2011年8月9日火曜日

音のない花火

久しぶりに花火を見た.
一週間ぶりにジョギングにでかけた
昨日の夜のことである.

研究室を出てキャンパス内を走り始めると,
「ゴロゴロ」とカミナリのような音が聞こえた.

「これは走っている最中に雨に降られるかも」

と覚悟して
(とはいえ,40分間も走れば雨に降られたように
汗でビッショリとなるので変わらないのだけど)
走っていたのだけれど,空は全然雨が降りそうにない.

不思議だとは思いながら,夕方の風に吹かれながら
気持ちよくキャンパスを出て歩道を
走っていたのだけれど,いつもより車の数が多く,
それも動きが鈍いような気がしていた.
その上,パトカーも出回っている.

なにかおかしいと思っていると,
「ドンドン」と連続した花火のような音がする.
モノレールの下から西の方向を見ると
こんもりとした黒い林の上の方に,
すすきの尾花の先のような花火の先端が見えた.
やはり,花火だったのだ.

そのまま阪大病院のモノレールの方へ
走っていくと,歩道に人が集まって,
みんなで茨木方面の空を眺めている.
イスを並べて見ている人もいた.

携帯電話を花火に向けて写真を撮っている人も多く,
その前を,走り抜けていくのは,なんだか気が引けた.

子供たちも花火にはしゃいでいる.
ただ花火から見ている場所までは距離があるらしく,
花火が開いてから音が聞こえるまでには
少し時間があった.
その音も少し丸くなっているようで,
どうも迫力に不足している気がした.
花火はやっぱり音なのだと思う.

私は,幼い頃,新潟県の長岡市で過ごした.
長岡市といえば,花火大会で有名である.
毎年8月の2,3日に信濃川の河川敷では,
絶対に東京や大阪の都会では上がらないような
尺玉(10号玉)が普通に打ち上げられている.
長岡では,1尺玉,2尺玉は当たり前で,
三尺玉がハイライトとなる.
三尺玉(30号玉)ともなると,花火が開いたときの直径は
550 mにもなるという(打ち上げ高さは,600m!).
(新潟県の片貝町ではなんと四尺玉なのだ)

だから音が全然違う.
花火の音は腹で受け止めるものなのである.
「ドーン」となって,腹に「ズシーン」と響く.
身体全体で花火を感じる.

実はもう小学校4年生以来,長岡の花火は見たことが
ないのだけれど,その頃は三尺玉が上がる前には
町中にサイレンが鳴り響き,家々は電灯を消して
そのときを待つものだった.

そして打ち上げ.
空一杯に三尺玉は広がり,まさに満天の星の火花が
ストップモーションのようにゆっくりと消えていくのである.
家のガラス窓は三尺玉を恐れているように
ビリビリと震えて,急に静かになる.
祭りの終わりがやってくる.

だから東京で隅田川の花火大会を見ても,
綺麗だなとは思ったけれど,残念ながら
なにか物足りなかったという印象だけは覚えている.
あぁ,また身体中で花火を楽しみたいなぁ.

一方で,音のない花火という話も思い出す.
高橋葉介の「夢幻紳士 怪奇編」の一編では,
花火の幽霊を,幽霊たちが楽しむのである.
花火といっても,それは幽霊だから音がしない.

音がしない花火を,音もせず幽霊たちが眺める.
そんな不思議に場面があったと覚えているのだけれど,
なぜかしら昨日,それが思い出された.

しかし,その漫画の話も,鈴木清順監督の
なにかの映画で,同様に音のない花火のシーンに
発想を得て書かれたものだと,著者も書いていたのだけれど.

音で感じるべき花火が,静寂の中で開く.
そんな幻想的な場面を思い浮かべて
昨日は走っていた.

#昔は,「夢幻紳士 怪奇編」もいろいろと持っていたのだけれど,
大学卒業と同時に全部後輩たちに分けてあげてしまった.
数百冊の漫画本が,いまとなっては少し惜しい...


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