2010年10月20日水曜日

KSTARのニュースに思う

このブログのアクセス数がこの2-3日,
急激に伸びていたので,
不思議に思って少し調べてみると,
韓国の核融合装置 KSTARが,核融合反応に
成功したというプレスリリースがあって,
それで私が過去に書いた記事が検索に引っからしい.
(過去の記事: 「KSTARのFirst Plasmaに想う」)

私はそのニュースを全然知らなかった.
いや,不勉強である...反省.
でも,KSTARが中性子の発生を確認したということで,
まずはそれは良かったと思う.

KSTARは,当初韓国には核融合について
ほとんど経験が無かったので,
いろいろと他国に技術的な指導を受けて,
立ち上がった装置である.
ずいぶんな苦労があったと聞いている.

技術的にもいろいろ問題があったようで,
(私も前の職場にいたときは,いろいろな話を
聞いたけれど)
10年以上もかかってようやくファーストプラズマの
点火にこぎ着け,2年後の今年中性子を確認したと
いうことなのである.
なにもないところから研究を立ち上げ,
そして数々の困難があっても途中でプロジェクトを断念せず,
継続してきた韓国の研究者,技術者のみなさんには頭が下がる.


韓国の研究者,技術者が頻繁に日本の
核融合研究所やJAEAを訪れ,
いろいろと情報収集をしていたことを思い出す.
国際学会においてもKSTARチームは発表の歯切れが悪く,
いろいろ発表できない話があるのだろうなぁ,と
当時,彼らの立場を思うと,気の毒になるほどであった.



KSTARは強制冷却型の超伝導導体を用いた超伝導コイルを
用いた中型装置であることが特徴である.
結局,これまでで超伝導コイルは定格性能を出せたのだろうか.
核反応を起こすと,コイルの冷媒温度があがるだろうけれど,
高出力,長時間でもコイルの運転は大丈夫なのだろうか.
その辺の話が聞けるようになると面白いかと思う.
(それは,かなりプラズマの性能が上がってからの話だろうけど)

まあ,今回の結果は,プラズマの性能的には
やはり,まだまだなのであり,
また中性子が検出されたといっても
(詳細はわからないが)
重水素プラズマ実験を行えば発生するものだから,
特に重要ではないと思われる.
よって,今後の成果に期待するわけで,
韓国の技術者,研究者のみなさんの努力は
まだまだ続くのだろう.


ただ,長時間放電だったら,日本の九州大学のTRIAMの
5時間以上の記録があるし,
高性能プラズマだったら,JT-60UがITER相当の性能で
28秒間も維持しているし,定常運転で必要な自発電流が
多く流れる状態も8秒間維持できている.
KSTARはトリチウムプラズマ試験はできないし
(ヨーロッパのJET,アメリカのTFTRは経験があるけど),
そのうちにITERの実験が始まるだろうから,
一体,KSTARは何を特徴とする装置として運転していこうと
しているのか,その辺をこれからはっきりする必要があるだろう.


日本では,ITERの幅広いアプローチの一環の
サテライト装置として,ヨーロッパと共同で
JT-60SAという超伝導試験装置が建設中である.
計画では,平成28年に運転開始の予定である.
KSTARがJT-60SAの良きライバルとなるように,
成功を祈っております.





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