今日は本当に寒かった.
しかし,目の前の仕事の山に,心の方がもっと寒い.あぁ,どうしよう...
さて,今日は節分である.節分については過去にもいくつかブログ記事を書いてきた.追儺式の方相氏は今年も見ることはできなかったけれど,各地で行われている鬼やらいの儀式はいつか,いつか目にしたいものである.
そういえば,奈良の橿原市で,鬼の顔が描かれた土器の破片が見つかったとか.平安時代後期(12世紀初め)というから,900年くらい前のものなのか.鬼瓦は7世紀からあったと新聞記事にあったから,日本人は1200年以上も鬼を怖がってきたことになる.
鬼といえば,大阪大学の近くの茨木童子をはじめとして,酒呑童子など有名な話があるけれど,印象強く覚えているのは,「舎人が夜分に笛を吹いていた.あまりの上手さに鬼が手をはたいた.そのとたん,舎人は絶命してしまった」というお話.一体どの古典に収められている話なのか忘れてしまったけれど,そのくらい鬼は恐れられていたのだろう.まるでラヴクラフトの小説のようだ.姿は見えないけれど,この現実世界に強く影響を及ぼす異世界のモノ.疫病や戦乱が続く平安の時代では鬼の存在は確かなものであっただろうけれど,誰もその姿を見たことがないという不安.その不安を祓うために,今日の豆まきの儀式があるのだ.
鬼と言えば,東北の鬼門から来ると言われ,だから丑虎(艮,うしとら)のキメラとなって,角と虎のパンツをはいているのであり,鬼を退治する桃太郎の話では,その反対の方角・南西に位置する戌,申,酉(イヌ,サル,トリ)が大活躍するのである.そこで,なぜ未(ヒツジ)が抜けているのか不思議だという記事も前に書いた.つい最近,その理由ではないかと思われることに気づいた.
なぜヒツジは桃太郎で活躍しないのか.
それは,幕末以前には日本にはヒツジはいなかったからではないかと思いついたのである.これは,村上春樹の小説「羊をめぐる冒険」に出てくる.この小説では謎の羊を求めて主人公たちが北海道に渡り,かずかずの冒険をするのだけれど,その中で羊は明治頃に初めて日本に輸入されてきたという話が出てくる.小説の中のエピソードだけれど,これは本当の話らしい.主人公たちも言っているのだけれど,それまでほとんどの日本人は羊とはどういうものなのか知らなかったのだ.羊は龍などの伝説上の動物と変わりがなかったことになる.桃太郎の成立は,江戸時代よりもずいぶん昔だろうから,羊が登場して鬼退治に活躍するという話は,その頃の人たちには想像できなかったに違いない.だから,桃太郎には羊が登場しないのではないだろうか.ふとそう思いついたのである.これで少し安心した.やれやれ.
桃太郎とヒツジの謎はこれで一つ解けたような気もするけれど,イワシの頭をヒイラギに刺す風習や恵方巻のいわれもいまだ分からない.また来年までに考えてみよう.
そういえば,立春に卵が立つという話もあったっけ.伝承というのは本当に面白いなぁ.
2012年2月3日金曜日
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