この数年,角由紀子という女性の活躍がオカルト界隈では話題となっている。彼女は不思議系サイトの「TOKANA」を立ち上げて編集長を務め,辞めたのちはYoutuberとして華々しい活躍をされている。そんな彼女の単独初著作が出たので読んでみた。
「引き寄せの法則を全部やったら,効きすぎて人生バグりかけた話」(角由紀子,扶桑社)
たいへん興味深い内容であった。「引き寄せの法則」というのはスピリチャルの世界ではもう10年近く(?)流行っている概念で,ポジティブな思考がリアルな世界に影響を及ぼし現実化するというものであるが,私がこれを信じているかといわれると結構否定的である。いわゆる「思考のバイアス」が働いて,なにか良いことが少しでも起こればそれは,「引き寄せ」が働いたのだ,と思ってしまうことが基本的な構造だと思っている。まぁ,現実世界の(村上春樹が言っている)小確幸に注目し,毎日を精神的に幸せに過ごすことは大変良いことだと思うけれど,実際の良いことにあう確率が高くなるとは簡単には信じられない。もちろんネガティブな考えをもつよりもポジティブな考えに基づいて行動したほうが成功の確率は高くなることは,そのとおりだと思うけれど。
さて,本書である。タイトルには「引き寄せの法則」とあるけれどあまりそんな印象は受けなかった。実際の内容は意識の変性,変革を起こすといわれているスピリチャルな方法を,実際に著者が試してみた体験談となっている。これが生々しくてたいへんに面白かった。著者が試したものは,
- シータヒーリング
- 倍音セラピー
- タマエミチトレーニング
- ヘミシンク
- ブレインマシン「KASHIMA」
- アイソレーションタンク
- アヤワスカ儀式
- ブッダ直伝瞑想
である。私は常々,人間の意識というものは容易に変性意識に導かれて変革されるものだと思っていて,自己啓発セミナーなどによる暗示・催眠・洗脳,薬物,光と音の刺激などの手段がそれを実現するものだと思っているのだけれど,どれも怖くて手を出せない。それを上記の多数の項目を試してみてその体験談をまとめているこの著書は大変に興味深い。彼女はこれらの方法を試すことによって幽体離脱やハイヤーセルフや菩薩様にあうことなど,種々なオカルト体験をしているのである。
特に南米の奥地までいって,現地の霊能者等に導かれておこなったアヤワスカ儀式のルポは素晴らしい。アヤワスカというのは幻覚を引き起こす植物で,その茶を飲んで儀式を行う。詳細は本書を読んでもらえばよいが,多くの人格が現れてそれを俯瞰する意識の存在を実感したのだという。たぶん幻覚剤によって深層意識までが表出しいろいろな感覚を体験したということになるのだろうが,私はそれを体験しようとしてアマゾンにまで行こうなどとはとても怖くて思えない。著者の勇気を尊敬するとともに,体験したことは非常に貴重であると思う。
最終的にスピリチュアルな手段に頼らず,原始仏教的な瞑想をして変性意識にならずに丁寧な生活を心掛けるような心持ちになって,沼っていたスピリチュアルからデトックスした著者のスピリチュアル旅の現時点が興味深い(今はまた別の脳のトレーニングを試しているようだけれど)。
意識に働きかける手段(スピリチュアルな体験)を求めている人には,よいガイドになるのではないだろうかと,本書を推したい。
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