今日,息子と話していて,孫子の話題が出た.息子も「戦わずして勝つ」などと言って,孫子の言葉を知っているような風だったけれど,まだ中学生には孫子は早い.中身を理解できないだろう.
私が孫子を読んだのはいつだったろうか.たぶん高校生で,毎日空手に明け暮れていた頃に違いない.空手は戦って勝つ武術であるけれど,これは兵法から行くと勝ちの下である.兵法から言えば負けるということがあってはならない.したがって,まず廟算し,己が勝つことを確かにしてから戦わなければならない.それでもこれは勝ちの中であり,勝ちの上は「戦わずして勝つ」ことになるわけなのだけれど.
「勝兵は先ず勝ちて、而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて、而る後に勝を求む」
この言葉を初めて知ったとき,これが不敗の戦い方なのかと半分感心し,半分がっかりしたような気がしたのを覚えている.やっぱり正々堂々と戦って勝つことに憧れていたのだろう.
しかし,今ではこの言葉の意味がよくわかる.とにかく生き残ること(国も人も)が大事なのだ.勝つことが目的ではない.国や人を全うすることが目的なのである.負ける戦はしないのである.そのためには,廟算の技術を磨かなければならないのだ.そうなると情報戦ということになるのだろう.
武道の目的の一つは,危険を察知することである.瞬時に危険を察知して,それを避けねばならない.一目で相手の技量を見ぬくことも武術の能力であり,これも兵法のひとつなのかもしれない.その能力を身につけるために,人は精進し,経験を積むのだろう.
孫子は素晴らしい書物だと改めて思う.今読んでも,多くのことを学ぶことができる.
しかし,やはり息子にはまだ早い.
「兵は詭道なり」
この言葉を理解するためには,もう少し人生の酸いも甘いも知ってもらわなければ.
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