2014年4月16日水曜日

「なぞの転校生」について:2.出演者が素晴らしい

なぞの転校生」の第2弾.今回は出演者について.

まずは,なぞの転校生 山沢典夫役の本郷奏多さん.彼の精妙な演技なしにはこの番組の成功はなかった.手放しで大絶賛.ネタバレになるけれど,転校生の彼はアンドロイドなのだ.そしてアンドロイドゆえのつらさ,苦しみを味わうことになる.それを表現する彼の演技が素晴らしかった.アンドロイドなのでモノを食べない,肺がないので吹奏楽はできない(しかし,ピアノは弾く).そしてどんなに悲しくても涙を流せない.人間とは違う少し不自然なしぐさ,その一方で人間よりも人間らしい(でもアンドロイドの)感情の表出.すっかり彼のファンになってしまった.最終回,彼が長い長いセリフは,このドラマの一つのテーマについて語っていて,きっと多くの人が長い間覚えていることだろう.

次に,主人公がもう二人.岩田宏一役の中村蒼さんと香川みどり桜井美南さん.
中村君は,普通の高校生を過不足無く演じていた.彼は若手俳優として実力派なのだろう.さわやかかつ,のびやか,それでいて平凡.そんなどこにでもいる高校生が,ある日突然異次元の出来事に巻き込まれていく,その不安がよく出ていたと思う.また,桜井さんもまた普通で素晴らしい.どこのクラスにでもいる素敵な女の子を演じていて,青春時代を思い出しそうになる(そんな青春なかったけれど).彼女はなんと新人ということらしいのだけれど,今後の活躍に期待したい.

この二人のどこにでもあるような高校生活が,かけがえのないもののように見える.そんな風にドラマは作られている.これは,他の世界からやってきた山沢典夫他の人たちからの視点であって,観ている私たちも自分たちの生活のかけがえのなさに気づくようになっている.花の美しさや,青空の美しさ,学校という社会の複雑さ.そんな事柄がとても魅力的に感じられてくる.

そして,異次元世界の王女を演じた杉咲花さん.
物語の後半は,彼女の演技が特に目を引きつけた.なんという演技力だろう.彼女が表現した,世界を失うものの悲しみは,こちらの胸を熱くさせた.彼女の登場がドラマを引き締め,そしてクライマックスへと導いてくれた.

これらの若手俳優のみなさんが本当に素晴らしかった(椎名琴音さん,樋井明日香さんもいい感じ).
そして,その他にも素敵な,そして実力派の俳優がしっかりと脇を固めていて,たいへんに魅力的だ.

高野浩幸さん.NHKのドラマで主人公の「岩田宏一」を演じていた.彼が今回の「岩田宏一」の父親役だったのだ.そして最終回.私たちの世代にはたまらない幕引きを演じてくれた.ああいう結末でよかった.どうも脚本家の岩井さんは,最後の最後で,ドラマの結末を今回のように書き換えてしまったらしいのだけれど,これはこれでひとつの素敵な物語の終わりだった.高野さんが出演していて良かった.

私が一番かっこいいと思ったのは,ミッキーカーチスさん演じる隣の少しボケている老人(中野裕太さん演じるアゼガミ様も,佐藤乃莉さん演じるスズシロ様も,かっこよかったけれど).彼が山沢典夫に操られているときのかっこよさといったら,このうえない.特に第2話のエンディングで彼が星空の素晴らしさに腕を開いて野原を走り回るところなどは,このドラマの中でも最も印象的な場面のひとつだろう.

どの俳優さんもキャスティングがハマっていて,誰もがこのドラマの魅力の一端を担っていた.どの登場人物にもそれぞれの物語が感じられた.
...それなのに,なぜこのドラマは全然話題にならないのだろう?

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