2013年7月10日水曜日

清濁併せ呑む

池波正太郎の「剣客商売」が好きである.
一応,全巻本棚に揃っている.しかし,最近は目を通すことが少ないので,いろいろエピソードは忘れてはいるのだが.

なにが好きかと問われると,なんといっても主人公である老剣客 秋山小兵衛の魅力に尽きると思う.無外流の達人であるけれど,単なる清廉潔白な剣士ではない.清濁併せのむその度量の広さに憧れるのだ.

人生少しでも長く生きていれば,清く正しいことばかりでは生きていけないことは身にしみてわかるものである.善も悪も世間に溢れているのだ.それを片側ばかり見ていても生きてはいけまい.善と悪との中間に私たちの生活は存在するのである.

以前,河合隼雄のインタビューで,こんな意味の話があった(詳細うろ覚えですが).

「自動車の運転でも,交通規則を徹底して守る車の周囲では事故ばかりが起こる.
人間の場合も同じだ.
正しいことばかりを,ひとりよがりに自己満足で行っていても,周囲の人が迷惑する.
環境に順応して生きるということは,正しいことを行うばかりではうまくいかないのだ」

完全に善である人間は存在せず,みな善と悪との狭間で生きている.
だからこそ,どちらも併せて呑み込むだけの度量が欲しい.
もちろん,悪は悪として,毒は毒として対応する.
しかし,その毒だって時には薬になるだろう.

生前,父は私に「若くして枯れるな」と言った.その言葉は今も覚えている.
私の理想が秋山小兵衛であると知ったならば,父も笑ってくれるだろう.

#決して,秋山小兵衛が美食家で,若いお嫁さんをもらったから憧れているわけではありません(笑)

<私が好きなものシリーズの続きです>

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