今年の大河ドラマも終わってしまった。
「光る君へ」
正直,放映が始まるまであまり期待していなかった。なぜなら,まず設定が雅な平安時代である。主人公が紫式部だという。あの平安時代になにを観て盛り上がるのか,疑問があった。そして「大河の華」である合戦シーンがないということも不安要素であった。
しかし,その期待は良い方に裏切られ,たいへん面白かった。少しは緊張感が途切れるかと思ったけれど,個人的にはずっと集中力をもって番組をみることができた。内容は主に,恋愛と政権闘争。特に政治に関わる権力争いが思いのほか面白く,「鎌倉殿の13人」の小栗旬ほどではないにしても,柄本佑演じる藤原道長が政治のために清濁を併せ飲んでいかねばならず,それを一年かけて描いていくのが大河ドラマの醍醐味であろう。
そうなのだ,大河ドラマでは一年をかけて人が変容していく姿が描かれる。それを視聴者である私たちは,共感あるいは反感をもって観察し続けていくのである。1クォーターの番組では得難い面白さである。
藤原道長だけでなく紫式部もそうである。ふたりは大人の恋愛,というかソウルメイト(あまり好きではない言葉だけれど,”深い絆でつながった同志”という意味で)の関係を続け,成長とともに変化し続けた。作品では紫式部は最後いったい何歳だったのだろうか?あっという間の生涯だった。清少納言や赤染衛門,和泉式部などドラマならではの設定,エピソードも面白く取り入れられており,飽きることなく観ることができた。そして,黒木華,瀧内公美らの愛憎劇にも打ち震えた。大石静の脚本が良かったということなのだろう。
そしてぜひ特筆したいのが劇中の音楽である。なんてシンフォニックな,いや協奏曲的なテイストの劇伴だっただろう。いずれの音楽もなにかの協奏曲の一部が抜き出されたかのように聞こえた。時にちょっと音楽が印象的すぎる気もしたけれど,本作品で音楽の素晴らしさは特に印象に残った。
結局総括すると,今年の大河ドラマもたいへん面白く,不安は杞憂であった。さすが大河ドラマ。そうそう失敗作はない。
来年の「べらぼう」に対しても実は相当な不安を持っている。あの時代のメディア王の話を私は見続けることができるだろうか。。。脚本は森下佳子。実は彼女の作品はほとんど観たことがないのだけれど。。。
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