池上遼一の劇画を思わせる映画~『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』~
トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦 (2024) を鑑賞。これは,1980年代の九龍城砦を舞台にした香港のアクション映画である。封切時,香港で観客動員数が歴代1位となり,日本でも話題になっていたので気になっていたのだけれど,ようやく最近観ることができた。 まず開始からの映像のトーンを観て思ったのは,まるで漫画のような色使いだということ。背景を含め全体が暗い色調でまとめられており,各登場人物の影が強く描かれている。漫画の中でもこれは「劇画」を思わせる。そう,例えれば池上遼一の描く黒社会の世界。ちょうどストーリーも80年代後半,返還以前の香港の九龍城を舞台としている。雑多とした臭ってきそうなスラム街に美しく力強く生きている人々の物語だ。 ストーリーは単純である。仁義と友情と復讐。少年ジャンプのような男劇画の王道を行く展開である。女性はほとんどストーリーに出てこない。ただただ黒社会の派閥の野望と闘争が男くさく描かれる。これが潔くていい。 なぜこの映画がそれほどの人気作になったのかという点もここにあると思う。魅力的な男たちによる,老人たちと若者たちの新旧交代,力と力による覇権争いの単純なストーリー。魅力はストーリーではなく,そこに描かれている登場人物たちによって醸し出されている。 アクションも漫画チックである。ありえない格闘シーンで思わず苦笑してしまうほど。しかし,この大袈裟ぐあいこそがこの映画の魅力のスパイスになっていて,ストーリーが深刻になりすぎるのを防いでいる。この味付け具合が劇画調の画像にマッチしていて絶妙である。またこの男たちの必死さが女性にも魅力として届いたのではないだろうかと思う。 そして,スラム街ではあったけれど活気にあふれていた九龍城と,闘争と友情にあけくれた黒社会の喪失に,映画監督ソイ・チェンはノスタルジーを感じているのは間違いない。 さて,この映画には続編があるらしい。どちらかといえばB級といえる本作ではあるけれど,もしも公開されたら観に行きたい,そんな風に思わせる男たちの劇画映画なのである。 #余談だが,音楽は「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995年)を手掛けた川井憲次が担当していて,そのせいか,ダンシングヒーローやモニカといった80年代の懐かしい曲が劇中で流れてくるのがうれしかった #もうひとつ題名に...