2013年3月6日水曜日

Hesher (「メタルヘッド」)感想: 謎のヘビメタ男はキリストなのか

2月末で,卒論,修論の提出も終わり,また抱えていた締切もすべて間に合って,少し先週末は時間ができた.そこで,自分へのご褒美として,DVDを見ることができた.観たタイトルは,

"Hesher"(邦題「メタルヘッド」,2010,監督:スペンサー・サッサー,出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット,ナタリー・ポートマン他)

まず観て思ったのは,「いいなぁ.こんな映画が作れるなんて,まだまだアメリカの映画界も底力があるなぁ」ということ.とにかくクレージーで馬鹿馬鹿しい.決してコメディーだけというわけではないが,楽しい.そして少し泣ける.映画としては,現代の癒しの形を示しているのではないかと思う.内容としては,

母親を交通事故で亡くした中学生(?)(名前はT.J.)と父親が喪失感から立ち直れないでいるとき,ヘッシャーがやってくる.彼はヘビメタ男.やることなすこと,常識外れ,クレージー,いかれている.そんな彼にふりまわされて,T.J.と父親は混乱の毎日を送ることとなるのだけれど,彼らの生活にもやがて変化が訪れて,再生に向かい始める.そして,ヘッシャーはどこかに去っていく.

という話なのである.あらすじを書いていても全然この映画の魅力が伝わらない.とにかく,観ることでしか伝わらない雰囲気がこの映画にはある.

ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは,インセプションで観たときからファンになってしまったのだけれど,この映画では,謎の長髪刺青ヘビメタ男,ヘッシャーを演じている.またこれがいいんだなぁ.彼が芸達者なことがよくわかる.役者臭さを感じさせずに,怪しい男を演じている.またまた彼のファンになってしまった.

途中,T.J.が憧れる地味なレジの女性は,ナタリー・ポートマンが演じている.意外だけれど,またこれがいい味を出している.今回,彼女はこの映画のプロデュースに参加したらしい.彼女もこの映画を愛しているのだろう.

内容としては,母親を亡くした喪失感に苛まれる家族の再生の話なのだけれど,ヘッシャーはある意味,神様なのだ.もっと言ってしまうとヘビメタ男になったキリストなのだ.その思いを強くしたのはDVDのメニュー画面.落書き風のイラストで,たぶんヘッシャーの手のひらが描かれているのだけれど,その両手のひらには聖痕が確かにあった.すなわちキリストなのだ(両手のひらは実は,親指が内側に描かれているので,後ろ手なのだろうけれど).彼は,救いをT.J.たちに与えて去っていく(そして,屋根には"Hesher was here."と大きく書き残していく(笑)).また次の人を救いに行くのだろう.この映画は,現代の形に改変された神の癒しによる喪失からの再生のおとぎ語なのだ.
こんな映画が作られるなんて,まだまだアメリカ映画は捨てたモノではない.日本では,たぶん作られないだろうなぁ.

ということで,大人のみなさんにオススメの一本.子供が主役のように見える映画だからといって,子供と一緒には観てはいけません.かなり下品で大人しかわからない下ネタ満載の映画です.でもなんだか元気が出る映画.とにかく雰囲気を味わって欲しいと思います.

評価は,★★★★☆(星四つ.五つが満点)

#因みに,作中に流れるヘビメタは,メタリカのものらしい.ヘビメタって,今聴くと少し前代的な感じ(ひらたくいうと,少し古い感じ)がした.私も歳をとったか?


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