2011年6月30日木曜日

小中学生のうちから科学技術のリテラシーを

今回の原子力や放射能の問題,
そして再生可能エネルギーに関する話題などを
見ていると,科学技術に対するリテラシーが
低い人が多いのではないかと気になっている.

それは,原子力推進,反原発にかかわらず,
感情的に話を進めているのだけれど,
データの見方や論理的な考え方のスキルが
足りない人が多いような気がする.

それはあくまでもリテラシーというか,
考え方のイロハであって,
別に原子力や電力の難しい知識の有無は関係ない.
まずは,事実にそって考えるという基本的な技術が
足りないような気がする.

どうしてこんなことになってしまったのだろうか.

難しい単位(SvとかmSvとか)が出てきたらもう考えるのを止める,
あるいは少し科学的な話題になったら,
もう頭が働かなくなる,そんな人が多いようであったら
(ネット上を見ているとそんな人が少なからずいる)
それでは今のような状況においては,
どのように行動・判断したらよいのか,
わからないだろう.

どこかでそうした人たちはスポイルされてきたのである.

理科の知識などは中学校までで十分だと思う.
しかし,そこにまでも至っていない.
小中学校において,「理科嫌い」が形成され,
一生,理科とは縁なく過ごしたいと思う人が
作られてしまっているのではないだろうか.

最近の子供たちの「理科離れ」の原因は
そうした「理科嫌い」を増やしてしまう学校に
あるのではないかと思ってしまうのである.

まず,小学校の教員になる人に,どれだけ
理科が好きな人がいるのだろうか.
基本的に文系出身で,理科は苦手だった人が
多いのではないだろうか.
そうした人たちが理科を生徒に熱心に教えてくれて
いるのだろうか.
生徒というのは,先生のやる気を本当に良く
察するものだということは,この私も実感している.
理科が嫌いな先生が教える理科を,
生徒たちは一体好きになってくれるのだろうか.

次に,そうした教員の人たちの思想に
バイアスがかかっているのではないかと,
危惧している.
すなわち,科学技術への不信を必要以上に
強調して教えているのではないかと思うのである.
私の周りの子供たちに聞いても,科学は人を幸福にするとは
思っていないらしい.

確かに,科学技術には公害や今回の事故のように
負の面が存在し,時にゆきすぎた科学技術は人に
災いをもたらす.

しかし,それ以上に私たちは莫大な恩恵を科学技術から
受けていることを忘れている.
この20~30年間においても,どれだけ科学技術が
進展したおかげで,私たちが安全,安心に暮らすことが
できるようになったか,考えてみればすぐにわかる.
どれだけ多くの病気が治るようになったか.
どれだけ多くの情報に触れることができるようになったか.
そうした自分たちに都合の良い便利さは忘れて,
負の面ばかり強調する.

もちろん,負の面は限りなくなくすよう,
努力しつづけなければならない.
だが,科学技術を悪者にして,その解決手段を
敬遠するのであっては,これまでの人類の発展は
どういうことになるのか.

私が若い頃は,やはり科学技術への不信が
社会にずいぶん広がっていて,
科学技術を悪者にすることが,「知識人」の条件である
ような風潮があった.
社会の実情を知らずに教員になった人たちには,
そうした理想主義者が少なからずいるのではないだろうか.

最後に,教員の仕事が忙しくて手間のかかる理科教育に
まわす時間が少なくなっていることもあるのかもしれない.
子供たちがもっとも興味を示すのはやはり実験,実演だろう.
だが,それには準備が少なからず必要で,
現在のような学校の雑務の多さを考えると,
その準備に時間を割くことが難しいのだろうと想像する.
なんたって,大学の教員でさえ,雑務につぶされているのだから.

しかし,なんとか小中学校の先生には
ぜひとも頑張っていただいて,
理科好きな生徒を増やしていただきたいと思う.
また,そんなに理科好きでなくとも,
データの見方,科学的原理にそった考え方,
そうしたリテラシーをぜひ生徒たちに
身につけさせていただきたいと思う.

私は,まだ夢を見続けていて,
日本は今後も科学技術が核となって,
世界で活躍する国であって欲しいと思っている.
そうした国民の科学技術のリテラシーは
高いものでなければならないと思う.
なんとか,なんとか小中学校で頑張って欲しい.
残念ながら大学生では遅すぎるのである.

3 件のコメント:

  1. 全く同感です。地球温暖化に始まり、最近では原発事故や節電の気風で、科学技術は悪者であるような雰囲気があるのは実に残念。
    本当、子供たちに理科の面白さを伝えたいと思います。
    おりしも子供が小学生。親に何ができるだろう? どうやら娘たちは、生き物には興味があるようです。ちょっとした実験とかをやってみたり、日常の中での科学をちょっと楽しんでみたり、いろいろ模索したいと思います。上の記事も、(会社なのが残念!)さんこうになりました。ありがとうございます。

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  2. asanoさん,コメントどうも有難うございました.

    科学技術を悪者にしようとするバイアスがかかっているのが,許せません.もちろん,負の面もありますが,それはそれで解決していけばよいわけで...そうした雰囲気があれば,やはり理科系に進もうとする学生の数は減ってしまうのではないかと思うのです.

    お子様方は生物系ですか?いいですね.昆虫採集とかそういったイベントもたぶん別の学会等で企画されているのでしょう.理系に興味がある子供万歳!

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  3. はじめまして。最近の技術論なき反原発の風潮を見ていて、技術立国としての日本を素人ながら心配しております。

    原発事故が起きてから、電力会社の陰謀論が避けばれています。真夏の平均ピーク需要に対して18%の設備容量が余るから、原発無しでも電力は足りるなどと言われて、ここから電力業界はウソツキ呼ばわりされて、反原発、発送電分離などと叫ばれています。Amazonでも発送電分離関連の書籍が売れていますので、国民が望んでいるのかもしれません。

    しかし、原発廃止論を言い出したのは小出裕章さんという方でしたが、たったあれだけの資料から何が分かるのかと思います。私も電力は素人ですが、力率割引というのをきいたことがあります。

    ビデオデッキや冷蔵庫で力率が下がって、送電網の力率は100%にはならないのではないかと思った事があります。送電線の容量も全電力会社で皮相電力の95%程度と書かれていました。発電所や変電所で力率を改善して送電しても、需要家で力率が悪いと消費電力(kW)よりも設備容量は大きくなるのではないか、と思ってしまいます。発電所の設備容量は事実上、皮相電力という話を聞いたこともありますので、原発を無くすと無効電力を賄えないのではと素人ながら感じます。

    最近の電力政策には技術的な話が全くでてこないので、あれこれ疑心暗鬼になってしまいます…。技術国家なのだから、お金や政治や陰謀論ばかりで電力政策を語るのではなく、技術的な論点も含めるべきではないかと思います…。

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