2010年10月19日火曜日

鳴弦

いつだったか,NHK FMの番組で,
武満徹作曲の大河ドラマ「源義経」の
テーマ曲が流れていた.

その曲では,和弓の弦を鳴らす音が
オーケストラの奥に含まれているのだという.
どこかの弓道部の人たちに頼んで,
録音したのだとか.
しかし,ラジオから流れる曲からは,
その弦の音を確認することは困難だった.

このエピソードを聞いて
「鳴弦」ということを思い出した.
これは,弓に矢をつがえずに,
弦をはじいて音を出し,
邪気を祓うというものである.
あの太い音を魔が嫌うというのだろうか.
いまでも皇室では行われることがあるとかきく.

こうした退魔の儀式においては,
しばしば音が重要な役割を果たす.
古来,剣がフッとなる音も魔除けになると
言われている.
古事記に出てくる経津主神(ふつぬしのかみ)も
剣の神様で,剣でなにかを断ち切る音から
その名前が生まれたと言うことである.

しかし,フッと鳴るのは何かを切ったときではなく,
剣を振ったときである.
古代,神事に用いた剣には穴が空いているものもある.
これは,剣を振ることによってより大きな音が
発せられる工夫なのだという学説もある.
「フッ」と鳴ることによって邪気を祓うのである.

そう思うと,現在でも邪気や悪い考えを祓うのに,
口から少し強く息を吐き出すことによって,
「フッ」という音を立てるというお呪いがある.
もしかすると源は一緒なのかも知れない.

現在にも,音によって邪気を祓うという
考えは確かに受け継がれているということなのだろう.

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