2022年6月12日日曜日

未来への10カウント,木村拓哉への期待

 50歳を過ぎてから私の中でこの数年,木村拓哉,キムタクの株が上がり続けている。彼ももう50歳になろうとしているけれど,私にとって彼の魅力は増し続けているのだ。

私はヒーローの晩年の生き方に強く惹かれるところがある。たとえば野球の巨人軍のスター選手たち。期待されてはいたものの不本意な成績のなかでどのように生きていくのか。どうやって選手生活に幕を下ろすのか。晩年の過ごし方こそ彼らの(才能ではなく)性格が出る。

もちろんスポーツ選手だけでなく往年の芸能界のスターたちの晩年にも興味がある。たとえばクリント・イーストウッドやマイケル J フォックス。順調な人生であっても,難病とともにある困難な人生であっても,彼らは彼らの人生の中における役を全力で果たそうとしている。日本でも,石原裕次郎や渡哲也,あるいは原田芳雄,松田優作。ヒーローたちがどうやって人生の晩年を過ごすのか。そんなことが気になるような年齢に私もなったということだろう。

そんな私が,今後の大成を強く期待しているのがキムタクなのである。彼がもし普通のスターだったらたいへんに難しい立ち位置にいたのだと思う。彼のパーソナリティが強く出すぎて,あるいは私達がそのイメージを強くモチすぎたために,彼が演じる役の範囲が狭くなる恐れがあった。

しかし,彼は彼独特のブランディングによって,つきぬけた存在になりつつある。往年の石原裕次郎,高倉健,三船敏郎,勝新太郎などに連なる,存在こそが魅力ある役者の系列に入りつつあるのではないだろうか。

今期の彼主演のドラマ「未来への10カウント」を観た。正直,今の時代にあまり流行らない高校が舞台の学園ドラマだったので驚いた。フォーカスされているのはキムタク演じる主人公の再生の物語なのだけれども,ボクシング部の学生たちが抱えている悩み,恋愛,いじめなどの問題にそれぞれスポットが当てられて,今時めずらしい青春ドラマでもあった。

ただし,現在のドラマで視聴率が良いものは,だいたいドギツい人間関係や不条理な悲劇,陰惨な猟奇事件などの展開があったり,真犯人探しなどの謎解きがあったりするのに対し,本作はあまりにもストレートな学園ドラマだったので,視聴率が上がらないのではないかと心配し,実際そうであったみたいだけれど,私は悪人が出てこないこのドラマが結構好きであった。キムタクがこの作品を選んだというところに彼の考えが現れているような気がする。

ドラマのストーリーはひねくれたものではなかったけれど,彼を囲む登場人物たちを演じる俳優のみなさんがたいへんに魅力的で,単調になりがちな展開に色を与えていた。

特に,満島ひかりと村上虹郎の存在が大きかったように思う。満島ひかりのあの華やかさがなければ,特に前半の男ばかりの地味な展開に耐えられなかっただろうし,村上虹郎が登場してからは物語が引き締まって,このドラマでなにを描こうとするのか輪郭がはっきりしてきたように思う。もちろん,内田有紀や安田顕,生瀬勝久,柄本明などがしっかり周りを固めていたからこそ,ストーリーに集中できるようになったわけだけれど,上記の2名は物語に不可欠なスパイスであった。両名ともに映画やドラマにひっぱりだこなのがよく分かる。

自暴自棄であった主人公はボクシング部で出会った人たちによって再生を遂げていくわけだけれど,改めて書くけど,キムタクがこんな未来に希望が持てるような物語のドラマを選んだことの意味を私は思う。SMAP解散後,彼もいろいろと言われたけれど,自分の役割を淡々と果たしていく彼が私にはたいへんに魅力的に思えるのである。かっこよくトシをとっていく手本かな。今後彼がどのようなドラマ・映画に出演していくのか,ますます気になるのである。

#次回作はキムタクがキムタクである,ずば抜けてカッコいい役もいいなぁ。ただ「信長」には少し不安を感じている...彼も50歳ということで,この役を選んだのだろうけれど…


0 件のコメント:

コメントを投稿

旧新潟税関庁舎

 先日訪れた「 旧第四銀行住吉町支店 」がある新潟市歴史博物館の敷地には、 旧新潟税関庁舎 がある。こちらも国指定重要文化財となっていて、無料で公開されている。 ペリー来航ののち鎖国が解かれ、日本では5つの港が開港された。横浜、函館、長崎、神戸、そして新潟なのである。建物の解説を...