2016年4月2日土曜日

2016年のエイプリルフール

以前は毎年4月1日のエイプリルフールに,ホラ話をブログに書いていたのだけれど,2011年を最後にしばらく書いていなかった。どうも年度始まりは余裕がなく,気づいた時には4月1日が過ぎてしまっていたということがここ数年続いていたからである。

今年は奮起して久しぶりにホラを書いてみたのだけれど,我ながらイマイチな出来栄え。もっと大げさなホラが吹ければよかった。ということで,昨日の記事はウソです。すみません。もう少し本当のこととウソの境界が微妙なうまい話が書ければよかったです。来年はもっとウソ道に精進いたします。

これまでのエイプリルフールのウソ

2011年4月1日 パワエレの系統
2010年4月1日 電力の産地指定購入
2009年4月1日 人間の共振現象
2008年4月1日 夜中の台所にて,パワーエレクトロニクスの音色に耳を澄ます

2016年4月1日金曜日

地球を利用した無線電力伝送システム

新しい電力伝送のお話。

電気回路の素子といえば,「抵抗」,「キャパシタ」(コンデンサ),「インダクタ」(コイル)の3つしかない。基本的にこの3つの素子があれば,電気回路の現象は表現できることになる。そして電圧と電流が決まれば,(電圧✕電流)で電力が計算できる。電力というのは,ある時間の間に(一般には1秒間に)伝送できるエネルギーの量を示す指標である。これが大きければ大きいほど大きなエネルギーを使うことができることになる。

電力は現在,電線を用いて遠くの発電所から私たちの家まで伝送されているのはご存知の通りである。これを電気回路的に表すと,抵抗,キャパシタ,インダクタで表される電線に電圧をかけて,電流を流すことによって,電力を送っていることになる。

この電気回路で表現される電力の伝送方法としては,基本的に3つの素子の組み合わせになるので,(抵抗+キャパシタ)(抵抗+インダクタ)(キャパシタ+インダクタ)の組み合わせが考えられる。電力は一定時間に伝送できるエネルギーの大きさだから,エネルギーの変化が短時間で大きい方が大きな電力を送ることができることになる。

先ほどの3つの組み合わせでいくと,(抵抗+キャパシタ),(抵抗+インダクタ)は,組み合わせの中に「抵抗」が存在する。この抵抗がクセモノで,抵抗は電力を消費する(消費を表す)唯一の素子であり,その値はエネルギーの変化の大きさに大きな影響を与える。すなわち,(抵抗+キャパシタ)の組み合わせでは(抵抗✕キャパシタンス)で決まる時間(時定数)で,(抵抗+インダクタ)の組み合わせでは(インダクタ÷抵抗)で決まる時間で,電圧と電流が変化し,それによってエネルギーが送られる時間が決まることになる。そしてその時定数の値は一般的に長いものになってしまう。また流れる電流と抵抗の大きさによって,(抵抗✕電流✕電流)で決まる電力が損失として消費されてしまうという大きな欠点もある。

では,最後の組み合わせの(キャパシタ+インダクタ)はどうだろう。電圧と電流の変化は,キャパシタンス(静電容量)とインダクタンスによって決定されることになるが,抵抗を含む2つの組み合わせでは指数関数的に変化するのに対し,この組み合わせではただ振動するだけである。この振動は共振と呼ばれ,その周波数はキャパシタンスとインダクタンスの積の平方根に反比例した値となる。すなわちエネルギーはこの周波数で,キャパシタからインダクタに,そして次はインダクタからキャパシタに行ったり来たりする。これは電力の伝送に他ならず,その速度は非常に高く設定することができる。さらに,この組み合わせでは抵抗が含まれていないので電力の損失がない。キャパシタとインダクタの共振を利用して電力を伝送すれば,無損失で高速なエネルギーの伝送(送電)ができるという可能性を示している。

さて,電気回路を形成するためには,電線の存在が不可欠である。しかし,遠距離にある発電所から電力を送るためには,山の中に鉄塔を立て,太い電線を何本も敷設する,あるいは地中にケーブルを埋めるなどの工事が必要で,その建設費用は莫大となる。もしもこうした電線が不要となるのであれば,場所に制限されず電力を送ることが可能となり,その益は非常に大きい。比較的小電力でこれを実現できているのが,近年電気自動車の充電器への適用で精力的に研究開発が進められている無線電力伝送(Wireless Power Transfer)である。この技術においてもキャパシタとインダクタによる共振が利用されていて,効率の向上に大いに貢献している。

さて,新しい電力伝送の話である。
地球上のどこへでも,電線を用いずに電力を送れるとしたらどうだろう。
ここではまず共振を利用した無線電力伝送技術の利用が前提となる。低損失で電線の要らない無線電力伝送こそが世界で必要とされる究極の技術である。では,回路を形成するキャパシタとインダクタはどうするのか。これには地球そのものを利用するのである。地球もアースといわれるくらいだから導電体とみなすことができる。そして地表と地球を包む電離層は巨大なキャパシタを形成している。一方,インダクタは電流が流れる経路が地球を一周すれば十分な大きさをとることができる。この2つを利用して共振回路を形成すればよいのである。地球が共振回路の一種であることは以前から知られていて,この共振周波数はシューマン共振周波数として,約8ヘルツ,13ヘルツ,20ヘルツの電磁波が観測されることからも確かめられる。この低周波で電力を送ろうというのである。音叉の実験と同じで,8ヘルツの電気をこちらから発信すれば,どこかに8ヘルツの音叉に相当する受信アンテナを設置すればそこで電力を得ることができるようになるのである。8ヘルツ程度であれば,現在の技術の大容量半導体電力変換器で十分に発信・受電することができる。そう遠くない未来で実現できることを期待している。

ニコラ・テスラがどこかの本の余白に,無損失で地球上のどこでも電力を送れるシステムを思いついたとの書き込みをしていたとの話を聞いたことがある。そのアイデアがなんだったのかは未だ明らかになっていないのだけれど,案外この地球を利用した無線電力伝送だったのではないかと思っていたりもする。

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 電気学会全国大会に参加するために徳島に滞在した。今回は長めの滞在となったので,徳島で何回も食事を取ることができた。阿波どり,徳島ラーメン,鯛塩ラーメン,徳島餃子,かぼす酒,かぼす酎など,多くの地元の名物を食べることができたのけれど,最終日はさすがに普通の食事が取りたくなって,昼...