「天人五衰」という言葉がある。私がこの言葉を知ったのは,三島由紀夫の著作「豊饒の海」4部作の第4作のタイトルであることからだけれど,天人であっても老衰するという仏教における意味を知って驚き,以来ずっと心に残っている。
「天人五衰」とは(wikiの解説によれば),
- 衣裳垢膩(えしょうこうじ):衣服(羽衣)が埃と垢で汚れて油染みる
- 頭上華萎(ずじょうかい):頭上の華鬘が萎える
- 身体臭穢(しんたいしゅうわい):身体が汚れて臭い出す
- 腋下汗出(えきげかんしゅつ):腋の下から汗が流れ出る
- 不楽本座(ふらくほんざ):自分の席に戻るのを嫌がり楽しみが味わえなくなる
だそうである(出典: wikipedia, 2025.04.19確認)。一体,天人にとってどれだけの時間が過ぎたらこうした衰えがくるのか,ちょっと予想もつかないけれど,天人でさえこうした衰えを感じ,私たちと同様に「老い」の苦しみを味わなければならないのか,と若いころに思った覚えがある(この苦しみから解放されるためには,輪廻からの「解脱」が必要となる)。
私が最近,「老い」を感じて悲しみを味わったのは,次のことがらである。私はこれらを「老人五衰」と名付けたい。
- 手に持った物をついつい落としてしまう
- よくつまづいて靴のつま先部分をぶつけることが多くなって,靴がすぐに傷む
- 視野が狭くなって見落としが多くなる
- 加齢臭
- 耳が遠くなって聞き返すことが多くなる
その他,「更年期障害でへんな汗をかく」とか,「ついつい座る場所を探してしまう」,「目がかすむ」,「夜目がきかない」など,例をあげだしたらキリがなく,結局は老化現象の具体的な症状でしかないと思い悲しくなった。天人と違うのは,こうした衰えがあっという間に心身に訪れるということか。
また気の利いた「老人五衰」を思いついたら,紹介したい。
#三島由紀夫は「天人五衰」の最終回を書き上げた後、自決している。どんなことを書いたのだろう。実は,「豊饒の海」は最初の「春の雪」の途中で挫折している。
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