2024年12月1日日曜日

ヒルコ,そして諸星大二郎「妖怪ハンター」

 今,テレビドラマの「全領域異常解決室」が面白いのだけれど,主人公の神様たちの敵はヒルコということになっている。このドラマで初めて「ヒルコ」を知った人も多いのではないかと思う。

この「ヒルコ」は普通は神様に含めないことになっていたと思うのだけれど,神に含めることにすると,イザナギ,イザナミが生んだ最初の神ということになる。古事記では,確かイザナギ,イザナミの子作りの儀式の順番(女神であるイザナミからイザナギに声を最初にかけてしまった)を間違えてしまったからか,(成長が?)良くないといって海に流されて捨てられてしまったことになっている。

海に流されたこと,また「蛭子」が「えびす」と読めることから,海から恵みを与える神様として,えびす様と祀られているところもある。ただし,海から流れ着くものが人間にとって益する「恵み」だけであるとは限らない。へんなものもあるはず。。。このあたりは,諸星大二郎の漫画のテーマにもなっているので,興味のある人はぜひ読んで欲しいと思う。確かに「えびす」の恵みは「良いこと」ばかりではないのである。

さて,諸星大二郎の漫画には「ヒルコ」をテーマにした有名作品がある。それが,民俗学者・稗田礼二郎の活躍を描く「妖怪ハンター」シリーズで,ヒルコが出てくるのは記念すべき最初の作品「黒の探究者」である。この作品を読んだとき,どこか不気味さをもつ絵柄と考古学という組み合わせが強く印象に残って,その後,妖怪ハンターシリーズは私の大好きな漫画シリーズとなった。

実はこの作品は映画にもなっている。「ヒルコ/妖怪ハンター」(1991)。監督は当時「鉄男」(AKIRAではない)という作品で話題になっていた塚本晋也。そして主演はなんと沢田研二なのである。彼は「太陽を盗んだ男」みたいなシリアスな映画ばかりに出るのかと思っていたけれど,このようなB級ホラー(失礼。)にも出演するのかと驚いた覚えがある。今見るとチープな感じがする特撮が使用されているのだけれど,実は当時も「チープだな」と思った記憶がある。まぁ,和製のB級ホラーが好きな人はぜひ見て欲しい。全然怖くない。

ということで,「ヒルコ」はホラー作品の題材になるほど謎の存在で,あるところでは恵比須神であり,あるところでは人間に害なすものとして描かれている。「全領域異常解決室」でも神に捨てられた出自からか神々と敵対する存在になっている。今後,どのように取り扱われるのかわからないけれど,この作品で「ヒルコ」がメジャーになって,私的には少しうれしい。

#ネットで調べてみたら,なんと現在,この「黒い探究者」を無料で読めるらしい。諸星大二郎の世界へぜひ。

https://ynjn.jp/viewer/2241/108092

#漫画「妖怪ハンター」シリーズのどこかの作品で,主人公の稗田が沢田研二に似ているなどというセリフがあって,少し笑ってしまった。

#「妖怪ハンター」シリーズでは,もう一作品映画化されたものがある。「奇談」であり,こちらの主演はなんと阿部寛。東北のキリスト伝説が題材になっていて,ストーリーは面白いのでおススメ。

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