「シン・ウルトラマン」を観た。
私はたいへん楽しむことができたのだけれど,世間では評価が割れているらしい。私は,初代ウルトラマンの世代ではないけれど(「帰ってきたウルトラマン」の世代),やはりあの時代のウルトラマンのシリーズには惹かれるものが今でもあって,今回の作品にある数々のリスペクト・オマージュには心浮き立つところがあった。
ただし,悪評価をする人の気持ちも分からないではない。昭和の特撮感が強くて,アヴェンジャーズのCGを見慣れている人から見ると本作のCGはチープに見えるし(制作者はそれを狙っていると思うのだけれど),ストーリーが雑なところも結構目につく。しかし,それを考慮しても,そしてこれまでウルトラマンを知らかった人にとっても,及第点をあげられる作品なのではないかと私は思う。
今回具体的に書きたいことは2つ。
ひとつは,ウルトラマンになる男を演じる斎藤工と,メフィラス星人を演じる山本耕史の演技がたいへんに素敵だということである。この二人は結局宇宙人なのだけれど,地球人のことを守ろうとするウルトラマンである斎藤工は,少し人間を外れている感じ,まさに宇宙人的な雰囲気を出している(たぶん瞬きしなかったんじゃないかな)。一方,地球を手中に収めようとするメフィラス星人を演じる山本耕史は,とても人間臭い感じがする。だからこそ胡散臭い。それをうまく演じている。その対比が面白い。私達に近く感じる方こそ敵という構図がよく出ていると思った。
もうひとつ書きたいことは,私が個人的にオススメしたい,最初の怪獣(映画では別の漢字だけど)が変電所を襲うシーンについてである。鉄塔や変電設備がやけにリアルで,壊されるシーンにドキドキしてしまった。私達の日常が破壊されていくということを実感する。脚本の庵野氏,監督の樋口氏のコンビといえば「シン・ゴジラ」もだけれど,「シン・ゴジラ」の中でも,電線と電柱が揺れて破壊され,停電が発生するシーンがリアルっぽく描かれていた。
どうもこの二人は電力設備がとても好きらしい。今回は樋口氏がこうしたマニアックな演出をしたのだろうし,庵野氏も東京で見た「庵野秀明展」でエヴァの鉄塔,電線などの縮小モデルが展示されていて電気大好きなのがよく分かる。変電所内の送受電設備が火花を散らしながら破壊されていくさまに私は妙に興奮してしまった。このシーンだけでも本作を観る価値の20%ぐらいはある(個人的に)。
ただ映画を最後まで観て,私が一番印象に残ったのはヒロインを演じた長澤まさみの元気の良さである。コンプライアンス的に演出がいろいろ言われているようだけれど(私も幾分思ったけれど),長澤まさみはやっぱり魅力的であり,彼女が演じるヒロインが私達の希望を表しているのだと思う。エンドロールに流れる米津玄師の曲がそれを裏付けしてくれる。続編はなさそうだけれど,また観たい映画である。
評価は,星5点満点で4点。
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