私は映画を観るのは大好きなのだけれど,最近は全く映画館に足を運ぶ機会がないから,残念ながらこのブログでは映画の話題が少ない.DVDを借りてみるという時間も無いので,どうも私もつまらない.もっともっと新作,旧作,名作を観たいと思っているのに.
映画好きといっても,これまでの人生でそんなに数を観ているわけでもない.話題作であっても観ていないものも多い.実は「ラピュタ」なんてのも一度も観たことがない.だから「バルス」がなんなのかさえ理解できない...(この話を学生にしたら「非国民」呼ばわりされたし(笑)).今年は百年の記念にあたる「タイタニック」さえ実は観たことない.私はどうも純愛とか,感動ものとかが苦手なのだ.
苦手というよりも,それらの映画を意図的に避けているフシがある.感動ものをみるのであれば,SFやアクション,それかすごく「重たい」映画に惹かれてしまう.心が病んでいる,といわれればその通りなのかもしれないが(笑),単純な純愛ものを観て感動する,というような精神構造には私はなっていないのだろう.
そんな私がうっかりと観てしまい,ボロボロに涙を流してしまった映画がある.それは「火垂るの墓」である.これは凶悪としかいいようがない,本当にひどい映画であると思う.人の涙腺を刺激するためだけに作られたアニメなのではないかと思われる.とにかくこの映画を観て大変つらい気持ちになった.
それはまだ私が大学3年生の頃だったと思う.映画好きだった私は友達を誘って「となりのトトロ」を劇場に観に行った.私が合氣道部主将で,一緒に行ったのは副将だった.これが「火垂るの墓」と二本立てで,はじめは「火垂るの墓」だった.アニメでしか描けないあの悲惨さ.その世界に私と友達はどっぷりと引き込まれてしまったのである.
それは全くの不意打ちだった.楽しいトトロを観に来たはずだったのに,この悲惨さはなんだ,と心の中で繰り返し思っていた.映画が終わって,場内が明るくなっても友達と顔を合わせるのが嫌だった.お互い泣いているのはわかっていたから.いい大人が二人ボロボロと泣いていたのである.結局ひとりずつトイレに行って顔を洗ってきて初めて話すことができた.ふたりとも「こんなひどい映画は無い」と言い合っていた.
二本目の「トトロ」が始まると,テーマ曲にあわせて場内から子供たちの合唱が聞こえた.それで救われた.しかし,その子供たちも「火垂るの墓」を観ていたのだと思うと,少しつらくなった.
ふたりは「トトロ」で救われて,街の飲み屋に出かけていった.「トトロ」がなければどんな風になっていたかわからない.それほど「火垂るの墓」は私の心を傷つけたのである.
以来,「火垂るの墓」は一度も観たことがない.テレビでなんども8月の時期に放映されていたのも知っている.でも決してチャンネルを合わせようとはしなかった.もう二度とあんな悲しい目には遭いたくないのだ.
ときどきスーパーマーケットの売り場で,「サクマドロップ」を見かける.そのたびに胃のあたりがキューっと痛くなる.私はまだ,「火垂るの墓」をひきずっているのだ.
2012年4月6日金曜日
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