2021年9月28日火曜日

呪いは呪われたと思い込んだら負けだ!

 私が注目していた「准教授・高槻彰良の推察」。とうとうSeason 1が最終回を迎えた。本当の怪異を求めていた准教授 高槻と学生 深町の二人のバディは最終回でとうとう「本物」に出会うことになる。

死者を迎える盆踊りに二人は参加し,死者たちにその代償を求められるのだけれど,そこで二人は,「山ぶどう」,「タケノコ」そして「桃」を死者たちに投げ与えて難を逃れるというストーリー(「死霊の盆踊り」という映画も昔あったが)。話の中で前半,高槻がそれぞれの食べ物を集めていくのを見て,もちろん私は「ははーん」と黄泉平坂のくだりを思い出していたのだけれど(知らない人は「古事記」を読んでください),二人が盆踊りに集まった死者たちから逃げるときに叫んだ言葉が,

呪いは呪われたと思い込んだら負けだ!

である。ああ,また同じフォーマットだ,と思った。

このことについては以前にも映画「さんかく窓の外側は夜」において書いたけれども,「呪い」が存在するかしないかに関わらず,「呪い」が心理的な影響を与えるためには相手が「呪い」をかけられたということを知らなければならない,ということは結構人々の間に信じられているのだな,と思った。ちなみに「さんかく窓」では全くオカルトを信じない刑事には「呪い」は通用しないという設定になっている。

今回の「准教授・高槻」でも,二人は(幽霊を前にして)心を強くもって手をつないで逃げ出すことになった。結局,人の悪意に対抗するためには強い心が必要だ,ということなのだろう。これがこの物語がもつメッセージのひとつなのかもしれない。

今回,このドラマで伊野尾慧の演技になぜかしら強く惹かれた。少し浮世離れした話し方があの美貌にふさわしかったからなのだろうか。そして,私は岡田結実がいつのまにかきれいな女性の役が似合うようになったことに一番驚いた...

♯Season 2はWOWOWで放送だそうだ...

2021年9月7日火曜日

鈴虫の音色は電話では聞こえない

 家の近所を歩いていたら,鈴虫の鳴き声(本当は鳴き声ではないけれど)が聞こえた。もうすっかり秋なのだなぁと思うと同時に,あらためてその音色の美しさに感心した。非常に高くて薄い音だ。リーン,リーンと聞こえる虫の音に,耳をすますこともずいぶん久しぶりだな,ともしみじみ思った。

鈴虫の音は電話で伝えることができない,というのは結構有名な話である。これをネタに,犯人のアリバイを崩すようなミステリーが何度か繰り返し作られているような気がする。例えば,「相棒」。そして「SPEC」。電話の向こうから鈴虫の音色が聞こえたなどと,犯人はすぐにばれる嘘を言ってしまうのである。

電話の音声周波数帯は300 Hz ~ 3400 Hzだという。どうも多重化のために高い周波数の音がカットされているらしい。一方,鈴虫の音色は4000 Hz ~ 4500 Hzほど。電話では聞こえないことになる。

ちなみにモスキート音は,20000Hz付近の音らしい。私にはもう聞こえない。鈴虫の美しい音色はいつの年齢になっても聞こえるようでありたいものである。

2021年9月6日月曜日

黒い蝶

 昨日,川沿いの土手の上にある細い道を散歩していたら黒い蝶を見つけた。その道は両側に雑草が生い茂っていて人が通れる幅が狭く,そしてよくよく気をつけて地面を見ていないとオレンジと黒と白の派手な色の毛虫を踏みつぶしてしまいそうだったのだけれど,ふと目線を上げてみると黒い蝶が細道の真ん中をまるで私を道案内するかのように飛んでいるのに気づいたのである。

気になってその蝶を見ていると,しばらくまっすぐに道の真ん中を飛んでは左右の草むらの中に紛れてわからなくなってしまった。そこでまた私は毛虫に気をつけながら下を向いて歩いた。そしてふと目線をあげるとまた黒い蝶が私を導くように道の中央を飛んでいるのを見つけるのである。そんなことが3~4回繰り返された。

同じ蝶が私を導いているのか。そうも思ったけれど,同じ種類の違う個体の蝶だと考える方が自然である。

しかしそのとき,私は10年以上も前に亡くなった父のことを考えながら土手を歩いていた。だから,その黒い蝶はあちらの世界からやってきた私の父なのではないか,などと思ったのである。

小林秀雄がエッセイで,蛍が飛んでいるのを見て,自分の母親が蛍となって自分を訪れているのだと感得する話を書いている。死者が蝶となって自分を訪れる,というような話もどこかになかっただろうか。

蝶はなぜか,死者を思い起こさせる。そしてその後をついていきたくなってしまう。あの羽ばたきがなにかしらの催眠効果を与えるのだろうか。どんな理由でもよいけれど,蝶を見て昨日,私は父を思い出した。そしてそれによって心が慰められたのである。

桜を見ると思い出す

桜が満開である。 研究室でも花見BBQが行われ、まさに「花より団子」 、学生はだれも桜など見ずにひたすら食べることに集中していたけれど、食べづかれた私は桜をぼんやりと見ていた。 学生の一人が 「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」と梶井基次郎の文章 を話していたので、そういえばそ...