私はアートには関係のない人間だと思っていた。両親は実家にいろいろな絵画や掛け軸を飾っていていたけれども,私自身はほとんどアートに興味がなかったから,家にも部屋にもほとんど絵を飾ることなどなかったのである。
その一方で,海外を含め地方に行くとその場所の美術館を訪れることが多かったことに気づく。美術館で過ごす時間というのは独特で,知らない街でそうした時間を過ごすことは,日常を離れるという行為なのかもしれない。だから美術館に惹かれるのだろう。
とはいうものの,自分で絵や工芸品などの美術品を買うなどということは思いつきもしないし,日常生活にアートなどは不要だった。
最近買った雑誌「ブルータス」に村上春樹氏の記事が出ていて,彼が家に飾っている絵画が紹介されていた。現代の作家のものばかりだったのが意外というか,やっぱりというか,そんな感想をもったのだけれど,それらの絵画をみると私も脳がリラックスすることに気づいた。それらの作品を見ると,頭がい骨の周りの神経が緩むような気がする。少なくともそういう効果がアートにはあるのだと思う。
それでも自分の生活にはどこかで関係がないと思っていたのだけれど,私の生活にもアートが役立つことに気づいた。それはスマホの待ち受け画面である。最近訪れた美術館で撮影した女性の絵画を待ち受けにしてみたところ(もちろん撮影は許可されていた),スマホを手に取って画面に表示された女性の姿を見るたびに脳が緩むのを感じるのである。けだるくクールに見つめる女性,これが存外にいい。そのうちに飽きるかもしれないけど,それまではこれでいこうと思う。
そして,思った。なんだ,アートは生活に役立つじゃないか。
福岡市美術館 KYNEさんの壁画 |
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