落語のブームが続いているらしい.
NHKのテレビ番組の「昭和元禄落語心中」なるドラマをちらりと見たのだけれど,岡田将生の演技になんとなく惹かれて,ついついその回の最後まで観てしまった.落語のシーンがいい感じ.岡田くんの性格の暗さ加減がまたちょうどよい.一方,山崎育三郎の落語もリズムが良くて(ミュージカルスターだから?)素敵だ.彼は多才だなぁと感心する.
私は落語をそれほど一生懸命聴くわけではないけれど,聴く機会があれば積極的に耳を傾ける.それくらいの「好きさ」加減なのだけれど,その話芸の素晴らしさには本当に惚れ惚れする.
大阪大学 吹田キャンパスでは11月に行われる吹田祭で,毎年落語会が開かれている.桂春蝶さんが父上の桂春蝶の代から大阪大学に縁があったということで,毎回3名ほどの講演を聴くことができる(落語だけではなく,講談などもあるのだけど).今年も,月亭方正さんなどと一緒に行われたということだが,残念ながら私は所用で参加できなかった.でもこれまでにも,桂梅團治や桂文珍,桂ざこばなどの名だたる名噺家がやってきてくれて,それはそれは素晴らしい話芸を披露してくれている.そのたびに落語の素晴らしさを堪能できる.今年行けなかったことはつくづく残念である.
私が落語に興味を持ち始めたのは小林秀雄の講演(新潮からCDとして発売されている)を聴いたのがきっかけである.小林秀雄の語り口が面白い.彼の書いている硬い文章とは違い,ずいぶんとやわらかく,聴いていて楽しく飽きさせないものになっている(読んでいると眠くなってくる彼の難解な文章とは対照的だ).それが意外でその話しぶりが長く記憶に残っていたのだけれど,あるときに,小林秀雄は講演のために古今亭志ん生の落語を参考にした,と言う話を知って俄然落語に興味が湧いてきた.なぜなら私もあのような語り口を身につけたいからである.
以来,落語をテレビやラジオで聴く機会が増えた.そしてそのうち話芸としての技術だけでなく,そこに語られている噺自体の魅力に惹きつけられていったのである.若い頃は自分が落語を好きになるなんて考えもしなかった.しかし,いまは研究室や講義を受講している学生のみなさんにも落語を聞くことをおすすめしている.あんなふうに場を支配するような話し方ができたら,就活の面接試験でも遅れをとることはないだろうから.
2018年11月7日水曜日
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