2018年11月20日火曜日

ライオンに戦いを挑んだネズミを憐れむやつはいない

女子プロレスラーの長与千種さんが男女のケンカを止めに入って,男から暴行を受けたというニュースがあった.長与さんはプロレスラーという職業柄,男の人には反撃をせず4分間ほど耐えていたのだという(刃物を持っていないことを確認してから耐えていたとのこと.さすがである).長与さんはさすが元クラッシュギャルズ.素晴らしい振る舞いだと思う.しかし,私は暴力をふるった男の判断に疑問をもつ.なぜなら女性とはいえ,プロレスラーに手を出すなんて正気の沙汰ではないからである.

私がまだ学生時代,結構サンドバッグも自分なりに納得がいくように打てたり蹴ったりできるようになってきて少しだけいい気になっていたころ,夜,私が住んでいた自由が丘の駅近くでジャージ(というかブルゾン?)姿の集団を見かけた.集団の後ろからだったのでその人たちの背中が見えていて,全員女性なのはわかったのだけれど,どうもみんなガタイがでかくてなにかおかしい.そして真ん中を歩いている人がひときわ大きくて小山のようだった.特に僧帽筋の発達がすごくて首が無いように見える.

「どんな人なのだろう」

と疑問に思って少し早足で集団の前に出て振り返って小山の人を見たらそれが長与千種さんだったのである.クラッシュギャルズのブームはそのときにはもう過ぎていたのだけれど,それは確かに彼女だった.どうもプロレスの練習生たちを連れて食事か飲みに出ていたように思われる.そのとき,私は思った.

「女子とはいえども,プロレスラーとは絶対に戦うまい」

いい気になっていた私の鼻は簡単にへし折れたのである.

今回の事件で,暴力をふるった男は相手が普通じゃないと気づかなかったのだろうか.今回は長与さんが手を出さなかったけれども,素人がプロに手を出したら大変なことになってしまうのが普通である.プロが少しでも本気になったら悲惨な結果になってしまうだろう.男は長与さんにボコボコにされたことだろう.人間社会だから,こうした喧嘩をしてしまったらいろいろあとで難しいことになってしまうけれど,野生動物の世界でもしも戦う相手の能力を読めなくて,強いものと戦って殺されたとしても,それは自業自得で済まされてしまうのである.例えばネズミがライオンに歯向かってそのまま殺されたとしても,ライオンを責める人はいないだろう.ライオンの実力を読めずに戦いを挑んだネズミがその結果を自ら招いたのである.

もしも,もしもだけれど,男が長与さんと喧嘩して勝てると思っていたとしても,4分も相手に耐えられている時点でだめである.もっと短時間で決着をつけてその場から立ち去らなければならなかったはずである.まぁ,長与さんが止めに入ったケンカがそもそも男が女に手を出していた,ということだから,男はそんなケンカのプロではないだろうけど.

今回のニュースを聞いて,あの長与千種さんにケンカを仕掛けるなんてとても正気の沙汰じゃない,とあのときに見かけた長与さんの姿を思い出して,私は思ったのである.

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