,コストが見合わなければ,
導入は進まないのです.
今後は,太陽光発電の効率向上,二次電池の性能向上と
価格低減が望まれます.

今日は,設置コストの問題だけでしたが,
その他,発電電力買い取りの問題,
配電系統の電圧制御に与える影響の問題,
事故時の一斉解列の問題なども
太陽光発電が大量導入される場合には,
考えなければなりません.
それは,また次の機会にお話ししたいと思います.



*コメントをいただきまして,
原発の稼働率70%を考慮して計算し直しました(3/31).
つまり必要な容量,コストは当初の7割になりました.
>JULYさん,コメントどうも有難うございました.


*ピーク電力,昼夜間の電力変動については,
ここでは考えていません.
たとえば梅雨の時期には,
残念ながら上述のバッテリ容量ではとても補償できる
ものではないからです.
太陽光発電では,原子力のベース電力の代わりを
つとめることは,大変難しいのです.



※お詫び

すみません.当方のミスで,下記の2つのコメントを
消してしまいました...

以下に,回答とともに示します.

-----------------------

「田中」様からのコメント

>>原子力発電所は,24時間100万kWを定常的に出力することができますが,太陽光発電ではそうはいきません.

ということですが、
昼間の電気使用量と夜間の電気使用量は違いますので
定常的である必要は必ずしもないのでは?
将来的にはスマートグリッドの可能性もありますし。
また高野雅夫氏(名古屋大学准教授)は
「2009年の原子力以外の発電による発電量は、
年間総発電量から原子力発電による発電量を引いた、
957-278TWh=679TWh。
これは実は1985年の総発電量584TWhよりも多い。
つまり1985年当時の電力消費量になれば、
原子力発電所を全部止めてもやっていける。」
とも述べています。
ttp://blog.goo.ne.jp/daizusensei/e/4fdfb6bead84198c5ecbd05030cc142d

東大名誉教授の安井至氏は
日本には地熱発電の可能性が十分にあると語っておられます。

洋上浮体風力等の他の次世代エネルギーや
家庭用太陽光発電システムを組み合わせれば
今後も絶対に原発が必要とは言い切れないように個人的には思います。

少なくとも次世代エネルギーの活用研究と同時に
全ての原発を一気に無くすのではなく、
徐々に廃炉にしていく方途もあるはずです。

--- 私のコメントです.

スマートグリッドであっても,太陽光発電の電力変動を
補償するためには,電力補償装置は必要です.
定常的である必要はありませんが,
平滑化する必要はあります.

1985年当時の電力消費量に戻すことは大変だと思います.
もちろん,省エネがそこまでできればいうことないのですが...

地熱発電や洋上発電はぜひやっていただきたいと思います.

自然エネルギーは必ず導入していかなければならないと思っています.
私は,この記事で自然エネルギーの導入にはコストを必要とすることを
まずは確認したかったのです.



-----------------------

「JULY」様からのコメント


ピークの電力と総発電量の話がごちゃ混ぜになっている感じがするのですが....。

100万kw の電力を満たす事だけを考えれば、夜間を含めた太陽光発電の設備利用率 15% はなく、昼間の発電量が平均で定格の何%ぐらいになるか、で考えたほうが良いように思います。

逆に総発電量を考えるのであれば、原発側の平均稼働率が 60% 程度である事を考慮に入れる必要があるのでは?

総発電量での比較は、原発の平均稼働率や、他の発電方式に比べて、発電所と消費地が離れていることによる送電ロスを入れても、同様の計算で2兆円規模になると思うので、現時点では、初期コストが圧倒的に高い事には違いないと思いますが、ちょっと気になりました。

ピーク電力の方は、日中のピークを賄うように太陽光発電を使えば、という人がいますが、冬場は朝夕にピークがあるので、そう簡単な話じゃないよなぁ、という感覚を持っています。

--- 私のコメントです.

おっしゃるとおりです.
上記のとおり,原発の稼働率70%を考慮して,
計算し直しました.
ご指摘どうも有難うございました.

ここでは簡単のために総発電量を考えています.
おっしゃるとおり,ピーク電力の話はそう簡単ではありません.

2011年3月28日月曜日

なぜ日本では風力が普及しないのか

さて,次の問題は,以下の通り.

Q. 再生可能エネルギーで,すべての電力をまかなえないのか.

原子力がこのような状況になると,
エコという単語に期待している人は,
当然こうした疑問を持つと思う.

実は,昨年アメリカで開催されたパワーエレクトロニクスの
専門家による国際会議ECCE2010において,夜に開かれた
ラップセッションにおいてのテーマのひとつがこれだった.

最初に答えをいうと,それは非常に困難である,
という結論だった.
それがたとえ,風力による電力の供給が比較的安定である
ヨーロッパにおいてでもである.
風力発電の適地が少ない日本では,言わずもがな,である.

ということで,今日の問題は以下のように
範囲を狭めて考えることにする.

Q. 日本ではなぜ風力が普及しないのか

ヨーロッパでは,偏西風のおかげで,
比較的安定な風力による電力が,
昼夜を問わず得ることができる.
それでも電力の変動は生じているし,
太陽光発電の導入もずいぶんと進んでいるから,
電力の変動幅は年々増大している.

各国それぞれではその電力変動を
吸収しきれなくなってきたから,
ヨーロッパ各国を国際的な電力系統で接続するという
SuperGridの構築も9カ国で合意されている.
今後海を渡って直流送電系統が建設されていくだろう.
そうなれば,電力を貯めることができなくても,
イギリスで発電した電力を,即時にスウェーデンで
効率よく使うことができるようになるのだ.
(少し鉄道の電力回生に似ている)

では,日本ではどうか.

日本ではまず風力発電が難しい.
その理由として,

1) 風況が良く立地できる場所が少ない
適地(風力発電で採算が取れる場所)の多くには
既に建設されている.
もう国内の陸地に,風力発電の適地は残されていないと
言われている.
(NEDOの調査ではまだまだあるということになっているけれど)
もともと風の向きが季節や昼夜によって
大きく変わる日本沿岸には,風力は不向きなのである.
そのうえ,風車がたてる低音の騒音に対し,
苦情が集まりやすい.
また,環境破壊,バードストライク(鳥がブレードに当たって
しまうこと)などの問題もあって,
昔ながらのエコのシンボルというだけでは
風車は歓迎されなくなっている.

2) 台風,雷などの影響が大きい
日本には,台風がある.
台風は強い風だから,ますます発電ができて
良いではないか,と言いたいところだが,
実際には,風車はある風速以上の風が吹くと,
機器の安全のために,運転を停止するのが普通である.
だから,許容できる風速の範囲を越えてしまうと,
発電はできないのである.
台風のときは,大抵発電はお休みである.

また,日本は雷が多い.
日本海側の冬季雷などは,落雷の
エネルギーが大変大きく,ブレードに落ちようものならば,
ブレードは破損してしまう.
現在,大型風車は,回転直径はジャンボジェット機
(ボーイング747)ほども大きいから,
大変高価(~5000万円とも言われる)である.
そして,もっとコストがかかるのがその交換費用.
なにせ,風車が立っているのは,山の中の僻地なのだから.

3) 洋上発電(海の上に風車を設置し,
発電電力を陸地に送る方式)は,漁業権の
問題などがあって,実現が難しい.

ヨーロッパでは,洋上発電というのは,
すでに実用化されている.
しかし,日本ではほとんど実用化されていないのではないだろうか.

また,この洋上発電というのがいろいろトラブルが
発生しやすい.
風力発電機には,増速機(ギア)をつかっているけれど,
洋上ということで塩分を含んだ水にさらされて,
やっぱり問題が起きる.
もちろん,電気的にも問題は起こりやすい.
そして,修理が洋上ということでまた大変なのである.
ヨーロッパでは普及したというけれど,そういう理由で
今ではあまり人気がないとのことである.

4) 風力発電機の出力が不安定である.
風車を設置しても,安定して風が吹くわけでなく,
文字通り風まかせな不安定な電力となる.
これが一番の問題である.

系統が大きく,風力発電による電力変動の割合が
小さければ,問題はない.
しかし,風力発電の割合が大きくなってくると,
その変動の悪影響が出てくる.

電力が安定しないとどうなるか.
電力会社は,周波数や電圧の維持が困難となり,
最悪,停電を招くことになる.

たとえば,原子力発電所一基分程度の100万kWを
ある地方の風力発電ファームでまかなえたとする.
そこに台風がやってくる.
あるいは風が急に止まったとする.
そうなると,当然風車群は運転を停止する.
電力会社から見れば,突然原子力発電所一基が
解列したのと同じ影響がある.

それをうけ,電力会社が電力不足を補おうとして,
他の火力発電所の出力を急いで立ち上げた頃に
また風が吹き始めたら,
今度は電力の供給過剰で周波数が上昇してしまう.
すると今度は,風力発電機がつぎつぎと解列していくことになる.
電力系統は大変な状況になって,
最悪大停電につながってしまう...
(2006年の欧州大停電は,風力発電620万kWが一斉に解列
したことが原因だと言われている)

系統を大きくすれば,その影響は小さくできるから,
ヨーロッパのSuperGridは効果的に働くだろう.
しかし,日本は各電力会社が独立に運用するのが基本である.
系統が許容できる風力発電の出力は限られているのである.
だから,北海道や四国などでは,すでに風力発電所の
系統への連系が制限されているはずである.

この電力変動を抑制するためには,
電力貯蔵装置が有効なのだけれど,
これが高価で,かつ大規模なものの実現が難しいのである.
風力発電は,発電コストが10~25円/kWh程度と言われ,
再生可能エネルギーの中で,採算が取りやすいものと
言われているのに,高価な電力貯蔵装置を用いなければならない,
となると全くビジネスとして成立しなくなってしまう.

というわけで,現状日本では風力発電が
普及するのは難しいことになっている.
ヨーロッパのように風力を日本も導入すべきだ,という議論が
あるけれど,なかなかビジネスとして成立するのは
難しいようである.
日本は,風力に対しては国土が狭すぎるのかな,と思う.

2011年3月25日金曜日

50Hzと60Hzを統一できないのか

今日は,以下の話題.

Q. 東日本の電力系統の周波数50Hzと
西日本の60Hzを統一できないのか

これも当然,現在の状況を見れば
出てくる話題だと思うけれど,
私がこの話題を見つけたサイトでは,
大変感情的な記事になっていて,
(電力会社を感情的に批判している)
少し悲しくなった.

私の考えでは,周波数の統一は
大変に難しい,と思う.
その理由は,言ってしまえばコストなわけだけれど,
コストがかかる原因は,技術的な問題である.
以下に,私が今思いつく技術的な問題をまとめる.

1) 発電ユニット(発電機+原動機)が
周波数の変化に対応できないから

電力系統の周波数は,実は系統に接続されている
発電機(同期発電機)の回転数によって決まっている.
発電機は,タービンや水車などの原動機によって
回転させられている訳だけれど,その回転数は
系統の周波数50Hzまたは60Hzに同期するように
(電気的に同じ速度で回転するように)なっている.
機械的な回転速度は,原発の発電機で
1500rpm/1800rpm,火力で3000rpm/3600rpmと
だいたい決まっている.
(rpmは毎分の回転数を表す単位,
1500, 3000 rpmは50Hz系統,
1800, 3600 rpmは60Hz系統)
したがって,1.2倍の回転速度の違いがある.

こんなに回転速度が変化してしまうと,
タービンは振動してタービン翼などに損傷をきたす
恐れがでてくる.
そのため,発電ユニットは,周波数が許容範囲を
逸脱した場合には,機器の安全のため
停止することになっている.

(因みに電力供給が需要に比べ不足してくると,
電力系統の周波数が下がる.
この下がり方が大きいと,あちらこちらで
発電機が運転を停止し,大停電に通じることになる.
現在,関東で行われている計画停電は
この大停電を起こさないように,
電力需要を低減し,周波数変化を起こさないように
しているのである)

結局,回転体の機械的な問題で,
50Hzの発電ユニットを,60Hz圏内では
使用することができないのである.
これを解決するには,ほとんどの
発電ユニットを造り替えなければならないだろう.

2) 変圧器に問題がある.

変圧器とは,電圧の値を変化させる
電気機器で,電柱の上に乗っている
あのドラム缶みたいなものも,その一種である.
(あれは柱上変圧器といって,6.6kVから
200V,100Vへ電圧を変換している)

変圧器は,流れる電流とその周波数によって
鉄心と呼ばれる部分の設計が決まる.
50Hzで使用される変圧器は,60Hzのものよりも
実は鉄心の断面積が1.2倍大きい必要がある.
(鉄心を通る磁束量が1.2倍大きくなるため)
そのため,50Hz圏内の変圧器は
同じ運転条件(定格)のもので,
60Hzの変圧器よりも大きなサイズになっている.

したがって,まず,60Hzの変圧器を50Hzの系統
で使用するためには,電力(電流)の量を0.83(=1/1.2)倍に
小さくしなければならない.
(だから通常は60Hzの変圧器を50Hzでは使用しない)
一方,逆に50Hzの変圧器は,60Hzの系統でも
使用できるはずである.
ただし,鉄損と呼ばれる損失が増加してしまうし,
振動や騒音が大きくなるだろう.

50Hzの系統を60Hzにするならば,
現在の変圧器は使用できるかもしれないが,
損失は増大することに注意する必要がある.

3) リアクトルやコンデンサの値が変化する

リアクトルとは交流用のコイルである.
リアクトルの電流の流しにくさは,
電流の周波数に比例する.

この交流電流の流しにくさは,直流でいうところの
抵抗(オーム)に相当し,インピーダンスと
呼ばれ,単位はオームで表される.
(リアクトルのインピーダンス Zは
Z = 2 * pi * f * L
pi: 円周率,f: 周波数,L: インダクタンス
すなわち,周波数に比例する)

リアクトルのインピーダンスは,
周波数に比例するから,
50Hzに比べ,60Hzの系統では
同じリアクトルでも,1.2倍電流を流しにくくなる.
そうなると送る電力が小さくなることになる.

一方,コンデンサも周波数に依存して
インピーダンスが変化する.
(ただし,こちらはリアクトルと違って
反比例する.すなわち直流では,
インピーダンスは無限大となり,
コンデンサは直流を流すことができないことが
わかる)

すなわち,リアクトルやコンデンサの振る舞いが
変わってしまうことになり,規定の電圧が
得られなくなったり,あるいは電力が送れなくなったりし,
あちらこちらで不都合が生じてしまうことになる.
やっぱり難しいのである.


以上の理由から,周波数の統一は,今となっては
非常にハードルの高い事業になっている.
やはりそれぞれの系統で独立して運用するしか
ないようである.


#少し脱線した問題を.
(答えは,検索すればすぐにわかります)

Q. 新幹線は交流を受電して走行するのだけれど,
東京から大阪までを結ぶ東海道新幹線は,
50Hz or 60Hzどちらの周波数で
運用されているのでしょうか?

Q. それでは北陸新幹線(長野新幹線)は?

2011年3月24日木曜日

周波数変換器を増設しないのか

火曜日(3/22),燃えるように忙しかった.
やはり連休明けは仕事が多くなる.
なんとかヘロヘロになりながらも乗り越える.

昨日水曜日,核融合科学研究所に出張.
ミッションを果たし帰ってくる.
昨晩は,ぐっすりと眠ることができた.
これから少しは自分の時間がとれるだろうか...

さて,相変わらず原発の事態を
祈るような気持ちで見ている.
昨日の出張の際も話題が出たのだが,
東京電力の電力不足を機に,
これからの電力システムのあり方が
今後検討されていくだろう,ということ.

昨日にかかわらず,ネット上でも
いくつか話が出てきているので,
このブログにおいても,わかる範囲で
書いてみたいと思う.

Q. 60Hz圏内の電力を50Hz圏内に融通できる
周波数変換装置を増設することは考えられないか.

先に説明したとおり,60Hz圏内の電力を
50Hz圏内にはそのまま送ることはできない.
周波数を50Hzに変換するためには,
半導体を用いた周波数変換装置が必要である.
(昔は機械式の周波数変換機もあったようだが)
増設することによって,現在100万kWに制限されている
融通電力をもっと増やすことはできないか,という話である.

こうした話は,現在の状況をみれば,
当然出てくるものだと思う.
しかし,私は以下の理由で,周波数変換器の増設は
可能性が低いと思う.

1) コストが高い.
変換器1 kVAの容量あたり5万円の建設費がかかるとする.
(一般的に言われている値よりは少し小さいかもしれない)
100万kW増設するとすると,その建設費は500億円に達する.
原子力発電所の建設費が100万kW程度で3000~4000億なので,
安いように思えるかもしれないが,周波数変換器は
あくまでも電力を融通するだけで,電力を生み出さないのである.
融通した電力は他の電力会社から購入しなければならない.
こう考えると,別の発電設備に投資した方が得である.

2) 設備利用率が悪い.
こうした周波数変換器が運転されるのは,
あくまでも電力不足などが生じた緊急事態のみである.
通常時,各電力会社は,その管内での需給バランスを
とるように電力系統を運用しており,他の管内から
電力を定常的に融通するようには考えられていない.
周波数変換器を増設した後,東京電力が
発電能力を回復し,需給バランスがとれるようになったとすると
周波数変換器は運転を休止することになる.
これまで同様,運用期間は本当に一年の間にわずかなものに
限られることになる.
設備の利用率(稼働率)が低くなることになる.
巨額なコストをかけておいて,使わないという状況が訪れる.
やっぱりそれだったら別の発電設備を
建設する方が得だと思われる.

3)建設には時間がかかる
増設すると決まっても,すぐにできるわけではない.
大型の半導体素子を大量に発注しなければならない.
たぶんサイリスタ系の素子が使用されるのだろうけど,
大容量サイリスタは日本ではもう作られていない.
(現状の装置の交換部品分はあるだろうけれど)
海外発注,それも大量発注なので,
数が揃うまでには相当な時間がかかることが
予想される.

ということで,周波数変換器の増設は
今回の事態を受けて,少しはあるかもしれないが,
大容量の増設はないものと考える.
パワーエレクトロニクスを研究しているものとしては,
パワーエレクトロニクスが活躍する装置へのニーズは
うれしいのだけれど,今回については
あまり得策ではないようだ.


#しばらく,こうした技術的な話が増えるかもしれない.

2011年3月19日土曜日

正しい知識に基づいて,分別のある行動をとろう

本日出勤してきている.
土曜の夕方は生協の食堂もお休みなので,
学外のレストランに夕食を食べに行った.
帰りにスーパーによると

「東北大震災のため,
節電をしております.
ご理解をよろしくお願いいたします」

との張り紙が.
(言葉は少し違っていたかもしれませんが)

だから,関西で節電をいくらしたって,
ある電力以上は関東に送れないのだって.
テレビやラジオ,インターネットでこれだけ
アナウンスされていても,このような誤解が
平気でまかりとおっている.
悪影響のある善意である.

私の家の近くのスーパーでも,
乾電池や水などが大変品薄なのだという.
これだけ買い占めはやめよう,とか
関西の方では十分に商品がある,とか
政府をはじめ,アナウンスされているにも
関わらず,感情的になってそうした行動に
出る人がいる.

私はそうした感情的な行動が嫌いなのである.
日本ではそうした感情的な行動が,
ときに許されている雰囲気がある.
しかし,私はそうした行動は恥だと思っている.

だから感情的な議論というのにも
全くつきあいたくないと思っている.
感情的になることと,建設的な議論が
できるかどうかは全く別物である.
むしろ悪い影響を与えることがほとんどである.

私は話し合いをしていて,
相手が感情的になると,本当に嫌になる.
時間の無駄になるから,さっさと
話を切り上げて,その場から立ち去りたくなる.
感情的になるのは,単にその人が
腹を立てて,そのはけ口を求めているに過ぎない.
そんな「ガス抜き」につきあうのは,
まっぴらごめんなのである.

しかし,日本の文化というのは,
そうした無駄に感情的になるのも
許しているところがある.
(もちろん,私は感情を否定しているのではない.
感情は優先されるべきときもあるが,
それによって,建設的な議論ができなくなるのが
耐えられないと言っているのである)

しかし,もうそろそろ私たちも大人に
なるべきときではないか.
感情と議論は別物として取り扱い,
いかに建設的な結論を導き出すかということを
考えるべきではないかと思う.

実は,このことは今後の原発の議論についての
危惧である.
今回の事故が収束したのち,当然
今後の我が国の原子力行政について議論が
されることになるだろう.
そこで出てくるのが,これまでも繰り返されてきた,
感情的な議論である.
(議論と呼ぶにも値しない一方的な主張といった
方が正しいような気がするが)
リスクという概念を用いた冷静な議論が
いつも押しつぶされる.
安全,ということを主張するならば,
リスクという尺度をよく考えるべきである.
もちろん,安心が大切,という意見もよくわかる.
しかし,冷静に,定量的な検討が,
今後のエネルギー政策に必要なのだ.

日本人は,先に挙げたように,
感情的な行動にでることが多いような気がする.
もうそろそろ大人になるべき時なのだ.
私が憎むのは,「無知・無分別」である.
正しい知識に基づいて,分別のある行動を
とりたいと思う.
(私も全然できていないのだけれど)
大変な今の時期だからこそ.

#冒頭のスーパーは,単に今回の状況に
便乗して節電し,光熱費を浮かしたい
だけなのかもしれない

2011年3月18日金曜日

首都圏大停電は発生するのか

昨日の記事にコメントをいただきましたので,
ここにその回答その他を書きたいと思います.

【コメント】

アメリカのような大停電は、日本では起きないとも言われていますが、首都圏の場合、一旦電圧崩壊が起きたとしたら、どのくらいの規模で広がる可能性があるのでしょうか


現状では毎日計画停電しているので、計画外で100万世帯くらい停電でしても驚かない状況だと思います。1000万世帯の停電といった事態が起こりうるのでしょうか。

また大規模停電の場合、復旧が2,3時間ですまなくて、10時間以上かかるようなことになるのでしょうか。

------------------------------------(ここまで,引用)

まず正直を申しまして,私の持っている知識と情報では,
停電の規模を予測することはできません.
大変申し訳ございません.

おそらく停電が起こった時点での発変電設備の運転状態,
発生した場所,需要の状況,電力会社の対応によって,
その規模が変わると思います.

1987年の首都圏大停電(関東西部大停電)について少し調べてみると,
停電電力は816.8万kW(約280万軒),すべての変電所の復旧に
かかった時間は3時間21分とのことです.
(経済産業省プレス発表資料:
「電力系統の構成及び運用について」
電力系統の構成及び運用に関する研究会(平成19年4月)による)
関東中央部での電力の復旧は30分程度,
解列した3台の発電所の再並列は1時間30分程度であったようです.

これは,昨日の記事に書いた無効電力の供給不足による
電圧崩壊が原因で,13:07までに電力会社がすべての
コンデンサを投入しても,13:19には停電が発生しています.
大変短時間で停電まで事態が進展していることがわかります.

この時の反省から,ずいぶんと系統側にも対策が施され,
多くの高速な無効電力補償装置が設置されてきました.
しかし,だからといって,もはや電圧崩壊は発生しないとか,
停電範囲が小さくなるとははっきりとは言えないのです.

さらに結局,供給電力(有効電力)が不足していれば,
別の理由で,停電は起きざるを得ないのです.

昨日の記事にも少し書きましたが,
供給電力が不足すれば,系統に接続されている
発電機の回転数が落ちていきます.
(自転車のペダルと同じです.
坂道にさしかかって負荷が増加すれば,
ペダルを漕ぐスピードは落ちますよね)

系統の周波数は実は発電機の回転数で決定しています.
したがって回転数が低下すると周波数が低下していきます.
そして,発電機の運転できる周波数領域を
下回ってしまうと機器の安全のために
発電機は停止することになります.

ある発電機が停止すると,ますます供給電力は減少し,
さらに周波数低下を引き起こすことになります.
その結果,連鎖的に発電機は解列され,
負のスパイラルとなって,大規模停電に至るのです.
これが,どれだけの範囲になるかは,
私には予想できません.

コメントいただいたように,日本の系統は
米国や欧州に比べ,大規模停電が起こりにくい
構造をしています.

(米国や欧州はメッシュ(網の目)構造のため,
電力の流れが複雑で,事故で
一部の回路を切り離すことになっても,
その後の電力の流れ(潮流)が予想しにくいのです.
一方,日本は放射状構造(樹枝構造)であるため,
下流から回路を切り離していくことができます.
だから,米国や欧州では事故が波及しやすく,
日本では,その影響を限定的に抑制することが
できるのです)
しかし,これは事故を原因とする停電を
想定した話であり,
根本的な発電電力の不足は,
こうした構造に関わらず停電を引き起こす
ことになるのです.

また復旧時間については,一般に停電範囲の
規模に比例して大きくなってしまいます.
機器の故障が生じていなければ,機器自体は
1~数時間で復旧できるものと思われます.
(電力潮流を考えながら立ち上げていく必要が
あるので,それだけでは決まらないと思いますが)

しかし,復旧時にやはり電力が不足していれば,
再び停電が起こりますので,結局
輪番停電をしながら復旧することになると思います.
この輪番停電地域では,さらに数時間停電時間が
伸びてしまうものと予想されます.



以上をまとめると,

・電圧崩壊が生じなくとも,供給電力が不足していれば,
大規模な停電が発生しうる

・停電範囲については,(少なくとも私の知識と情報では)
予想できない.

・復旧時間は,停電範囲の大きさに比例するが,
機器的には数時間の間で復旧できる.
しかし,供給電力不足が解消されなければ,
輪番停電を残しながらの復旧となり,
その区域ではさらに停電が数時間延びることになる.



上記の大規模停電を回避するためには,
やはり輪番停電をするしかないのです.
また電力会社の電力需要予測が大きく外れないことが
重要であると思います.
(停電地域を適切に設定することが大切だと思われます)



すみません,いただいた質問にまともに
回答できていませんが,少しでも
お役に立てば幸いです.

2011年3月17日木曜日

大規模停電の原因は

本日(3/17)の電力供給が需要に対して逼迫している
とのことで,東京電力管内では大規模停電の可能性が
あるという.
経済産業省大臣が声明を出したり,
あちらこちらで節電のお願いがされていたりする.
該当管内の方々にはぜひ節電を心がけて
いただきたいと思う.

ここで危惧されている停電は,
通常の停電とは少し違う.
その復旧に,時間がかかる大変な大規模なものに
なる可能性が高いのである.

通常に発生する停電の原因は,
落雷などを含む事故であることが多い.
たとえば電線に蛇が巻き付いて,
鉄塔と電線が短絡し(電気的に接続される),
地絡事故(大地と電線が短絡する事故)が発生したとする.
この場合,大地に向かって大きな電流が
流れるから電力会社は地絡が起こったと
検知でき,そのポイントを含む電線を,
両端に設置されている遮断器を用いて
一旦系統から切り離すのである.
(簡単に言うと,事故が発生した電気回路を
遮断器というスイッチを使って一時的に
切り離すのである)
そうなれば事故点に流れ込んでいた
電流は遮断され,切り離された系統は
健全性を保つことができる.

また切り離された側の電気回路側でも
健全性が回復されたら,
(たとえば蛇が電流で黒こげになって,
焼け落ちて,大地と電線が電気的に
再び切り離されたりする
(絶縁が回復するという))
再び電線の両端の遮断器を投入して
電気的に再接続する.
この間,およそ0.2~0.5秒程度である.
(もっと短いこともあるし,
もっと長くなることもあるが,
1秒以上は普通かからない)

切り離されている間は,最悪停電する.
これが良く発生する停電である.
しかし,一般的には電力は2回線以上で
送電されていることが多いから,
事故が発生した1回線が切り離されたとしても,
もう一方の回線で電力は継続して
供給されるのである.
しかし,前述の事故電流が流れている時間は
付近の系統電圧が低下してしまう.
これが,一般にいわれる
瞬時電圧低下(瞬低)」である.
事故の検知時間が0.2秒程度とすれば,
電圧の低下は,まばたき程度の時間でしかなく,
私たちは,一瞬「あれ,暗くなった?」と思う
程度で済むのである.

こうした保護システムが整備されていないと,
停電が発生することになる.
こうした事故が原因となる停電は,世界的に見れば
あちらこちらで起こっており,
日本は逆にこうした停電の少なさは
世界のトップレベルにある.

さて,今回懸念されている停電は
これまで説明した事故が原因となる停電とは異なる.

電力の供給が需要に対して足りない場合,
無効電力と呼ばれる電力が不足していく.

この無効電力という概念がわかりづらいの
だけれど,コイルやコンデンサに関係した
電力で,電圧に大きく関係すると思ってください.

#私たちが普通電力とよんでいるものは,
無効電力ではなく有効電力と呼ばれるもので,
抵抗で消費されたり,モータなどの動力で消費される
実際に仕事をする電力です.
一方,無効電力は仕事をしません.

この無効電力は,コイルで消費されて
コンデンサで発生されるのだけれど,
供給が足りなくなると,
系統の電圧が下がっていくことになるという性質がある.

電力会社は,そのために系統のあちらこちらに
無効電力を発生するコンデンサを
用意しているのだけれど,それでも足りなくなると
電圧が低下し始めるのである.

そして電圧がある値以下になると,
あちらこちらで変電所などが運転を停止してしまう.
これでその区域が停電する.

そうなれば負荷が急激に減少するから
発電所は耐えられなくなって
(負荷急減による発電機の回転数上昇など)
発電所も系統から切り離されることになる(解列).

こうして電力の供給量はますます減少し,
電圧は非常に急速に低下し,
系統全体で停電に至ることになる.
これが電圧崩壊と呼ばれる現象である.
1980年代に東京が大停電したのは,
これが原因だったといわれる.
(私は大学2年で,東京に住んでいたけれど
信州に合気道部合宿中で,経験していないのだが)

また,電圧がそれほど急速に低下しなくても,
発電量が消費に足りなければ
系統の周波数は,どんどん低下していき,
結局のところ,やはり系統全体で
大規模な停電に至る.

一度,系統から切り離された発電所は,
あらためて接続されるのに1~数時間の
時間がかかるのだ.
その間,系統全体が停電になってしまうのである.
これは最悪の事態で,なんとかして
避けなければならないことが
理解してもらえるだろう.

そう,今回の計画停電は,被害を最小にするための
ギリギリの方策なのである.
しかし,それでも事態は危険な状況にあるらしい.
あとは節電を心がけるしかないのだ.
関東の無事を祈るばかりである.

しかし,これがこれから毎日続くとなると...
地震で停止している発電所が
ひとつでも早く復旧して欲しいものである.

#(補足)
電力不足には,
電力は貯めることができない」という性質
大きく関係している.
電力を使う時間に,消費量にあわせて
発電するのが,電力会社の仕事である.
朝や深夜に電力を貯めて,
足りないときに使えたらどんなに素晴らしいだろう.
しかし,そうした電力貯蔵装置の大きなものは,
一部の揚水発電書に現在は限られているのだ.

#「50Hzと60Hzの系統間で電力を
融通することができない」という性質も
大きく関係している...

2011年3月16日水曜日

過剰に反応せず,納得のいく判断をしよう

原子力関係の災害がおさまらない.
命をかけて対応している東京電力の社員の
皆様をはじめとして,関連している方々の
ご尽力には本当に感謝いたします.

私は,こういうときのマスコミの対応が
大嫌いで,それはJCOの臨界事故のときに
身近に感じて思ったことである.
(JCO事故のとき,私は隣接している
研究所に勤務していた)

今回も記者会見を見てもわかるけれど,
東京電力を悪者にして,
つるし上げることが目的となっている.
確かに東電の対応も悪いけれど,
もっと建設的な話が聞けるように
質問をすべきではないかと思う.

テレビを見ていても,
局によっては原発悪者論ありきで,
話を進めていて,
視聴者の恐怖心を煽るような報道を
しているところがある.
正確な情報を伝える必要はあるけれど,
恐怖心を煽ってどうするのだと思う.

たとえば,放射線量(線量当量)が平常の10倍になったと報道し,
その後,1シーベルト(Sv)被爆した場合の
人体に与える影響を説明すれば,
視聴者は当然恐怖を覚える.
しかし,平常時の10倍といったって,
1マイクロSvが10マイクロSvになっただけである.
長期間被爆して,人体に影響がある,といわれるのは
通常200ミリSvといわれているから,2万分の1程度の
値なのである.
しかし,一般の人にはそれがわかってもらえない.
だから,放射線量が平常時の10倍になって,それが福島原発の
影響だということは報道しなければならないけれど,
それが,まだまだ問題ないレベルだ,ということも
しっかりと伝えなければならないのではないだろうか.
報道は,パニックを起こさせたいのだろうか?

新聞も,社の方針なのだろう,
原発反対のお抱え学者・識者の意見を載せたりする.
反対意見も大切だけれど,
数のバランスも考えて欲しいと思う.
100人のうちの,ただひとりの
反対意見なのかもしれないのだ.
その反対意見がどれだけ
少数派なのかも報道すべきである.
もちろん反対意見も傾聴すべきではあるけれど,
その数の情報もちゃんと与えたうえで,
読者に判断を任せるべきであると思う.

JCOの時も,事故後の風評被害がひどかったけれど,
私は,それに対する責任はマスコミも少なからずあると思う.
被害を受けた農家の方々を救うようなふりをして,
一方でずいぶんひどい報道をしていた.

今回は,そのようなことがないように願っている.
もちろん,原発で起こっていることは,
速やかに,正確に,わかりやすく
報道して欲しいけれど,
意図的に(あるいは意図せず),
不安を煽るようなことだけはやめて欲しいと思う.

マスコミは自分たちの責任については,
追及せず,報道しない.
私たちはそれを理解したうえで,過剰に反応せず
自分たちで,納得のできる判断をしていく
努力をする必要がある.
それは難しいことだとはわかっているけれど.
(そして,その判断が正しいかどうかは事後的にしか
わからないのだけれど)


#とりあえず,節電に関する話を一昨日(3/14)書きました



2011年3月15日火曜日

電気学会全国大会開催中止

明日から大阪大学で開催が予定されていた
電気学会全国大会が中止となった.私も
現地実行委員会のひとりとして,
準備に携わってきたから,少し残念に思うけれど,
現在の状況を考えると,やっぱり仕方ないと思うし,
中止となって少しほっとしている.

ただ開催直前のギリギリの判断となってしまい,
いろいろとご迷惑をおかけしてしまった人がいるに違いない.
実行委員のひとりとして,大変申し訳なく思う.

私は過剰な自粛というのは,
避けるべきだと思っているけれど,
やっぱり参加される方々の情況を考えると,
大会の中止はやむを得ない.

こうやって,あちらこちらで,
イベントが取りやめになっていくのだろう.
外堀が埋まっていくように,活動が抑制されていく.
この状況はどうしようもない.

しかし,いつかは転回点がやってくるはずである.
その日を待って,今は力を蓄えることにしよう.

2011年3月14日月曜日

関西電力・中部電力管内での節電があまり効果的でないという理由

東北地方太平洋沖地震で被災された方々には
心よりお見舞い申し上げます.
私の親戚も,被災しており,
なんとかひとりでも多く助かり,
一日でも早く復旧することを心より
お祈りしております.

さて,地震の被害も大きいけれど,
ここでは,電気関係の話を.

そして,原発の話も気になるけれどが,
東京電力・東北電力の輪番停電と
節電の効果について,少し書いてみたい.

原子力は,東京電力においては,
その発電電力のおよそ4割ほどを占めている.
そのすべてがダウンしたとあっては,
当然電力不足の状況に陥る.
そして,現在がその危機にある.
残る火力,水力をフル稼働させても
日中の電力需要を満足できない.

となると,電力系統全体で停電になる
可能性があるので,
区域で分けて,計画的に停電を起こし,
電力需要の低減を図ることを行う.
そして,各区域で計画停電の時間帯をずらし,
順々に停電地域を変えていくのが,
輪番停電である.
(電力系統では,需要と消費が常に
バランスされていなければならない.
電力を貯めることは基本的には,できないのである)

数年前に,上海を訪れた際には,
慢性的な電力不足で,輪番停電が行われている,
という話を聞いたのだけれど,
まさか日本で,そしてそれが東京電力で
行われることになろうとは,全然思いもしなかった.
(東京電力は世界最大の電力会社のひとつだから)

電力需要を低減することは,
もちろんこうした状況への対策としては重要で,
東京電力,東北電力管内での節電の努力は,
大いに進められるべきである.

しかし,関西電力管内等で節電のチェーンメールが
回っているのだという.
これはおかしいのである.
もちろん,日常的に節電への努力は大切であるけれど,
それ以上に節電する必要は現在無いことを説明したい.

ご存じの通り,日本は世界的に見ても特異な国で,
東と西で周波数が異なっている.
これは,明治時代,電力設備を導入した際に,
欧州からの技術が中心であった東側では50Hz,
米国からの技術が中心であった西側では60Hzと
なってしまったためである.
日本ではその境は,東京電力(50Hz)と
中部電力・北陸電力(60Hz)となっている.

ここで電力の特徴のひとつとして,
異なる周波数の電力系統を直接接続することが
できない,ということがある.
だから,東京電力と,中部電力・北陸電力の系統は,
基本的に切り離されているのである.

一方,東京電力と東北電力は同じ50Hzなので,
つながって電力を融通することができるのである.
だから,福島や柏崎からの原発で発電した電力を
送ることができるのである.

では,東京電力と,中部電力・北陸電力の系統の間で
電力を融通する場合にはどうすればよいのか,
ということになるが,そのためには周波数変換器という
半導体でできた装置が必要になるのである.

この周波数変換器は,サイリスタという半導体素子を
用いた電力変換器で,60Hzの交流を
一度直流に変換し,それからまた50Hzの交流に
変換して,電力を融通するという働きをする.
(この交流/直流/交流電力変換を
Back-To-Back方式と呼ぶ)
これを用いれば,60Hzの系統(中部電力)から
50Hzの系統(東京電力)に電力を
送ることができるのである.
(逆ももちろん可能)

しかし,半導体素子というものには,
流せる電流に限界がある.
どこまでも大きな電流が流せるわけはなく,
ある値以上は流せないのである.
(流しすぎると素子が壊れてしまう)

周波数変換器が接続されている
系統の電圧は一定で変わらないから
(コンセントの電圧が100V一定なのと同じ)
変換できる電力には,電流の最大値によって
限界があることになる.
(電力は,電圧と電流の積に等しいので)
この限界値を(多少不正確だけれど)
変換器の容量と呼んで,
融通できる電力の最大値の目安となる.

さて,この周波数変換器は,
現在,佐久間,新信濃(1,2号),
東清水に設置されており,
それぞれ300 MVAの容量(30万 kWを最大送電可能)を
持っている.(ただし,東清水は100 MVA運転)
したがって,東清水が100 MW,その他の3基が
300 MW,トータルで1000 MW (100万kW)でしか
電力を融通できない,ということになる.

東京電力の夏の需要電力の最大値が,
5400万kW ~ 6000万kW程度だから,
100万kWなど本当にわずかな量であることが
わかるだろう.

一方,関西電力,中部電力は100万kWを融通することなど,
電力に十分余裕があるから問題ない.
逆にいくら余剰電力があっても,
その周波数変換器の容量の小ささがネックとなって,
東京電力に送ることができないのだ.

だから,関西電力,中部電力など60Hzの電力系統で
いくら節電しても,東京電力・東北電力のために
ならないのである.
むしろそうした過剰な反応によって,
60Hzの電力系統内の経済活動が影響を
受ける方がずっと問題である.

一方,もちろん,東京電力・東北電力管内での節電は
大いに意味があるので,努力する必要はある.

(北海道電力は,50Hzだけれども,
残念ながら本州とは直流で連系されている.
結局,交流から直流,直流から交流に変換する
半導体電力変換器が必要で,
最大容量の60万kWまでしか
電力を融通することができない.
したがって,北海道電力管内でも節電はあまり
意味がない)

結局,60Hzの電力系統内での過剰な節電は
不要なのである.
むしろ支援や復興のために,活動をどんどん
すべきなのである.
私は,被災された方々への想いは
大切だと思うのだけれど,
その一方で,過剰な反応・過剰な自粛は避けるべきだとも
思うのである.
そして,それを避けるためには正しい認識が
必要なのだと思うのである.


#関西電力のHPにも,周波数変換器の容量の
限界について,言及された記述があった.
特にチェーンメールには注意である.
http://www.kepco.co.jp/

2011年3月11日金曜日

J.S. Bach, 無伴奏バイオリンパルティータ第2番,シャコンヌ: 神の臨在を感じる

昨晩,帰宅の車の中で,バッハを聴く.

J.S. バッハ,
無伴奏バイオリンパルティータ1,2,3番
ギドン・クレーメル

このCDは,深夜に運転する際に
よくプレイヤーにかける録音である.

昨晩,パルティータ第2番シャコンヌを聴いていて,
あらためてこの曲の素晴らしさに身震いがした.
クレーメルのビブラートの少ない,ざらついたような
演奏を聴いていて,それでも突き抜けたような
美しさを感じる.
この曲は名曲と誉れ高いけれど,何度耳にしても
全く俗にまみれない,純度の高い音楽である.

バッハがもし生涯にこのシャコンヌしか
作曲しなかったとしても,音楽史にその名を
残したに違いない.
無伴奏バイオリン曲で,至高の一曲といっても
過言ではない作品である.
本当に純粋な,氷のように
冴えきった曲なのだけれども,
そこには何かしらの人生の意味を感じてしまう.
バッハはこの曲を作ったとき,
なにを考えていたのだろうか,と思う.

このシャコンヌは,やはり大変人気があって,
クレーメルはどこへ行ってもこの曲を
演奏してくれと頼まれるので,
いささか困ると,どこかのインタビューで答えていた.
(グスタフ・レオンハルトが,どこへ行っても
バッハのゴルトベルク変奏曲を演奏してくれと
いわれて困ると話していたエピソードを思いださせる)

映画音楽でも,何度も取り上げられているし,
「無伴奏 シャコンヌ」という映画も作られたくらいである.
(因みに劇中の演奏は,クレーメル.私は残念ながら未見)
ブゾーニもピアノ版に編曲しているし,
ストコフスキーはオーケストラ版に編曲している.
(小澤&サイトウキネンオーケストラの録音は
斎藤秀雄編曲版?)
しかし,やっぱりこの透徹した美しさは,
バイオリンのソロ曲に敵わないと私は思っている.

昨晩聴いていた時も脳天に抜けるように
ゾクゾクする感動があった.
そして,突然ある考えがひらめいた.
それは,これからの生活に大きな影響を与えるような.
全く違うところから,啓示が与えられたのである.
あぁ,音楽って本当に素晴らしい...

この曲には多くの録音があるが,
私が愛聴しているのは,このクレーメルの旧い録音と,
無伴奏ソナタ3曲・パルティータ3曲をあらためて
録音した新録音の2つである.
新録音のクレーメルの演奏も非常に素晴らしい.
旧録音の即物的さは陰をひそめ,
暖かい演奏が聴ける.
そして,ところどころに訪れる
休止の美しさに言葉もない.
ただため息をつくだけである.

バッハには,他にも神がかり的な曲が
いくつもある.
彼は一時期,音楽の神の
極めて近くまで辿り着いていたのは
間違いないのではないかと思う.

神の臨在を実感させてくれるのが
こうした名曲であり,
その名演奏に触れることにより,
聴く人に啓示が訪れる,
ということもあるのかもしれない.

#ちなみに,無伴奏バイオリン
ソナタ,パルティータの6曲の
すべてが名曲揃いである.
第3番のガボットも有名曲.
ぜひ聴いてみてください.

2011年3月10日木曜日

私のブラウザ遍歴: MosaicからChromeまで

私はブラウザはChromeを使っているのだけれど,
Chrome10にVersion Upして,
ますます速度が上がったような気がする.
もちろんPCのパフォーマンスが上がったわけではないから,
処理を高速化したということなのだろう.
そうすると,いままでのブラウザのコーディングが
なんと複雑で冗長な処理を行っていたか,ということにある.
Googleは,やはりこういうところがすごいのだなぁと感じる.

思えば,私が大学生の頃(それも博士課程の学生だった頃),
JUNETで,電子メールやニュースというものに
触れてはいたけれど,私はコンピュータからはまだ
距離を置いていたので,それほどのめりこんだりはしなかった.
(とはいえ,研究ではUNIXシステムで,東工大の
スパコンを使わせてもらっていたのだけれど)

それが,後輩からウェブというものを教えてもらい,
Mosaicというブラウザで,ウェブページを巡ることを覚えた.
(そのころは,ネットサーフィンなどといっていたけれど)
このハイパーリンクというアイデアが本当に素晴らしいと
思ったことを覚えている.
そしてMosaicというブラウザという美しさ.
なにせ,それまでは文字ばかりのデータだったのが,
リンクをクリックすれば画像までも見れたのである.
(決してエロではないよ.そのころまだ少なかったし)
私にとって一大革命であった.
それからインターネットがずいぶん身近になった.

その後,MosaicはNetscape Navigatorとなって,
ワークステーションからブラウジングするのが普通だった.
そして私の使用するPCもアップルとなり,
Mac OSでNetscape.
就職してからは,アップル帝国の核融合分野にあって,
上司につられてWindowsの反旗を翻し,
それからしばらくInternet Explorerを使用していた.

ただIEは見た目がつまらなく,使い勝手も
なかなかよくなかったので,そのうち
Lunascapeへ.
もっと軽いものをもとめて
Sleipnirに移行したけれど,
Chromeが出てからはずっと変わらずに使っている.
Chromeの良いところは,拡張機能とスピード,
そして安定性の良さである.
いいなぁ.
こんなブラウザを待っていたのだ.

Google,Google カレンダー,Gmailなどを
使用している私にとっては,
こうしたアプリにTuneされたブラウザは
本当にうれしい.
ブラウザが素晴らしくなって初めて,
それまでストレスを感じていたことに
気づくものである.
ますます新しい世界に突入していく感じがする.

Googleには,まだまだ素晴らしいブラウザを
作っていって欲しいものである.
あぁ,Mosaicってどんな感じだったのかな.
もうその感覚を忘れてしまった...

#そういえば,Firefoxって使ったことがない

2011年3月9日水曜日

仏典をよむ,末木文美士,新潮社: 知的興奮にゾクゾクする

なにか世の中は仏教ブームであるような気がする.
なかでも浄土宗,浄土真宗は,
法然八百回忌,親鸞七百五十回忌ということもあって,
盛り上がっているような気がする.

因みに,うちは,お墓は浄土真宗だけれども,
やっぱり神社にも参るし,
クリスマスも楽しむ.
まぁ,典型的な家庭であり,
私は特定の宗教を持たないというべきだろう.

ただ,最近の仏教の盛り上がりには,
なにかしらの理由があると思っている.
そして宗教が流行るときというのは,
あんまり世の中が良い状態に無いことが多い.
やっぱり現在はたいへんな時代なのだろう.

さて,そういう理由で,というわけではないが,
最近読んだ仏教を扱った3冊をここに紹介.
(私は昔から,あちらこちらの宗教の本には
手を出している.
まぁ,信心は起こらないのが申し訳ないのだが)

1.仏典をよむ ~死からはじまる仏教史~,
末木文美士,新潮社

これは久しぶりにゾクゾクする知的興奮を
味わえた傑作.
雑誌「考える人」に連載時にも
毎回楽しみにしていたのだけれど,
こうして系統立てて読むと,
さらに著者の考えがわかって感動する.

少しマイナーな仏典(といっても有名な仏典も
多いけれど)を紹介するのだけれど,
その仏典の内容はむしろ骨子の紹介で,
その仏典が成立した時代背景の説明に
注力している.
法然,親鸞,道元,日蓮などが
なぜあのような教理を主張して,
著作を残してきたか.
彼らは当時,異端児・反逆者だったのである.
そのあたりが,著者のもくろみ通りに
ダイナミックに解説されている.

また,インド,中国を経て日本に仏教が伝わり,
日本に土着化していくうえでの変遷もよくわかった.
最終章にハビアン「妙貞問答」を持ってきた構成も秀逸.
日本でなぜキリスト教が根付かなかったのか,
そこらへんを考えるヒントを与えている.

宗教に関する本で,ここまで読むのが
楽しかったとは,本当に意外である.
仏教の入門本として,自信をもって
オススメできる一冊.
著者のアプローチ,距離感にも非常に好感をもった.
別の著書もぜひ読んでみたいと思う.

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2.ブッダ物語
中村 元,田辺和子,岩波ジュニア新書

ブッダという人の伝記は,
単に歴史学的な話では面白くないし,
一方で伝説ばかりだと抹香臭くて拒否反応を示す.
そんな中で,この本はどちらのバランスも
兼ね備えた良書だと思う.
ジュニア向けということでさらっと読めるし,
変な味付けもされていない.
かといって,著者は碩学として著名であるので
決して薄い内容ではなかった.
仏教の創始者としてのブッダ.
その生き方を考えさせられる.

この本によれば,彼はどんなときにも穏やかで,
「よくきたね」「さあこちらに来なさい」と
明るい声で呼びかける人好きのする人柄だったという.
(あとがき近くに書いてある)
長い修行の先にそのような到達点が
あるのだとすると,なにかほっとする.

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3.仏教とは何か ~ブッダ誕生から現代宗教まで~
山折哲雄,中公新書

「仏典をよむ」と違って,記述に著者の主観,
想像が多く,共感できないとちょっと拒否反応を示してしまう.
(私は少なからずそうだった)

しかし,日本に土着化していく過程や,
葬式仏教への考察などは大変興味深かった.
日本の土着化のうえで,それまでにあった民俗信仰
(祖霊信仰,山岳信仰など)が,仏教に影響を与え,
仏教が変わってきたという話は,大変興味深かった.
またお墓がなぜ今の形に落ち着いたのか.
(そもそも仏教ではお墓は本来不要)
そのあたりの考察が面白い.
私にとっては,新しい発見が多くて,最後まで飽きずに
読むことができた.
本書には最初から最後まで,
著者の仏教への危機感が感じられる.
宗教が果たすべき役割について悩んでいる雰囲気が
伝わってくる.
1993年の著書なので,このあとにオウム真理教などの
事件があり,その後,宗教界が苦難の時代を
迎えることになったことを思うと,
著者の危惧がどう変わっていったのか,
興味がある.

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この3冊から思ったのは,原始仏教と
鎌倉仏教に代表される日本仏教,
そして私たちの生活の中の民俗仏教.
実はずいぶんと異なるものであるということ.

そもそもお釈迦様は,霊魂などには言及しないし,
浄土信仰もない.
本覚思想も如来蔵もない.
修行無しに悟りはない.
念仏や題目を唱えることによって
救われるなんて,そもそもとんでもない発想だ.
小乗から大乗へ,そして日本の仏教へと
独自の発展を遂げているのである.
そして,それは,その時代とそれを受け入れる民衆の要求が
そうさせてきたのである.

とすると,原初の仏教とはどうであったのか.
俄然興味が湧いてくる.
今度はその辺をもう一度読んでみることとしよう.

2011年3月8日火曜日

花粉症はストレス病

昨日は花粉症の症状が突然ひどくなり,
一日中,頭痛に悩まされた.
目も,しばしばして,本当につらい.
近年希にみる症状のひどさである.
今年は花粉の飛散量が例年の10倍という話も
本当なのかもしれない.

花粉症はアレルギーだから,
なにかで,ぱっと治るということもないのだろう.
やっぱり生活習慣の改善や,
体質の改善が必要なのだろうけど,
それがなかなかできない.

一番できないのが,ダイエット.
運動もしたいけれど,時間がなかなかとれない.
甘いものを控えるなんて,とてもとても.
ストレスがたまると,ついつい甘いものに
手を伸ばしてしまう.
そんなダメダメな生活が,このアレルギー症状に
出ているのだ.
花粉症というのはストレス病といえるのでは
ないだろうか,と思う.

しかし,日本に一体どれだけの花粉症の人が
いるのだろうか.
先日,花粉症の人の割合は30%とともいわれる,などと
報道されているのを見たけれど,
一般に都会といわれる地域では,
30%は優に越えているのではないだろうか.
もはや国民病なのだ.


今日は目薬も買ってしまった.
なんとかならないかな...

#今日も愚痴で終わってしまった

2011年3月6日日曜日

家電店で時間をつぶすことは...

昨日,梅田で会議があって,
その帰りに,ヨドバシカメラにちょっとだけ
寄ってみた.

私のようなものだと,
ヨドバシカメラに一日中いても飽きないのだけれど,
昨日は,ほんの20分程度.
非常に不満足の滞在時間だった.

大型電器店に長時間いるというのは
一般の人からみると,どうもヘンらしい.
以前,研究室の秘書さんが,私に話すに,

「~君って,ヨドバシに何時間もいたんですって.
何をしているの,と聞いたら,
モノを見て,カタログを見ている,というんですよ.
並んでいる家電を見てニヤニヤしているって,
気持ち悪くないですか?」

(詳細は忘れましたが,だいたい
こんな内容でした)

という.
いやいや,私もそうなんですが...

家電なんて,本当に最新技術が
コスト低減と両立して提供されている,
素晴らしい製品なのである.
カタログから読み取れる性能に感動したり,
それでいて,その行間を読むように,
裏事情を想像したりする.
それが楽しいのである.

ここまで書いてみて,
やっぱり一般の趣味ではないのかもしれないと思う.
しかし私なんて,たまに家電店に行くくらいのもの.
本当のマニアは桁違いにすごいものである.

あぁ,いいなぁ.
そんな人が増えていったら,
日本の電機業界も安心なのだろうけれど.

2011年3月4日金曜日

ぼくのゲルマニウムラジオ

息子が学校で,ゲルマニウムラジオを
作っているという.
どうも理科の空いた時間に,
先生のご指導のもと,作成しているらしいのだが,
それを聞いて私は大変嬉しくなった.

いまの電気系の学生の中でも
ゲルマニウムラジオを作ったことがある人が
どれだけいるのだろう.
たぶん,そんなに多くはない,
いや少ないはずである.
現代の受験勉強においては
そんなに悠長なことをやっている時間はないだろうから.

私は,小学校6年のときだったろうか,
いやすでに中学1年になっていただろうか,
ゲルマニウムラジオを作ったことがある.

たぶん学研の「科学」という雑誌の付録だったと思う.
ゲルマニウムダイオードと小さなセラミックコンデンサ.
そして,鉄心の位置をスライドさせることによって
インダクタンスを変化させることができるチョークコイル.
そう,周波数のチューンは鉄心の位置で決めるのである.

それらを銅線でつないで,クリスタル・イヤホンで聴く.
アンテナを部屋の中に張り回し,
そっとコイルの鉄心を動かして選局をする.
初めて音が聞こえてきたときの感動は今も忘れられない.
だって,電池もないのにイヤホンから音が漏れるほど
大きな音量でラジオが聞こえてきたのだから.

なにもない空中に電波が飛び交っていて,
そこにはエネルギーが満ちているということを
実感した瞬間だった.

私は新潟に住んでいたので,新潟の地方局の他,
関西の毎日放送などのラジオが聞こえた.
そして,なんといっても大音量なのがモスクワ放送.
当時はソ連の国営(今もかな?)で,すごい出力で
海外向けに放送をしていたのだろう.

とにかく感動した.
適当に作っても鳴るのだし,
トランジスタも,真空管も使っていない,
本当に単純なラジオなのにである.

今も機会があれば作りたいと思っている.

「ぼくらの鉱石ラジオ」(筑摩書房)

という本も買った.
ゲルマニウムダイオードでなくてもいい.
非線形特性をもつ鉱石であれば,
そこにピンを刺すだけで検波器になるのである.
あぁ,自分だけの鉱石ラジオをいつか自作したい.
そう思っているのである.

息子のゲルマニウムラジオの大きな障害は,
クリスタルイヤホンであるらしい.
現在,入手が困難とのこと.
ネットで買うか,秋葉原か日本橋で買うか...

ぜひ息子にもあの感動を味あわせてあげたい.
なんとかクリスタルイヤホンを入手したい.
そう心に決意したのであった.

2011年3月3日木曜日

Supermanの神話: Metropolis Symphony, Daugherty

グラミー賞には,実はクラシカル音楽部門(すなわち
クラシック音楽のこと)もちゃんとあって,
先日は,内田光子さんがBest Instrumental Soloist(s)
Performance (with Orchestra)賞を受賞したことについて
文章を書いた

他にもクラシカル音楽部門には賞があって,
今年のBest Orchestral Performance,
Best Engineered Album,
Best Classical Contemporary Compositionの3部門を
制したのが,Daughertyの
Metropolis Symphony; Deus Ex Machina (Naxos)
の録音であった.

これは,Giancarlo Guerrero指揮の
ナシュビル交響楽団の録音らしいのだけれど,
Metropolis Symphonyの録音なら
私も,David Zinman,バルチモア交響楽団のCDを
持っている.
1996年とCDにあるから,Metropolis Symphonyの
最初の録音だったのだろうと思う.
(1994年がこのコンビによる世界初演)

このMetropolis Symphonyというのが,
1988年にSuperman 50周年記念にinspireされて
作曲が開始されたらしい.
そう作曲家が,CDのライナーノーツに書いている.
5つの楽章構成で,各楽章には,
Lex,
Klypton,
Mxyzptlk,
Oh, Lois!
Red Cape Tango
とスーパーマン好きならば,おっと思う副題がついている.

私が好きなのは都会の喧噪を感じさせる
第1楽章 Lexなのだが,
それぞれ現代音楽ではあるけれど,
非常に聴きやすいものになっている.
アメリカン・ポップ・カルチャーを表現したと
作曲家が書いているように,まさに
音楽的にはいろんな要素が含まれていて,
それでいてキレがあるという感じ.
Supermanのテイストが確かに表われている.
作曲者の言によれば,この交響曲は
Supermanの神話なのだ.

私は,このCDを発売された当初購入した.
(海外輸入盤.日本版は出たのかな...)
それは,赤と青の派手派手しいジャケット
(スーパーマンのカラー(笑))に
惹かれて購入したのである.

しかし,長い間聴いていなかった.
昨日,ラジオでこの曲の新録音が
グラミー賞を受賞したと聞いたので
今日の通勤時に聴いてきた.
う~ん,アメリカを味わいたい人向けの音楽かな.
しかし,退屈はしない.

ということで,今日はとりとめのない話題でした.

2011年3月2日水曜日

鼻水に悩まされる

風邪のせいなのか,花粉症のせいなのか,
今日から鼻水に悩まされるようになってきた.

今日の大阪は曇りのち雨.
気温が寒いからなのだろうか,
雨が降る前に飛んだ花粉のせいなのか,
鼻の奥がツンとして,鼻水と涙がでる.
私が花粉症であったことを思い出させてくれる.
あぁ,今年も花粉症は治っていないようだ.

体質を変えることで花粉症の症状が
激減したなどという話を聞くと,
私も希望を捨ててはいけないと思う.
身体を鍛えたり,ダイエットを試みたり,
(どちらも成功していないが)
いろいろ頑張ってはいるのだけれど,
花粉症も変わらない.
今年も失望とともに,春の季節に突入するようだ.

アレルギー症状は,
体重,食べ物,ストレス,睡眠などを
コントロールすることによって
改善することができることは,
過去の多くの報告ではっきりしている.
私にもできないわけがないのだ(と信じてみる).

今年も,私の身体を使った人体実験で
その効果を確かめる.
たとえ例年に比べ,花粉の飛散量が10倍多くとも,
この試練に打ち勝たねばなるまい.
それに成功しなければ,
これまでの修行の甲斐もないだろう.

2011年3月1日火曜日

風邪の徴候

どうも風邪を引いたらしい.
ずいぶん気をつけていたのだが,
とうとうかかってしまった.
しかし,今のところそれほどひどくはない.
のどの腫れ,頭痛,肩こり,胃痛といったところか.
発熱が無いのが,不幸中の幸いである.

そういえば,この2年ほど,
風邪で寝込んで仕事を休む,というほど
ひどい風邪を引いたことがない.
若いうちは,身体の反応も大きいので
風邪の症状もひどくなるけれど,
歳をとると,症状は軽くなると聞いたことがある.
まさに私のことではないだろうかと思う(笑).
しかし,風邪を引かない人に限って,
急に死んでしまうという話もある.
(野口整体などではそう言われている)
気をつけねば...

風邪の症状が出始めて,
あぁ,やっぱりそうだったかと思い当たるふしがある.
考えてみれば,風邪の前は,下記の徴候が,
私に現れる.
これらは私だけなのかな.

1.食欲が異常に湧いてくる
なぜか腹が減ったように感じる.
これはたぶん体内のセンサが風邪によって,
誤動作するためなのだろうけれど,
腹が減るのである.
その結果,ドカ食いをする.
日曜日,カツを食べ過ぎた...

2.呼吸法がうまくできない
呼吸法という稽古がある.
深く呼吸をして,心身をリフレッシュするものである.
通常は,身体の足先から頭まで,
吸気が行き渡るような感覚が得られるのだけれど,
先週の土日に試みても,
吸気がどこかで引っかかっているような
そんな感覚があった.
気が滞っているような感じ.
やはり身体がおかしくなっていた証拠なのだろう.

3.姿勢が悪くなる
私は右肩が左肩に比べずいぶんと下に落ちていて,
非対称な体つきをしているのだけれど,
風邪を引くとさらに身体が歪むらしい.
背中の筋肉のハリとともに,
自分の上体が傾いているような感覚になる.
これも土日に感じられたものである.
呼吸法がうまくいかない原因も,
このあたりにあるのかもしれない.
一般的に,内臓の調子が悪いと
そちらの方の肩が下がるといわれている.
どこかでやっぱり調子が悪くなっているのだろう.

4.歌を歌いたくなる
これは自分でもおかしいと思うのだけれど,
風邪を引く前になるとなぜか歌が歌いたくなる.
自分で原因を考えてみるに,
のどの調子が悪くなりつつある,
熱が出そなので気分がハイになっている,
などが挙げられる.
とにかく,歌が歌いたくなったら要注意なのである(笑)


しかし,これらの徴候が出たからといって,
風邪をひくのを防げるわけではないのが
つらいところである(すでにひいているのだから!).
しかし,悪化するのを防ぐことはできるだろう.

いや,まずは日頃の養生が足りないということか.
今回もひいてしまったものは仕方がない.
早く治すように,おとなしくしていよう.