パワーエレクトロニクス(以下,パワエレ)という聞き慣れない言葉を一般の方にも理解してもらえるよう,説明をそれなりに一生懸命工夫しているのだけれど,あまりピンと来てもらえない.これだけ身の回りに溢れているのにそれを認識されていないというパワエレはある意味成熟した技術なのかもしれない.
「十分に進んだ科学技術は,魔法と区別がつかない」(アーサー・C・クラークの言葉)
私が学生の頃,「インバータ」といえば一般の人は「エアコン」を思い浮かべたものである.「インバータエアコン」といえば,省エネできるエアコンとしての売り文句で,広告が溢れていたからである.
しかし,現在.
いつものまにかエアコンといえばインバータエアコンであることが当たり前となってしまって,人々の記憶から「インバータ」という言葉は消えつつあるようだ.研究室に見学に来た方に「インバータ」といっても,うなづいてくれるのは40代を過ぎた大人ばかりであるようだ...
インバータエアコンはそうでないエアコン(スイッチをオンするか,オフするかしか制御できない)に対してきめ細かい温度制御ができるので,およそ30%も電力を節約できると言われている.
日本では,出荷される住宅用エアコンはほぼ100%がインバータエアコンであるという.しかし,世界は全く違うのである.アメリカや中国では90~100%がインバータを用いていないエアコンなのだ.つまり,オンオフ制御しかできないエアコンが世界の常識なのである.なんと日本は進んでいることか...
日本に4000万軒,住戸があるとする.そのうち半分の住戸に(実際はそれ以上だけれど)一台ずつエアコンがあるとする.ということは2000万台のエアコンが稼働していることになる.その一台一台がわずか5Wずつ電力を削減できたとするだけでも100万kW,すなわち原発1基分の電力が節約できることになるのである.
非インバータエアコンがインバータエアコンの100 / (100-30) = 1.4倍の電力を消費するとすると,インバータエアコンの平均電力を2.5kWと仮定すると,非インバータエアコンは3.5kWの電力消費となる.すなわち1kWの差が生じる.これが中国やアメリカ,全世界で出荷されているエアコンの台数倍すると,インバータエアコンにするだけで,一体原発何基分の電力が節約できることになるのだろうか.これから世界でインバータエアコンが売れるようになるに違いない(現在は,価格の安い非インバータエアコンが売れているけれど).
ということで,パワエレ技術は今後も世界の省エネに大きく貢献できるのである.
でも,知っている人が少ないんだよなぁ.もっと宣伝せねば.
#本当は,使用電力量について議論すべきなんです.今回はわかりやすく電力で話してみました.だからちょっと不正確です...
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