2018年6月5日火曜日

ガルシアへの手紙

私が所属している専攻では修士1年の科目で「実験」が提供されている.全員が同じ課題をやるわけではなく,学生が各々研究室を選んで,その研究室が提供するテーマ・課題に取り組むことになっている.

私達の研究室のテーマは,太陽光発電に使用されるパワーコンディショナなのだけれど,私はそこで回路シミュレータによる各回路動作のシミュレーションとその解説を担当している.

課題は,ただ「3 kWの太陽電池を,最大電力点追従(MPPT)制御して,200Vの単相商用系統に連系すること」だけである.こちらからいくつかヒントは出すけれど,基本的にはその手法,回路定数の設計などは学生に任せている.彼らのアイデアによって,いろいろな制御系が設計されることになる.決まった正解はない.とにかく課題を達成すればよいのだ.

ガルシアへの手紙」という話がある.
戦争中,米国大統領マッキンレーは,キューバ反乱軍のリーダーのガルシアに連絡を取らなければならなくなった.しかし,ガルシアはどこにいるかわからず,郵便や電報などの通信手段が役に立たない.そこで,ローワンという信頼できる男が推薦され,大統領は彼に手紙を託した.ローワンはどこをどうやったのかわからないが,手紙をガルシアに届けて3週間後に帰ってきたという.(詳細は,ネットなどで調べてみてください)

ローワンは大統領に「ガルシアはどこにいるのでしょうか」などと聞かなかったということだ.それがよいのかどうかはいろいろ議論があるところだけれど,やはり黙って目的を完遂する男はカッコいいと思う.

今回の実験の課題も同じである.学生にはつべこべ言わず自力で回路を動かし,目的を達成してほしい.そんな希望をもっている(実際には,微に入り細に入り回路の動作原理を解説しております).

0 件のコメント:

コメントを投稿

言葉が世界を単純化することの副作用

 人間がこれだけの文明を持つに至った理由のひとつは「言葉」を用いることであることは間違いないと思う。「言葉」があれば正確なコミュニケーションができるし、それを表す文字があれば知識を記録として残すことも可能である。また言葉を使えば現実世界には存在しない抽象的な概念(たとえば「民主主...