2023年5月13日土曜日

シン・仮面ライダー

「シン・仮面ライダー」はほんとに良かった。演出・脚本は庵野"節"全開だったけれど,キャストは素晴らしかった。

まず作品。これまでの「シン・ゴジラ」,「シン・ウルトラマン」はどちらかというとテーマがドライで人情的な湿っぽさはなかった。しかし今回は仮面ライダーということで,もともとの作品テーマである「改造人間であることの悲しみ」や「人間の絶望」,「人との別れ」などが描かれていて,ちょっと胸が痛くなるようなシーンがいくつかあった。いうなれば「シン・エヴァンゲリオン」に近いのかもしれない。

「シン・エヴァンゲリオン」との親近性といえば,作品に出てくる「ハビタット計画」というのは,魂(プラーナ?)だけが存在する世界に人類を移行させるというもので,これは「エヴァ」の「人類補完計画」を思わせるし,主人公 本郷猛の優しさ,弱さは碇シンジの性格に,緑川ルリ子のクールさは綾波レイの性格に,重ね合わせることができるかもしれない。つまり,「シン・ライダー」は「シン・ゴジ」や「シン・マン」に比べてずっと庵野監督のパーソナリティが反映された作品なのだろう。

アクション演出については,NHKのドキュメンタリーもあっていろいろと意見が分かれるというのは十分理解できるけれど,私は十分堪能した。最初のクモオーグ戦でショッカー戦闘員を血フブキを浴びながら倒していくところは,オリジナルの第1話を思いださせるし,私もワイヤーアクションには違和感を感じる方なので,今回くらいの戦闘アクションがちょうどよかった。仮面ライダーにマーベル風の戦闘は似合わないと思う。むしろもっとオリジナルに近いオドロオドロした「怪奇」的なシーンが欲しかった。

作品にはいろいろ意見があるのは理解できるのだけれど,キャストの良さは多くの人が認めるところだろうと思う。まずは,主人公の池松壮亮。暴力に悩む弱さとそれを乗り越える賢明さ,そして誠実さを感じさせる本郷猛であった。アクションもほぼ自分で行っているとのことで(最初の作品発表のときには足を怪我して出てきたのを覚えている),今回の本郷猛を手探りで追い求めていったことがよくわかった。

次に,浜辺美波。彼女が演じる緑川ルリ子がいなければ,この映画の魅力は半減しただろう。それほどに,かっこよく,かわいい。彼女はいつもクールに「用意周到」なのだけれど,ところどころおかしい行動をして,それが可愛い。例えば,敵にに襲われたときもすぐには敵に対応せず,本郷猛が淹れたコーヒー(?)を飲み続けるところや,コウモリオーグ(だったかな)のときには,「ところがギッチョン」なんて古めかしいオヤジギャグが入るところなんて,そのギャップに萌える。強い女性は魅力的なのだ。

柄本佑が演じる一文字隼人は,とにかくカッコいい役だった。孤独を愛する好青年を演じていて,この映画の清涼剤となっている。彼がいなければこの映画はもっと暗く,陰鬱としたものになっていただろう。彼の爽やかさがこの映画を(そして本郷猛と緑川ルリ子を)救っている。私は,このかっこよさになぜか「グッド・ウィル・ハンティング」のベン・アフレックを思い出した。

そして思いの外良かったのが,ハチオーグ役の西野七瀬。彼女は期待以上の素敵な悪役ぶりで,正直見直した(すみません)。殺陣も素晴らしく,今後もこうした役をやってほしい...

キャストはみな素晴らしく,満足だった。そしてサイクロンを始めとするバイクもすべてかっこよかった。この映画を見て「バイク乗り」に憧れる人も少なくないのではないだろうか。一文字隼人の「バイクはいい。孤独を楽しめる。だから好きだ」(うろ覚え)のセリフが心に残る。

正直にいって,この映画はそんなに観客が入らないと思う。しかし,続編があるならぜひ観たい。今は評価が低くとも,将来再評価される作品だと思う。どうか東映が赤字にならず,庵野監督に次作の依頼ができますようにと祈るばかりである。

#GWにようやく観ることができた。上映が終わる前に間に合ってよかった。地元ではアカデミー賞受賞作の「エブエブ」があっという間にレイトショーだけになってしまい,とうとう見逃してしまったのだ

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