先日,ひどい雷雨に見舞われたことがあった.それも一日に2度もである.こんなこともあるのだと感心して夕方,学内を歩いてみれば,上空に寒気が入ってきたのか気温はずいぶんとさがっていることに気づいた.なにかしら空気も清々しさを帯びている.そんな雰囲気の中,そぞろ歩いていると楽劇「ラインの黄金」のヴァルハラ城入城のシーンが思い出された.
「ラインの黄金」は,もちろんワーグナーが作曲した楽劇(「オペラ」とは呼ばないらしい)で,舞台祝祭劇(!)「ニーベルングの指輪」4部作の最初,「序夜」と呼ばれるものである.その4場構成の4場の最後に神々が完成したヴァルハラ城に入城する際のシーンの音楽が,本当に勇壮で私も大好きなのである.
雷神ドンナーがハンマーを振るって雲を起こし,雷を落とす.このとき,演奏でもハンマーの音が雲を切り裂くように鳴り響く.すると雲は切れ,神フローが城に虹の橋をかける.演奏では,キラキラとしたメロディーが聞こえてきて,そして私の大好きな音楽が始まるのである.神々が勇壮に入城していくシーンが音楽によって描かれていく.音はどこまでも広がり壮大なまま終わっていく(実際には,炎の神ローゲが神々の黄昏を予言し呪いの言葉を吐いてハッピーエンドとは言えないのだが).このシーンで鳴り響く曲が思い出されたのである.
雷神ドンナーというのは,北欧神話でいうところのトール.英語で言えばThor(ソー).すなわち最近映画になった「マイティ・ソー」のあの「ソー」である(だから映画のヒーローもハンマー(ミョルニル)を使う).クラシック音楽の中で雷が描かれることも多いが(例えば,ウィリアムテル序曲の嵐とか,シュトラウスの「電光と雷鳴」とか,ベートーベンの「田園」など),雷の鋭さを表すといったら,この曲に勝るものはないだろう.「ヴァルハラ城への入城」では,このハンマーの一撃のあとに広がる清々しさが実に良く表現されているのだ.
この曲でお気に入りの録音は,ショルティの初めての全曲録音のものだったのだけれど(持っていたのはハイライト版だったが),それがある事情で無くなってしまったため,現在このハンマーの音が入っているCDは一枚もないのが残念至極なのである.その後に流れる「ヴァルハラ城への入城」では,レヴァイン,カラヤンの録音を聴くことが多い.結局この前も,レヴァインのメトロポリタン歌劇場の録音「コンパクト・リング」のCDを取り出して聴いてしまった(通勤時だけど).とにかく圧倒的な音楽.朝から気分がずいぶん大きくなった(笑).
以来,ワーグナーにはまっている.今日はパルジファルを聴いて運転してきた.ワーグナーは嫌う人も多いのだけれど,一度ファンになると抜けられなくなるようだ.私もワグネリアンと呼ばれる日も近そうである...
#ウォータン(オーディーン)がまたかっこいいんだなぁ,情けない男で(笑).
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