講演会やセミナーで集まった福祉関係のボランティアの人たちに,「皆さんの町でどなたかが「助けてください」と手を挙げたら,助けようとする人はどれくらいいますか?」と尋ねてみると,だいたいどこでも90%以上の方々が手を挙げるのだという.
一方,「もしも皆さんが誰かの助けが必要な状況になったとして,「助けてください」と手を挙げることができる人は?」と尋ねると,手を挙げる人は10%にも満たないのだという.
この話には私も納得がいく.多くの人は他人に迷惑をかけるのが嫌だと思っているから,このような結果になるのは当然のような気もする.しかし,このように助ける側と助けられる側の非対称性が存在していることが問題なのだ.
福祉の観点からいけば,助けを求める人,助ける人,どちらも同等でなければならない.そうでなければ,助けあう社会などは実現できないだろう.すなわち,これからの社会では,うまく「助けてもらう力」が大事なのだ.
この状況は,仕事や研究室の人間関係にもあてはまると思う.誰かに助けてもらえることも,その人の能力なのである.研究で行き詰まって誰にも聞けない,困っていますと手も挙げることができない,そんな状況では,八方ふさがり,ただただ自分が疲弊していくだけである.
でももしもそんなとき,「困っています,助けてください」といえる勇気があったらどうだろう?恥ずかしくて,やはりそんなこと言えないだろうか.でも逆に,自分の目の前で「助けてください」と手を挙げる人がいたら,つべこべ言わずに喜んで手を差し伸べるのではないだろうか.先に述べた話の90%と10%の非対称を思いだそう.そう思えば,「助けてください」と手を挙げることへのハードルも少しは低くなるのではないだろうか.勇気をもって,人に相談しよう.
みんなが喜んで手を貸してくれる人がいたら,それはひとつの才能である.研究室でも仕事の現場でもそうした力もつけていったらよいのではないかと思うのである.ひとりで悩んでいないで,すぐに相談してみたらいい.ひとりの行き詰まりは,結局みんなの行き詰まりになる.みんながひとりを助けることが,全員の前進につながるのである.
自分の実力を向上するのももちろん大切だけれど,こうして必要なときにみんなに頼る能力も,そしてみんなが自分を助けてくれる能力も,生きていく上でたいへん大切のような気がする.福祉の現場でもそうだけれど,研究室でも不可欠なのかもしれない.
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