「NO TIME TO DIE」を観た。それでしばらく007の余韻に浸っている。
今回で15年間5作,ジェームス・ボンドを演じたダニエル・クレイグが引退するのだという。本当に残念に思う。
私はこのD.クレイグのシリーズが大好きだった。それまでの007というのは,どこか漫画的な設定でユーモアがあって,人物の掘り下げ(特に女性)が少し薄いという印象を持っていた。特に,ロジャー・ムーアの時代の作品をよく観ていたからかもしれない。
しかし,D.クレイグが初めてボンドを演じた「カジノ・ロワイヤル」を観て私の007の印象は全く変わってしまった。007は全くのハードボイルドになったのである。
まずストーリーから滑稽さが無くなり話はドライになって,007シリーズをハードボイルドのスパイ映画へと変えた。そして女性の描き方が深くなって物語はぐっと厚みを増した。さらにこれまでの5作に連続性を持たせることによって007の世界に広がりを与えた。つまり,それまでのアクション映画から,心情的にリアリティのある大人の悲劇となったのである。
D.クレイグ演じる007のカッコよさ,それがこの映画シリーズのすべてである。もちろん,ボンドウーマンも(エバ・グリーンとか,レア・セドゥとか,そして今回はアル・デ・アルマスとか),悪役も魅力的だけれど(なんたってカジノロワイヤルのマッツ・ミケルセンが最高),それもD.クレイグのカッコよさがあってこそ。ハードボイルドな007に憧れる。男はやはりカッコよくなければならないなぁ。
しかし,彼が007を演じると決まった時にはあまり期待する声はなかった。むしろ批判的な声が多かった。でも当時の彼は今の彼とは全然違う。人はペルソナをかぶることによって変わるというが,彼は15年にわたりジェームス・ボンドを演じることによって彼自身も変わったのかもしれない。ただ彼も年をとった。映画の中のボンドも年をとった。今回の結末は仕方ないのかもしれない。
次のボンドは誰が演じるのだろうか。D.クレイグのこれまでの実績がかなりのプレッシャーになることは間違いないだろう。
#余談だけれど,客の多くが私よりも高齢であったことに驚いた。007というのはそうした長い歴史があるのだとあらためて思った。しかし,そのせいか,(1) 通路を挟んで隣の人がいびきをかいてずいぶん最初のころから寝込んでいた,(2) 途中でトイレに立つ人が非常に多かった,などのことがあった。自分も165分という長さに,ちょっとトイレが心配だったけれど。
#個人的には,次のボンドはトム・ハーディがいいなぁ
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