「羊たちの沈黙」(1991)(監督:ジョナサン・デミ)
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「羊たちの沈黙」を観る。1991年公開とのこと。たぶん観るのは20年ぶりくらい。やっぱりドキドキする。そしてジョディ・フォスターが美しい。気づいたことはいろいろあったのだけど、一つ挙げるとすれば、レクター博士のシーンで流れるゴルトベルク・ピアノ版はツィマーマンの演奏のものだった。
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まず素晴らしかったのはストーリーの進め方.映画を観ているものに,いろいろな不安を味あわせながら,中だるみなくクライマックスまで緊張を味わえる.いや~な雰囲気の中,ずっと何もすっきりさせず,主人公のジョディ・フォスターとともに謎に取り組んでいく.
そして,なんといってもクラリスを演じるジョディ・フォスターが美しい.もちろんそれはアメリカン・ビューティー的なゴージャスなものではなく,田舎から出てきた優等生が自分の嫌な部分に向き合うことを要求されて屈折した表情を浮かべていくときに感じられる美しさだ.と,自分で書いていてもうまく説明できない.ただ,他の男の捜査官たちからも美人ということで奇異の目で見られることに対しての感情や,レクター博士に嫌なことを指摘されて生じる怒りなどが,ジョディ・フォスターの表情にうまく表れていて,そこに強く惹かれた.彼女がアカデミー賞をとったことも納得する.
一方,レクター博士を演じたアンソニー・ホプキンスも言うまでもなく素晴らしい.ただ画面を見てその若さに最初驚いた.でも,知性と狂気を共存させたレクター博士とは,さぞかしこんな感じなのだろうと納得させるだけの雰囲気を漂わせていた.彼もアカデミー賞をとった.それも納得である.
レクター博士は,世界的に見ても最も人気のある悪役の一人で,彼の関連映画・テレビ番組が何本も撮影されている.才能ある精神科医であり,芸術を愛し,ユーモアを理解する男.ただし人肉を食する猟奇殺人鬼.作中,彼はケージに入れられ,監視下に置かれている際にもバッハのゴルトベルク変奏曲を聴いている.あぁ,なんと優雅な殺人鬼.羊たちの沈黙は彼の設定無くしては成り立たない映画なのだ.
途中,クラリスの幼いころの羊を助けられず悲鳴を聞いたというトラウマとなったエピソードが挿入される.この猟奇殺人事件は,クラリスのトラウマ克服といった一面も持っている.
そして最後にレクター博士がクラリスにかけた電話で,羊たちの悲鳴はまだ聞こえるかと尋ねるシーンがある.クラリスは本当に羊たちの悲鳴を聞くことがなくなったのだろうか.私にはまだよくわからない.
#作中のゴルトベルクはピアノ版で,長らくグレン・グールド版かと思っていたが,今回確認してみるとツィマーマンの演奏によるものだった.
評点(★5つが満点)
★★★★★
2015.8.14鑑賞
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