大阪大学工学教育シンポジウムに参加してきた。
そこで何度か話題になったのが
幅広い知識の上に立って工学研究を進める重要性である。
もちろん,専門性が欠けていては,
それは研究者・技術者ではなくなってしまうので,
深い専門知識・技術は不可欠である。
深い専門知識・技術をもつ人間を「I型」人間と呼ぶ。
それに対し,深い専門知識に加え幅広い知識をもつ「T型」人間の必要性が
創造性の開発という観点強く言われるようになってきた。
さらに最近では,異分野の深い専門知識をもつ「π型」人間が注目されているとのお話が, 毎日新聞記者の元村さんよりあった。
創造性が求められる今の時代,自分の専門分野だけではだめなのである。
研究者というのは,どうしてもI型になりやすく,タコツボにはまりやすい。
その結果,自分の専門分野については興味もないし,議論もできなくなってしまう。
日本人の博士課程の学生は,
他国の学生に比べてこの点が非常に見劣りする,といわれている。
融通が利かない頭でっかちの評論家タイプ。
そんな研究者・技術者は社会に必要とされていないのである。
私は研究所に勤めてからは,超伝導コイルの開発に携わった。
コイルを設計するためには,電気回路の知識だけでは全く不十分であった。
電磁気学,伝熱学,超伝導工学,材料力学,放射線遮蔽の知識など,
幅広い知識が要求される。
どれひとつが欠けても,満足なコイルは設計・製作できないのである。
これはどの分野のプロダクトにおいてもいえるはずだ。
学生の皆さんには,まずは専門バカにならないよう
幅広い知識を身につけて欲しい。
(まぁ,バカ専門よりはましなのだけれど)
大学の教育は,そうした目的にぴったりと合う。
講義にさえ出れば(そして意欲さえあれば),
基礎から最先端の知識までを身につけることができる。
社会に出てから同様の知識を身につけようとすれば,
どれだけ大変な努力を要することか,
ちょっと考えるだけでわかるだろう。
そして研究室に配属されたら,深い専門知識と研究能力を身につけよう。
しかし,それでも隣の研究室でどんな研究をやっているのかくらいは
わかるようにしておこう。
身近なところから,周囲に気を配っておく。
それがいつかきっと役に立つ。
社会が要求する人材は,
しっかりと基礎力のついた応用力のある「π型」人間なのである。
「π型」人間は別にスーパーマンではない。
ちょっとした努力でなれるはずのものである。
私もまた怠らず努力をしていきたいものである。
2007年3月23日金曜日
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