2019年10月10日木曜日

ヘミングウェイにとって命がけの競技こそスポーツだったのだ

ラグビーは人生ってやつを教えてくれる」みたいな記事を書いて,ヘミングウェイの言葉を紹介したけれど,実はヘミングウェイは次の言葉を残している.

スポーツと呼ぶに足りる競技は三種類しかない。それは闘牛、モーターレース、そして登山。他はすべてただのゲームにすぎない
There are only three sports, bullfighting, motor racing, and mountaineering and all the rest are merely games.

すなわち,ヘミングウェイは命をかけるものでなければスポーツと呼ぶに値しない,と言っているわけである.「いやいや,スポーツは命がけじゃないから」とツッコミたくなる言葉である.しかし,第2次世界大戦で従軍し,ボクシングをたしなみ,釣りと狩りを楽しみ,スペインで闘牛にぞっこんだった彼には,他のスポーツが生ぬるく感じられたというのも仕方ないような気がする.闘牛についてなんて,「闘牛は死の危険を犯して生み出す唯一の芸術」だとまで言っていて(出典不明でどこかで読んだだけなんだけど),死と隣り合わせなことは非モラルであるけれど興奮するといっている.そこまでやらないと彼には本当のスポーツにはならなかったらしい.

しかし,スポーツというのはそもそも語源が「気晴らし」という言葉なくらいお気楽なものなのだ.そこから考えるとヘミングウェイの言葉は厳しすぎるように思う.私も「武道」と「スポーツ」の違いを訊かれると,そもそもの始まりが違うと答えるようにしている.武道は始まりからして決して気晴らしではないのだ.

でも実際は世界のトップアスリートたちは命がけで競技に取り組んでいる.私みたいなエセ武道稽古者とくらべるのもおこがましいくらいに.そこで私はこう疑問に思う.そこまでして行う競技は「スポーツ」と呼べるものなのだろうかと.それらは決して「気晴らし」ではないのだから.

#ヘミングウェイの短編集を読んでいても闘牛を題材にした話が数多く出てくる.しかし,闘牛といえば,彼には「午後の死」という著作があるらしいけど私は読んだことがない.AMAZONを見ても,該当する本が見当たらない.いつか読んでみたいと思っているのだけれど(そんな暇あるか!),この作品に名前をとった彼考案のカクテルがあるという.この「午後の死」というカクテルは,もともとはなんと「黒色火薬」をシャンパンで割ったものらしい.今ではアブサンをシャンパンで割ったものになっているらしいけれど...

2019年10月7日月曜日

ラグビーは人生ってやつを教えてくれる

ラグビーが盛り上がっていてうれしい.気づいてみれば現在,世界陸上,バレーボールのWカップ,プロ野球のCSなどで,どのスポーツも盛り上がっている.そう,もうスポーツの秋なのだ.

なかでも私はラグビーが好きなのである.私が通っていた高校はラグビーが校技で,男子全員がラグビージャージとラグビーパンツ,そしてソックスを購入させられ,一年のうち結構な時間をラグビーに割いて練習させられていた.まぁ,その頃男子校に近かった母校もこの頃では女子が過半数を超えたというから,今ではどうかわからないけど.

ラグビーの良さは,なんといってもその肉弾戦の迫力である.運動神経がズタズタに切れている私だから,やっぱり体育は苦手だったのだけれど,それでもタックルも練習させられた.タックルマシーンにぶつかるのは楽しかったけれど,あたっても「ポスッ」っていう情けない音がするばかりだった.実は私の同級生たち(ラグビー部)は全国高校ラグビーフットボール大会で花園に行ったのだけど,彼らがタックルすると「バシーン」という硬いものがぶつかる音がした.彼らの身体は筋肉で固められているのだと思ったものである.

とにかくラグビーは,身体と身体がぶつかりあうスポーツでそこが男らしいし,倒れてしまうとプレーはできず石のように扱われても文句を言わない.それも男らしい.選手は常に傷だらけである.だからこそ彼らの笑顔は素晴らしい.そして,試合後はノーサイド.誰よりも紳士らしく振る舞う必要もある.まさに理想の男を磨くためのスポーツなのである.

ラグビーW杯の選手たちのあの超人的な身体能力と不屈の精神力を見るたびにこちらも震え立つ.年をとってすっかり忘れていた勇猛さをちょっぴり(ほんのちょっぴりだけど)思い出させてくれた.それがうれしいのである.

ヘミングウェイの言葉を思い出す.

「スポーツは公明正大に勝つことを教えてくれるし,またスポーツは威厳をもって負けることも教えてくれるのだ.要するに…スポーツはすべてのことを,つまり,人生ってやつを教えてくれるんだ」

私の同級生たちはテレビ番組の「スクールウォーズ」に感動し,花園に行った.

確かにラグビーは,人生ってやつを教えてくれるのだ.

2019年9月19日木曜日

疲労をおさえ,長時間働く方法

結局,毎日,長時間,集中力を持続して仕事を行うことが現代人には必要らしい.しかし,私のように歳をとって体力も落ちてくるとそれが難しくなってくる.仕事に限らない.車の運転だってそうだ.長時間集中力を持続することを困難に感じるようになってきたのだ.

では,どうやってこの老化による体力の減少をだましだまし集中力を維持するか(結局,集中力とは体力なのだと私は信じている).それについて今回は書いてみたい.

今年になって私は,関西と長岡を自動車で往復することが多くなったのだけれど,正味6時間半程度の運転が必要となる.もちろん休憩なしなんて無理である.そこでどのように休憩をとっていくか.その戦略が必要となる.

ひとつは,とりあえず行けるところまで行って,疲れたら休みをとる.それを繰り返していく方法である.しかし,遠距離になると長く運転すればするほど,疲れを感じて休みをとる時間間隔が短くなってくる.そして疲れの度合いがどんどん深くなっていく.最後の方はかなり疲労を感じながら運転をしなければならなくなってしまう.正直しんどい.

そこで私が最近とる戦略は,とにかく1時間走ったら休むという方法である.運転の最初からそのようにする.すると1時間くらいではそんなに疲れないから,最初の頃は休みが無駄なように感じてしまう.しかし,その疲れを感じないで休むということが大切なのである.次にまた1時間走って10分以上は休む.それを繰り返すのである.この方法だと結構疲労を少なく抑えることができ,集中力を維持して運転することができる.結局,関西ー長岡間の運転に8時間程度かかることになってしまうが,到着したときもまだ体力があるような気がするほど,集中力は維持される.いまのところベストな戦略なのである.

これは,人間が疲れを感じたときには,まずすでに時が遅いということを示している.そのときにはもう心身は疲れてしまっているのだ.10分程度休めば体力が回復する,というのであればよいのかもしれない.しかし,人間はそんなに都合よく短時間で体力を充電できないのである.

アスリートが,喉の乾きを感じてから水を飲むのでは遅すぎる,と言っているのに近いのかもしれない.人間のセンサの検出遅れは,ずいぶん大きいのである.

車の運転に限らず,1日の仕事時間にどのように休憩をとれば長時間集中力が続くのか,その解のひとつがこの戦略ではないかと思っている.その意味で25分間集中して5分間の休憩を繰り返すポモドーロ・テクニックはこの戦略と親和性が高いと言えるだろう.

村上春樹も執筆するとき,時間を決めておき,その時間が来たらどんな状態でも仕事を中断してその日の仕事を終えるのだと,どこかで書いていたような気がする.そのように心をハンギングした状態で仕事を一時中断することが結局は長い間,集中力と好奇心を持って書き続ける秘訣なのだろうと思う.

2019年9月13日金曜日

計画を立てるのが億劫な理由

私は計画を立てるのが苦手である.いや,正確にいうとちゃんと計画をして実行はする.しかし,計画を立てるのが億劫なのだ.計画を立て始めればちゃんとその作業をすすめることができるのだけれど,計画を立てるという作業に入るまでが,ハードル高く感じるのだ.

その原因を考えてみた.

自分を否定する大きな理由のひとつに,自分で立てた目標を達成できないというものがある.それは,すなわち,自分自身との約束を破ることである.このとき自尊心が削られる.自分はその目的に値しなかったのだと思う.そのときに自己肯定感はかなり損傷する.

もちろんその失敗の結果を次回にフィードバックするということは行う.しかし,自尊心が多少なりとも削られたことには違いがない.そのつらさを考えると自分と約束することが億劫になってしまう.それが計画を立てることに気後れする理由のひとつなのだと思うのである.

これを回避する方法はいくつかある.

その一つは目標のステップを適切な大きさにすることである.小さすぎるステップでは逆に自分の評価を自分でどんどん下げてしまうことになる.簡単,単純な作業を続けていると,意欲が下がってしまうことと同じである.

一方,そのステップが大きすぎると目標を達成できず,上記の通り自分を傷つけてしまう.イチロー選手もどこかのインタビューで答えていたのを覚えているのだけれど,つまりは,適切に頑張れば達成できる適切な目標を自分に与え続けることが成功の秘訣なのだ.

しかし,どんどんと仕事が降ってきて処理していかなければならない状況では,短時間で達成しなければならない課題が多すぎて,どうしてもステップは大きくなりがちである.そこが難しいところである.

とにかく,適切な目標を設定し,それを達成することによって自己評価を高めていることが大切である.ただそれがギリギリ達成できるほと難度が高いというのもあまりよくない.達成するには,あまりにつらい努力が必要であるということが続けば,目標を立てる際に,これを達成するために費やされる努力のつらさが先に思いやられてしまう.結局それが,現在私が計画を立てるのが嫌いということの原因なのだ.

#もちろん,適切な目標を立てないと最終的にゴールに達しないことも重々わかっているので,計画は立てて実行しています


2019年9月10日火曜日

渋沢栄一を演じた勝新太郎,役者の格

再来年の大河ドラマは,渋沢栄一が主人公らしい.お札になるという効果もあるのだろう.演ずるのは吉沢亮.しかし,端正な顔立ちな渋沢栄一というのはどうなんだろう.感情移入できるのだろうかと心配してしまう.個人的には吉沢亮は大好きな俳優なのだけど.

渋沢栄一というと,私にとって最も印象に残っているのは,映画「帝都物語」で勝新太郎が演じたものである.存在感がとにかく大きな渋沢栄一だった.映画の中では東京(帝都)を魔法陣で守ろうと画策するのだけど,セリフの一つ一つが重い.夢のような話をするのだけれど,彼の一言が重いのでリアリティを感じてしまう.帝都は風水によって霊的に守護されるような気になってしまうのだ.

勝新太郎というのは私が大好きな俳優なのだけれど,それは彼の晩年の「存在感」によるところが大きい(若い頃の座頭市の色気も素敵だけど).渋沢栄一もそうだけれど,「独眼竜正宗」で演じた豊臣秀吉もすごかった.特に小田原攻めで渡辺謙演じる伊達政宗と会うシーンなんて,彼がすごく大きく見えてくる.目が彼から離せなくなる.これが「格」というものだろう.

演技の実力だけでなく,人間としての余裕,洒脱さが大きく見させているのだろう.彼がプライベートで三味線を弾き,都々逸を唄っているチャーミングな姿が,今も忘れられない.

本当の天才は,歳をとっても天才だということを彼は教えてくれる.

2019年9月8日日曜日

印を結ぶ意味

「印を結ぶ」という動作が伝えられている武術(特に古流)がある.たとえば香取神道流とか柳生の流派とか,私が学んでいる合氣道においてもそういった印を結ぶということが伝えられている.もちろん,映画などでよく描かれる忍者などもそうかもしれないし,密教の修行者や山伏は当然のように印を結ぶ.この印を結ぶという行為にはどんな意味があるのだろうかと,個人的な考えをまとめてみる.

1.落ち着く,集中できる
だいたい印は指を組むのがややこしい形をしていたりする.それを迅速にいくつもの印を連続して結ぶのである.もしも,これから印を結ぼうとする人が,俗にいう「あがっている」状態であったら,そんなふうに迅速に印を結ぶことができるだろうか.それはたぶん難しいだろう.一方で,逆に難しい印を次々と結ぶことによって,恐怖や不安から気がそらされて集中し落ち着くことができるのではないだろうか.ここで「落ち着く」というのは,合氣道でいうところの統一の状態,すなわち集中し,臨機応変に落ち着いて行動できる状態を指す.武術のような生死をかけた状況においてこうした心の状態の持ちようは,勝敗に大きく影響していたのではないだろうか.

2.肩の力が抜ける
複雑な印を連続して迅速に結んでいくことは,肩に力が入っていてはできない.すなわち,印を結ぶときには肩の力が抜ける,すなわち落ち着いた状況になるのである.また指を組んでみるとわかるのだけれど,肩が下がるような形になっている.身体の無駄な力を抜くことによって心の状態を落ち着かせているのだと思われる.

3.宗教的な自己暗示
密教などにおいては印を結ぶときに真言を唱える.たとえば不動明王であったり,摩利支天であったり,それぞれの神様の真言を唱えることになる(武術などでは唱えないことも多いけれど).また印形もそれぞれ宗教的な意味を持っている.江戸時代や平安時代,まだ宗教心が人々の間で重要あった頃,生死をかけた危機において頼れるのは神様だったはずである.この神様を身におろす,あるいは御加護を直接受けることができる,と信じることは,非常に効果のある自己暗示であり,非常時に恐怖や不安から脱却するのに大きく役立っていたのではないだろうか.

4.催眠暗示におけるアンカー
日頃の厳しい鍛錬において,好ましいと思われる心身の状態がおとずれることがある.この状態が常に実現できるのであれば言うことがないが,残念ながら闘いの場などの危機的な状況にあったときに,そうした心の状態を実現することは至難の技である.しかし,日頃の厳しい鍛錬の中でそうした状態を会得したときに,その心の状態を印形と結びつけるのである.すなわち催眠暗示におけるアンカーを作っておくのである.いざというときに,その印を結ぶことがアンカーとなって,その好ましい状態を呼び戻すことができるのである.スポーツでルーティンなどと呼ばれる一連の動作と効果は似ているのかもしれない.アスリートも武術家も暗示に自分にかけることができなければ,火事場の馬鹿力など出せないのではないかと思う.

5.刀印による文字を書く動作,あるいは九字を切る動作について
印を結んだあと,刀印で「龍」などの文字を空中に書くような方法もある.あるいは密教では九字などにおいて,空中に格子を切ったり,あるいは五芒星を描いたりする.これは,描く図形に宗教的意味をもたせることにより,やはり自分に強い暗示をさらにかけるものではないかと思われる.また描く図形は尖ったものであることが多い.これは世界的に魔除けと呼ばれる形は,十字であったり,五芒星であったりとトゲトゲしいことが多いことを思い起こさせる.またその描き方は,なにかを切るように鋭く行うことが多いようだ.

ということで,思いつくままにメモ代わりとして書いておく.たぶん時間が経てばまた違う考えをもつとは思うのだけど(あくまでも個人的な考えです).

2019年8月27日火曜日

フィールド・オブ・ドリームス

関西の行きつけのレンタルDVD屋さんでずっと探していても見つからず,店員さんに尋ねてもこのタイトルが見つからなかった(そもそも店員さんもこの映画を知らなかった)のだけれど,数年前に観ることができた映画.先日,来年のメジャーリーグの公式戦(White Sox, Yankees) がその球場で開かれるというニュースを知り,またまた観たくなった.

フィールド・オブ・ドリームス(1989)(監督 フィル・アルデン・ロビンソン)

数年前に観たときの感想がこれ.

--- Twitter ---

"Field of dreams"を観た。最後の父親とのキャッチボールに涙腺がゆるむ。「ここは天国か?」というセリフが何度か出てくる。「天国とは夢が叶う場所」という定義ならば、この世にそれを実現することも出来る。野球は「善」の象徴だ。自分が野球に郷愁を感じる世代でよかった。

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この映画をずっと観たかった.歳を取るにつれ純粋な気持ちを忘れているような気がしていて,この映画はそれを思い出させてくれそうで,ずっと観たかった.私は涙を流すことはほとんどないのだけれど,それでも最後のシーンでは少し涙腺が緩んだ(結局涙はでなかったけれど).

まず,ケビン・コスナーがいい.彼はまだ若く,田舎の気のいい兄ちゃんレイをぴたりと演じている.そんな彼がある日,とうもろこし畑の中で「それをつくれば,彼はやってくる」という不思議な声を聞く.父親のように年齢に負け日常に埋没していく生活を嫌って,その声に従ってとうもろこし畑を潰して野球場を作ってしまう.それから彼の生活が変わっていく.

次に奥さんがいい.「ストリート・オブ・ファイヤー」のマッコイ役の女優だ.ここではレイを支える素敵な奥さんを演じている.謎の行動をとる彼を責めることもなく,一緒に野球場をつくる.

そしてとうとう彼らがやってくるのだ.とうもろこし畑の向こうから.なんという素晴らしいファンタジー.アメリカ人は野球が本当に好きなのだと感じさせられる.大選手の中に混じって,ケビンの父親もやってくる.レイとの関係に問題を残したまま父は逝ってしまった.その心の穴を埋めるシーンがある.

「父さん,キャッチボールをしないか」
ぎこちなくレイが若いままのレイの父親に問いかける.
「ああ,しよう」
そして二人はキャッチボールをするのだ.

父子のキャッチボールほど親子関係を感じさせるものって,そうそうないのではないだろうか.私は父との思い出は少ない方だけれど,やはりグローブを買ってもらって一緒にキャッチボールしたことはよく覚えている.うれしかったな.残念ながら,私の息子は嫌がってしてくれなかったけれど.

「野球」と「父子」.アメリカが「善きこと」として考えるファンタジーが,この映画で結実している.今もこの映画はアメリカのテレビで何度も放映されているのだという.みんな大好きなのだ.

映画のあと,いろいろな活動があって,映画が撮影されたその球場はずっと保存されていたのだ.そしてとうとう本当にメジャーの選手たちがそこにやってくる.そのとうもろこし畑は本当に夢が叶う場所となったのだ.

試合が行われる夜.やはり遠くからくる車が連なって,ライトが星のように並ぶのだろうか.そのひとつの星になりたい.

ヘミングウェイにとって命がけの競技こそスポーツだったのだ

「 ラグビーは人生ってやつを教えてくれる 」みたいな記事を書いて,ヘミングウェイの言葉を紹介したけれど,実はヘミングウェイは次の言葉を残している. スポーツと呼ぶに足りる競技は三種類しかない。それは闘牛、モーターレース、そして登山。他はすべてただのゲームにすぎない “ T...