2016年11月21日月曜日

グレムリン2とトランプ氏

トランプ氏が次期大統領になることが決まって,それを映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」が予言していたなどという話が少し盛り上がっているけれど,それをいうなら私は「グレムリン2」をぜひみんなに紹介したい。そこにはトランプ氏ならぬ不動産王クランプ氏が登場し,グレムリンが暴れまくるビルは,トランプ・タワー,いやクランプ・センターなのである。

残念ながらそもそも「グレムリン2」を覚えている人はあまり多くないようだ(少なくとも私の周りには)。しかし,この映画は,パロディにつぐパロディ,それもいい大人がここまでやるかというくらい容赦のない筋金入りのパロディ作品なのである。

まず始まりからして,バックス・バニー(映画が始まる前に,映画館の禁止事項を説明するあのアニメキャラ)が出てきて観客をおちょくる。途中だって,(映画を観ているわれわれの!)映画フィルムは焼き切れ,グレムリンは映画館を占拠して,スクリーンをメチャクチャにしてしまう。ハルクホーガンが出てきて叫んで映画は元の話にもどるのだけれど,観ている私たちは一瞬何が怒ったのかわからなくなるのだ。最後のエンドロールでさえ,バックス・バニーがおちょくりにくる。一体この映画はなんだったのだろうと映画の最後には首をかしげてしまうのだ。

監督は,1作目についでジョー・ダンテ。彼は登場人物の口を借りて,言いたい放題言わせている。評論家もコケにしているし,自らの映画だって笑っている。好き放題作ったのだろう。

制作は1990年。驚くのは,すでにこのときトランプ氏は不動産王として名を馳せ,パロディにされるほど有名人だったということだ。映画の中では,クランプ氏はどこかぬけた憎めないヤツに描かれている。彼が大統領になるなんて,映画を観ていた誰も思わなかったに違いない。


言葉が世界を単純化することの副作用

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