2015年3月3日火曜日

いかさまに身はくだくとも 心はゆたに

ずいぶんと昔のこと,東京の明治神宮を訪れた際におみくじを引いてみた.知っている人は知っているのだけれど,明治神宮のおみくじには吉凶がない.その代わりに歌が書いてある.「大御心」として,明治天皇と昭憲皇太后の詠まれた歌がおみくじには載せられているのだ.

どうも明治天皇は93,000首を,そして皇太后は27,000首を越える歌を生涯にわたって詠まれたとのことであるから,おみくじはその中からの抜粋数十首ということだろうけれど,それでもおみくじに書かれた歌は他の占いと同様なにかしらのヒントを与えてくれる(こんなことを書くと不敬なのかもしれないけれど).

私がその時に引いたおみくじに書かれていたのは皇太后の御歌(ちなみに天皇の詠まれた歌は御製というらしい).

いかさまに身はくだくともむらぎもの心はゆたにあるべかりけり

というものであった.ネットで調べてみると,どうもこの御歌は御年25歳,「弗蘭克林の十二徳をよませたまへる十二首」のなかの一首らしい.

十二徳というのは,
節制,清潔,勤労,沈黙,確志,誠実,温和,謙遜,順序,節倹,寧静,公義.

弗蘭克林というのは,フランクリン.どうもアメリカのベンジャミン・フランクリンのことらしい.
(彼は大政治家でもあったけれど,発明家でもあり,雷が電気であることを調べた科学者でもある)

彼の成功は十三徳を重んじたからといわれているが,それに皇太后は感銘を受け,「純潔」を除いた十二徳について歌を詠んだということらしい(皇太后さまには「純潔」の項目は少し似合わないと私も思う.興味のある人は調べてみて欲しい).

この御歌は,十二徳のうちの寧静に関するものである.どんなに忙しい状況に置かれても,余裕を失わず,心豊かにいなければならないことを教えてくれる.おみくじは,しばらくは私の財布の中に入れていたのだけれど(今思うとそれをお尻にしいて座っていたのだから全くの不敬にあたるなぁ),いつのまにかどこかに無くしてしまった.しかし,いまでもその御歌は忘れず,ことにふれて思い出すことがある.

#どうも以前にもこのブログでこの御歌について記事をかいていたらしい.でも少し御歌が違っている.どうも記憶が曖昧だ.

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