人は言葉に縛られる,ということについて,もう少し書きたい。
人は完全な自由思考ということができないようだから,自動思考のために信念とか教条とかにしたがうことによって思考の負荷を減らして毎日を生きているように思える。「そう学校で習ったから」,「テレビや動画で言っていてから」,「あの人がそう言っていたから」という言い訳がそれを示している。
「あの人がそう言っていたから」というのは,著名人や権威ある人の言葉である場合もあるけれど,好きな人,尊敬する人の言葉である場合も多い。それが良い影響を与えるものばかりであればよいのだけれど,人の心を傷つけるものであったり,一生背負っていかなければならない重たいものだったりすることもある。だから私は人にアドバイスしなければならないときには,特に気をつけている。
しかし,思考の負荷を軽くするために,私達はついつい人の言葉に頼ってしまう。最近の「占いブーム」はそうしたことが原因になっているのではないかと,私は思っているのである。
私達はなぜ占い師の言葉を容易に信じてしまうのだろう。それにはすぐ次のような理由が考えつく。
1.そもそも占い師の言葉に頼ろうとして訪ねるから
2.「よく当たる」とか「有名人が通っている」,「テレビに出ている」などの事前情報にに影響されているから
そして,占い師のテクニックがある。
3.「コールドリーディング」によって,自分の関係する事柄について「当てられている」と思わされてから,未来に関わる言葉を与えるから
4.与えられる言葉は,「このままだとだめになる。こうすれば救われる」のように,幾分「脅迫」の要素を含んでいるから
以上のような理由で,占い師の言葉を信じてしまうのだと思う。しかし,この占いのプロセスって「呪い」とほとんど変わらないのではないか,と思いついた。占い師は,ある意味「呪い」を客にかけているのだ。その客は,その後占い師の言葉に縛られて,そして時には恐れを抱いて毎日を生きていかなければならないのだ。
「呪い」と「占い」の違いは,「呪い」は自分の知らないところで,あるいは自分が嫌がるのに,かけられる(言葉で縛られる)ものであり,「占い」は自らが進んで言葉をもらいに(言葉に縛られに)行くものである点である。でも結果は一緒のように見える。
「占い」ブームは,いいかえれば「呪い」ブームではないのだろうか。そんなものが流行る世の中はちょっと心配なような気がする。
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