私が担当している「電気機器」という講義においては,「磁気回路」,「直流機」,「同期機」,「変圧器」,「誘導機」を取り扱う.「磁気回路」は機器ではないので,残りの4つの電気機械について学生のみなさんは勉強することになる.さてここで,「直流機」,「同期機」,「誘導機」の名称には機械の「機」を使っているのに,「変圧器」だけはウツワの「器」を使っていることにお気づきの方もいるかと思う.今回はその違いについて少し説明する.
簡単に言ってしまうと,動く機械については「機」を使い,動かないものには「器」を使うのである.
「直流機」,「同期機」,「誘導機」 は,発電機または電動機(モータ)として用いられる.すなわち動力を電力に変換する,あるいはその逆を行うわけなのだけれど,だから機械的可動部がその機器には存在する.もちろんこれらは「回転機」なので,回転軸がその可動部になる.一方,「変圧器」はどうだろう.一般的には動くところがない.こうした電気機械は「静止器」と呼ばれ,この場合は「器」の文字を用いることになっている.また,半導体を用いた電力変換器(整流器,インバータなど)は,見た目にやはり可動部が無い.したがって,「静止器」で「電力変換器」は「器」の文字を使う.
ここでややこしいのが,「周波数変換器」である(例えば,60 Hzの電力を50 Hzに変換するように,周波数を所望の値に変換する装置のこと.エアコンのコンプレッサーや電気自動車のモータは可変速で使用されることが多く(回転数を変えるということ),したがってインバータと呼ばれる周波数変換器が使用されていることが一般的である.もちろん,電車なども同様に速度に応じて回転数すなわち周波数を変化させている).半導体を用いた周波数変換器は動かないので「器」である.しかし,世の中には回転機を用いて周波数を変換するものもあるのだ.有名なものは,新幹線の電力を供給するために綱島(神奈川県横浜市)に設置された60 MVAの「回転型周波数変換機」がそれである(神奈川県南足柄市にもある).これは回転機なので「機」でなのである.
#因みに新幹線は全線60Hzで運用されており,そのために東側エリアでは50Hzから60Hzに周波数を変換する必要があるのです.綱島に近年設置された周波数変換器は半導体の静止型です
ということで,「機」と「器」はちゃんと使い分けているのである.
さて,「遮断機」と「遮断器」の話である.線路の踏切についているのは動く機械なので「遮断機」である.一方,電力系統に事故などによって大電流が流れてしまったときにその電流を遮断する(切る)ものは「遮断器」なのである.
えっ,機械式遮断器はちゃんと可動部があるじゃないかって?細かいことは言わない,言わない(笑).
2012年3月8日木曜日
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一年も前の記事ですが助かりました。
返信削除電気系の部署にて働いているのですが、ふと聞かれたときに
「器」と「機」の違いを咄嗟に答えられなかったのです。
よくよく考えれば分かりそうなもでしたが・・・
電話機は昔 発電機を内蔵していたから機ですね、歴史も背景にあるからややこしい
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