こうした提言を短期間でまとめて公表できるところに,
学会の力を感じる.
化学工学会「大震災による東日本の電力不足に関する緊急提言」
http://www.scej.org/content/view/1160/27/
この提言にもあるとおり,夏に向けての節電は,
電力消費の時間シフトが鍵になると私も思う.
今回の節電は総量規制ではなく,
ピークとなる時間帯の電力需要を低減できればよいので,
石油ショック時に行われた節電よりも,少しはマシである.
まずは夜間に照明を消せ,と言われることはないだろう.
現在,産業界においてピーク時電力の25%の低減に向けた
検討が進めれらていると報道されている.
夏場は,9:00~16:00程度がずっと電力需要が高いから,
昼間のピーク時間をシフトした操業,
あるいは夜間の操業などがまず検討されるだろう.
また,夏季長期休暇も視野に入れられていると思われる.
しかし,産業界で25%の低減ができたとしても,
産業界の電力消費の割合は全体の4割程度だから
全体の電力消費からいくと10%程度低減されるに過ぎない.
全体で6000万kWのうちの1000万kWだから1/6,
すなわち17%程度は低減しなければならないことになる.
あと7%は,民生と運輸関係でなんとかするしかない.
運輸は,昼間の間引き運転で対応するしかないだろう.
問題は,民生である.
私たちの家庭やオフィスなどでの節電である.
ご存じの通り,日本の省エネ技術は世界のトップレベルにあって,
だからこそ逆に,これ以上省エネをしろ,といわれても
なかなか省エネできないのである.
また,省エネ技術の発展によって,実際に家庭用の
電力消費量は減少してきただろうか?
答えは,全く逆である.
資料によれば
(http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_04/index.html)
2009年の電力消費量は1985年の1.3倍以上にもなっている.
なぜだろうか.
これは,私たちが電気機器を多く使うようになったからに
他ならない.
確かにテレビや冷蔵庫の消費電力は低減されたけれど
1985年に比べ,テレビの大きさはどれだけ大きくなっただろうか.
また冷蔵庫の容量はどうだろう.
お湯を沸かすのにも電気を使っていないだろうか.
電気はクリーンで扱いやすいので,どんどんその用途が
広がってきたのである.
(そして契約電力も増大し,60A,70Aでも驚かなくなった)
心配なのは高層ビルのオフィスである.
高層ビルには,たくさんの人たちが活動していて,
それに伴う発熱量は相当なものである.
こうしたビルは,空調無しでは
成り立たないのではないだろうか.
特に,夏場は.
せいぜい設定温度を上げるくらいしか手が無いだろう.
いったいどれだけオフィスががんばれるのか.
昼間オフィスで働けなくなったら,
どれだけ経済活動に影響がでるのだろうか?
しかし,とにかくやるしかないのである.
今年の夏では,準備時間も短く,
発電電力の増強も限られるだろう.
節電で乗り越えるしかない.
私は,精神論が大嫌いなので,
(根拠も無しに,できるとかいうのが嫌い)
それらに頼らず,節電できる社会システムを
設計するのが必要だと思うのだけれど,
この夏ばかりは人々の良心に頼らざるを
得ないのかもしれないと思うのである.
#意外に電力消費で多いのが,
サーバなどの情報機器である.現在,全国の電力消費量に占める割合は5%にもなっている.
(2025年には20%にもなるとNEDOは言っている)
#たとえば,昼間はTV放映をしないとかすれば,
TVの消費電力はぐっと減るだろう.
(そしてテレビ局はつぶれるだろう)
#電力自由化が行われた際に,
あちらこちらで,それなりの大きさの自家発電設備が
導入されたはずである.
この数年は燃料費の高騰により,電力会社から
電力を購入した方が安かったので,
休ませている設備が多かったと思うけれど,
それらを復旧させることは当然考えられているのだろう.
しかし,それでも発電量は少ないのだろうなぁ.
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