これからは,少しまともなエントリもちょっとずつ書いていきたいと思います.
さて,8月30日は,伊瀬研究室恒例の見学会だった.毎年,どこか電力に関わる設備を見学しに行くことになっている.昨年は,兵庫山奥の揚水発電所を見学に行く予定だったのだけれど,台風の大雨で断念している.今回は2年ぶりの見学会ということなる.
今年は,三重県の津市と伊賀市にまたがる風力発電設備「ウインドパーク笠取」を見学させてもらった.ウインドパーク笠取の隣には,ウインドパーク美里,ウインドパーク久居榊原,そして青山高原ウインドパークが近接し,青山高原一帯の風力発電設備群を構成している.このあたりは琵琶湖から伊勢湾に抜ける北西の風が吹くことで風況がたいへんに良く,設備の稼働率が高い地域なのである(20数パーセント).そもそも「笠取山」の名称も,旅人の笠が風に飛ばされるほど強い風が吹くことから由来しているらしい.ウインドパーク笠取も風況の良い笠取山の尾根伝いに風車が設置されていて,2 MW(2000 kW)の風力発電機が19基,合計38 MWの容量を誇る.運転開始は平成22年だから,まだまだ最新鋭と言えるだろう.
タワーの高さは65 m,風車の回転直径は83.3 m.ブレード高さの最高は106 mを越えることになる.ジャンボジェット機B747の両翼の長さが64mだから,ジャンボジェット機がタワーに取り付けられてグルグルと回っているよりも大きなものが回転していることになる.残念ながら見学時,風は弱く風車はゆっくりと回転しているだけだったけれど(9 rpm),それでも十分に迫力はあった.定格時には19 rpm程度にまで回転数も上がり,そのチップスピードは時速300 kmに達するというのだから,さぞかし近寄りたくない状態になるのだろう.当日は雨も降ってきて,あたりがすっかり霧に包まれ,ブレードさえも見えない状況になった.そのうち雷鳴も聞こえてきてバスの中に避難.まったく山の中の風力発電設備というのは,たいへんな環境に設置されている.山の天気,すなわち100%近い湿度と雷の危険にいつもさらされていることなっているのだ.そもそも山の中に風車を立てるのは,世界でも日本くらいなのだし.
学生のみなさんは,風力発電設備を初めて見る人もいたようで,喜んでいた.やはり実物の迫力には座学でいくら説明しても勝てないのだと思った.百聞は一見にしかず.見学会の良さがここにある.
ここで,基本的なデータを備忘のためにまとめておく.
「ウインドパーク笠取」
事業者: (株)シーテック
風力発電機: 2000kW x 19基 = 最大38000kW
日本製鋼所製,永久磁石励磁多極同期発電機(84極,東芝)
発電機出力690V,BTB連系方式
ローター直径:83.3 m,タワー高さ: 65 m
22kV地中線にて,5基毎に直列接続(各タワーにGIS設置),
変電設備により77kV架空線集中連系
ナセルの中に,690V/22kVの変圧器と変換器が入っている.
カットイン風速3~4m/s,カットアウト風速25m/s
運転開始: 平成22年
#日本のメーカの風力発電設備というのは珍しい.ここに書けない話もたくさん伺うことができました.シーテックの方,どうも有難うございました.
0 件のコメント:
コメントを投稿