2011年4月7日木曜日

自然エネルギーへの過大な期待は逆効果.自分で手を動かして計算してみよう.

最近のTwitterとかのつぶやきのトレンドを見ていると,
自然エネルギーへの期待が大きいことがよくわかる.

原子力発電所は悪くないとは思うけれど,
たぶんこの先,日本では作ることは難しいだろうと思うし,
私自身の研究が,分散電源にも強く関係しているから,
この興味の高まりは嬉しいことではあるのだけれど,
Tweetのやりとりを見ていると,どうも違和感を覚える.

風力や太陽光だけではなく,
地熱や太陽熱,潮力,波力,などなど,
いろいろな発電方法が話題に上っているのは
いいけれど,なぜそれが普及していないのか,
真面目に考えている人が少ないように思う.

これだけインターネット全盛の時代なのだから,
ちょっと調べればわかるはずなのに.
その「ちょっと」をおろそかにしている人が多いのでは
ないだろうか.

そうした人たちに多いのが,
政府や電力会社の陰謀論である.
電力会社の既得権益を守るために,
そうした新エネの事業をわざと無視しているのだという.
日本はそうした陰謀によって動かされているのだと
本当に思っているのだろうか?
NEDOなどの政府の活動を知っているのだろうか.

確かに電力会社は多分に閉鎖的で保守的であることは
多くの人が認めるところだけれど,
それでも利益を追求する企業であり,
市場原理によってある程度影響を受けるのである.
(一方で私は,電力は社会共通資本だから市場原理で価格等が
決まっても困るとは思うのだけれど)

本当に経済的に成立し,そこに
大きな利潤が生まれるのであれば,
まずは電力会社がその事業に手を出すはずなのである.

そして,他企業だって参入しているはずなのである.
制度・規制の壁だって,社会に訴えれば,
なんとかなるのではないだろうか.
電力の自由化は確かに遅々として進んでいないけれど,
本当にそこに利潤があるのであれば,
働きかけによって,制度は変わるものではないだろうか.

では,なぜ自然エネルギー発電の普及が
思うように実現されていないのか.
そんなことは,ネットを検索すればすぐにわかる.
技術的な問題も山積しているし,
コスト的な問題が全然解決されていない.
(まぁ,後者が大きく足かせになっていることは
間違いないけど)
その調査・確認の手順を怠っている人が多いと思う.
ちょっと手計算をすればわかるはずなのに.

いや,具体的な課題を調べる前に,
そんなにいい技術であれば,
なぜそれが普及していないのか,という
当たり前の疑問を考えないのだろうか.


海外ではこういうレポートがあったが,
日本では無視されている,などという話も
よくつぶやかれている.
海外だからといって,まずそのソースは
確かだと信頼しても大丈夫なのだろうか.
メディアはその特性上,一般的なものとは
異なるものを記事に取り上げやすい.
そのバイアスを考慮しているだろうか.

日本においてでも,どこかの社会ステイタスをもっている人が
発言したからといって,それを頭から信じて良いものか.
自分の頭で考えてみることも必要なのではないだろうか.
誰かを悪者にすることで,考えることを止めていないだろうか.

そういう意味で,テレビの解説に呼ばれた
大学の先生方がああいう慎重な話しぶりになるのは
仕方がないと思うし,だからこそ信頼がおけると
私は思っている.

信頼すべきものは,学会誌などに査読を経た
論文であるような話が良い.
(しかし,学会誌に掲載されたからといって,
その話がその学会で認められたわけでもないことも
注意しなければならない.
いろいろ議論の対象になっている論文もあるし)

次に政府や公共機関が発表しているデータが
やはり信頼性が高い.
多くの人の目に触れるので,結果がおかしければ,
異議をとなえたり,検証をしたりする人が出てくるから.

そうした論文やデータを,
陰謀によるでっち上げだといって,
それこそ無視して信じず,門外漢の記者の取材を信じる,
という方が,少し変なのではないだろうか.
(もちろん,記者の取材の中にも
貴重な事実を指摘するものも少なくないけれど)

こうした状況を見ていると,
人はなぜオカルトを信じるか,という話を思い出す.
オカルトで語られる話は,実は人々の願望が
そこに反映されている.
「あったらいいな」というバイアスのために
(たとえば,死後の世界があるとか,
死者に再び会えるとかという願望)
いつもは常識によって冷静に判断できる人たちが,
あっさりとオカルトを信じてしまう.
同様の心理が,この自然エネルギーの議論に
働いているような気がするのである.
また,陰謀論は都市伝説に他ならないし.

とにかく,自然エネルギーに関わる技術は
今後も注力して研究開発が進められるべきで,
また世界のエネルギーもそちらの方向に進んでいくことは
たぶん間違いないと思うけれど,
すべての技術が花開くというわけではない.
どの技術が生き残るかは,市場(と運)が
決めてくれるはずである.
経済的に成り立たない技術は,いずれにしろ
ついえていく運命にあるのである.
(まぁ,原子力は経済的に成り立っていても,
終わりそうだけれど...)

太陽光発電が原子力発電よりもコストが低くなったとの計算が
雑誌に掲載されているとの話をTwitterで教えてもらった.
経済的な計算は本当に難しいし(前提条件で大きく変わるし),
私はそちらの専門家ではないので,どうこういえないけれど,
もしも本当にそうであるならば,今後太陽光発電が普及する,
ということ,それだけでいいのではないだろうか,と思う.
(もちろん技術的な課題は解決されなければならないが)

今後も数多くの多様な技術が研究され,
市場などによって淘汰されていく.
本当に有望な技術がちゃんと生き残る.
そこは安心していて大丈夫ではないかと思う.

むしろ現在の人々の過剰な期待によって,
技術がつぶされることを
危惧しなければならないだろう.
日本のメディア,人々は,熱しやすく冷めやすい.
ブームが去ったあとの,あの冷淡さは恐ろしく,
これまで応援されていたものが,あっという間に
逆に悪者にしたてられることも多々あるからである.
私たちは,少し大人になって,
技術の発展を長い目で見ていかなければならないと思う.

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